15 翼ある猫
翼のある猫
君たちは将来、どんな素敵な、素晴らしい大人になるんだろうね。それがね。お母さん、今から、すごく楽しみなんだ。
行動を開始した長閑はまず目の前にある階段は無視して、一階を見て回ることにした。(もし、素直くんが一階にいれば、素直くんと一緒にすぐに玄関から外に出て、この『とても怖い場所』から、一刻も早く逃げ出そうと考えていた)
長閑は階段の横の廊下を(なるべく)足音を立てないように気をつけながら、歩いていく。
それでも、しんと静まりかえっている、どこからも人の気配がしない、まるで空き家のような、(あるいは抜け殻のような)家の中では、長閑が歩くたびに、ぎい、ぎい、という音が少しだけした。
長閑はそこで廊下の横の壁にかけられている不思議な絵画を見た。
そこには二枚の小さな絵画と大きな絵画があった。
小さな絵画には、デフォルメされた人の目が描かれていた。(その目の絵を見て、長閑はとても気持ちの悪い絵だと思った)
大きな絵画はたくさんの魚たちがそこで暮らせるような水槽くらいの大きさがあった。(小さな絵画は長閑の体の横幅と同じくらいの大きさだった)
その大きな絵画には、『巨大な渦巻きの絵』が描かれていた。
たぶん、そうなのだと長閑は思った。
暗い海のような色彩で描かれているぐるぐるの渦の絵。
その絵の中心、つまり渦の中心に向かって、なにかが吸い込まれていくような、そんな影のようなものがところどころに描かれていた。
(その絵を見て、今度こそ本当に、長閑は気持ちが悪くなった)
長閑はその絵を見ることを(意識的に)やめると、自分の向かう先を見た。
そこには二つのドアがあった。
正面にあるドアと自分の左側にあるドア。
長閑はそのまま正面にあるドアと自分の左側にあるドアのどちらに入ろうか、その廊下の上で立ち止まって考えた。(相変わらず家の中からは、どこからも、話し声も、物音もしなかった)
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