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「横に座ってもいいですか?」

 仄はいう。

「もちろん。どうぞ」

 素直は言う。

 すると仄は「どうもありがとう」と言って、大きな白いベットの端っこに座っている素直の隣に座ろうとした。

 その瞬間、素直の膝の上にいる三毛猫がものすごく攻撃的な顔をして「しゃー!!」とまるで、天敵でも威嚇するようなすごい高い鳴き声をあげて、全身の毛をさかなでるようにしながら(尻尾もぴんと天井に向かって伸びていた)仄に向かって明らかな敵意を向けた。

 でも、仄はその体の動きをその瞬間にぴたっと止めただけで、なにごとにも動じないような、そんな無表情な顔になると、そのまま素直の膝の上にいる三毛猫に向かって、その視線をじっと、ただ向けていた。

「大丈夫。仄ちゃん。ただ、初めてあう仄ちゃんに緊張しているだけだから」と三毛猫の頭をよしよしと撫でなから、素直は言う。

「うん。わかっている」

 と感情のない声で仄はいう。

 やがて、三毛猫はだんだんとその攻撃的な雰囲気を素直の手のひらの下で和らげていったのだけど、結局三毛猫はなぜか仄のことがあまり好きではないようで、それからすぐに素直の膝の上からぴょんと飛び降りると、そのまま部屋の床の上を歩いて、薄暗い部屋の中のどこかの闇の中に消えて行ってしまった。

「ごめん。仄ちゃん。気を悪くした?」と素直は言った。

「ううん。別に大丈夫。こう言うことには、慣れているから」

 と素直の隣に座ってから、素直を見て、仄は言った。

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