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 それからしばらくの間、素直が三毛猫と一緒に部屋の中で待っていると、とんとんという部屋のドアをノックする音が聞こえた。

「どうぞ」

 と素直は言う。

 すると無言のまま、部屋のドアがゆっくりと、(ぎーという音をたてて)開いていった。

 でも、その開いた空間のところには(そこは真っ暗だった)誰の姿もなかった。そんな深い暗闇をじっとベットの端っこに座りながら、素直が眺めていると、それから少しして、その暗闇の中に誰かの頭の上あたりが(土の中から木の芽でも生えるように)見えてきた。その小さな頭に生えている黒髪は長く、そして、その後ろにある深い暗闇と同化するようにして溶け込んで見えた。

 それからまたゆっくりと頭の真ん中あたりまでが見えるようになった。(目と鼻あたりまでで、口元は見えなかった)

 そこにいたのは女の子だった。

 小さな(たぶん素直と同じ歳くらいの)十歳くらいの女の子。その子の大きな黒い二つのとても綺麗な目が(本当に綺麗だった。まるでそこに宇宙でも広がっているかのようだった)そこからじっと薄暗い部屋の中にいる素直のことを見つめていた。その大きな二つの目は微動だにしない。(瞬きの数もとても少なかった)

 それに口元が壁の後ろに隠れているためにその女の子が今、笑っているのか、怒っているのか、(あるいは悲しんでいるのか、嬉しいと思っているのか)それとも無表情のままなのか、それを素直はうまく感じ取ることができなかった。

「こんにちは」

 と素直はその女の子に向かって笑顔で言った。

 すると、その瞬間、まるで花が咲いたように(急に春がやってきたように)その女の子の真っ白な(まるでろうそくみたいだった)肌が真っ赤な色に染まっていった。

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