10 魚の群れ
魚の群れ
いつも神様が見てくれている。
だから、……がんばって。
「では綾瀬素直さま。主人が来るまで、この場所でどうか御寛ぎください」
そう言って笑顔の素敵な黒色のメイド服を着た小柄な女性は素直の前をあとにした。
「どうもありがとうございます」
と去り際に素直はその女の人にそう言った。(するとその女性はにっこりとまた素敵な笑顔を素直に見せてくれた)
「不思議なところだね」
と、その膝の上に一匹の猫を抱いている素直はその薄暗い部屋の中を観察しながらそう言った。
「ふん! 本当だな。本当に趣味の悪い部屋だ。この部屋は」
と素直の膝の上にいる一匹の三毛猫はそんなことを素直に言った。(もちろん、素直にはそう言っている猫の言葉が理解でるだけで、ほかの人には猫がにゃー、と鳴いているようにしか聞こえない)
素直が案内された部屋は薄暗い照明があるだけの少し大きめの四角い形をした部屋だった。
その壁が全面緑色で塗りつぶされている部屋。
その部屋には白い(ふかふかのまるで雲みたいな)ベットが一つだけあった。
そのベットの端っこのところに、素直はソファーにでも座るようにして座っていた。
その部屋の中で目立つものは、白いユニコーンとペガサスを模した実際にその上に乗ることができる馬のおもちゃと、それから人魚だろうか? 胸のところに貝殻の水着をつけている美しい女の子の人魚の彫刻(おそらく実物大の大きさだと思う)が置いてあった。
部屋の中に置いてあるものとしてはその三つのものが目立っていた。
あと、目立っているものは、やっぱりいやでもその目の中に入っている、その部屋の壁一面に描かれている絵だった。
子供の落書きのようにも見える絵。
それはたくさんの不思議な形をした魚たちの絵だった。
その不思議な絵には、なんとも言えない不思議な魅力(あるいは迫力)のようなものがあった。
「すごい絵だね」
と素直は言った。
「ふん! どこか? こんなものはどこもすごくもなんともない。ただの落書きだ。鑑賞する価値なんてどこにもない」と素直の膝の上で三毛猫は言った。
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