12
やがて壁の向こうがらから、その女の子の顔が全部見えるようになった。
その女の子の口元は、笑っていた。(本当に嬉しそうな顔をしていた)
その女の子は顔だけではなくて、ゆっくりと時間をかけてその体の全部を壁の向こうがらから動かして開いているドアの向こう側にある深い暗闇の中に移動させて、素直の前に見せてくれるようになった。
その女の子は真っ白な服を着ていた。
真っ白なワンピース。
それから真っ白なハーフパンツを履いていた。
足元は裸足だった。(靴下ははいていなかった)
それ以外にその女の子が身につけているものはなかった。時計も、アクセサリーも、髪留めも、なにも身に付けていなかった。
その女の子は、とても綺麗で美しい女の子だった。(これまでに素直が見てきた女の子の中で、映画とかテレビとか動画とかを含めても、一番綺麗で、美しくて、魅力的な女の子だった)
その女の子の美しい黒髪はとても長くて女の子の腰のところまで伸びていた。前髪は眉のところで綺麗に真っ直ぐに切り揃えられていた。
大きな目と大きな黒い瞳がとても特徴的だった。
口元はずっと笑っている。
でも、その笑っている顔をずっと見ていると、なんだかその女の子が(本当に)笑っているのではなくて、あくまで、そういう形をしているだけ、と思えてくるような、そんな不思議な気持ちになった。
それだけではなくて、なんだかずっと(その微動だにしない)女の子を見ていると、自分と同じ人間の子供を見ていると言うよりはなんだか『人形』でも、あるいは『(本当によくできた)ロボット』でも見ているような、そんな気持ちに素直はなった。
やがて、女の子はゆっくりと歩き出した。
そして、とても長い時間をかけて、部屋の中を移動して、素直のところまでその女の子はやってきた。(その間、素直はずっと、その女の子だけを見ていた)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます