第8話 逃げ出す
リオンの母親エリン・アディントン伯爵夫人から、首根っこを掴まれ、体が簡単に浮く。
バレてしまったかもしれない。そもそも、小窓は窓としての機能を適していない。もしかしたら、逃げ出さないように釘を打っていたかもしれない。
アディントン伯爵夫人は、軽々と俺を浮き上げたことは、悪魔の力なのか?
もし、そうなのだとしたら、ここから出ることは出来るのか…?
そんな胸騒ぎが起きる。
再び、真っ暗な部屋に閉じ込められてしまった。
最悪とも言えるこの状況を、どうにか脱出しなければならない。これだったら…。
俺はずっとこの家に縛り付けられる。
『聞こえてるか?』
もう一度、フェネクスの声が頭に響く。咄嗟に反応した。
ビクッと、体が鳴り、俺はフェネクスの言っている話を聞く。
『俺の力を貸し、お前をここから出そう』
(……え?)
何故フェネクスが協力してくれるのか。あくまでもフェネクスは俺の使い魔……らしい。そしてフェネクスは悪魔。とても協力的とは思えない。
『勘違いはすんなよ。今、何か嫌な予感を感じただけだ』
(嫌な、予感?)
その言葉を放った時、心臓が締め付けられるような、そんな痛みを生じた。
何だ?これは。まるで、まるで何かが起きそうな。そんな予感を。
あの魔物が出現したのかと、関係があるのだろうか。
(いや、異世界人である俺が、そんな事分かるわけがない。だけど———。
そんな事が起きるのなら、俺はそれを……何とかしたいのかもしれない)
それは。ただの自己満足かもしれない。だけど、ヒーローに憧れていたかもしれない。
(………教えて)
『あぁ。まずはワープを利用して、家の外に出る。今は真っ暗だ。ワープを転々とし、そして兄がいる場所へと行け。外を出た時、俺も出よう』
(え、フェネクスまで?)
『当たり前だ。俺はお前の使い魔だからな)
その言葉を聞いた時、やっぱりツンデレのような気がした。
とにかく俺は、暗い部屋の中で再び魔法を発動させる。
「『
魔法陣が展開され、紫色の光を放つその魔法陣の上に、俺は立つ。
まだ遠くまでは行けないが、屋敷の外に出ることができた。
(これで逃げれるはず。俺には、縛られるのが一番大っ嫌いだから)
不気味な屋敷を見る。そこから赤い鳥が飛んできた。
丸っこい赤色の毛並みと、黄色の
『アディントン伯爵夫人に気をつけろ。奴が一番危ない』
忠告してくれているところも、優しい気がする。
とにかく俺は、その場から離れ、ベラさんたちがいる、帝国がある方向へと走る。
フェネクスの鳥の能力を使わせてもらって———。
♢♢♢
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