第6話 何か起こりそうな匂い

魔物を倒した後、女騎士と身なりが高そうな女の子は名前を申し上げた。


「私はお嬢様の護衛役をしている、ベラと申します。ベラ・オルヴァです」

ガタイのいい甲冑を着ている女騎士さんは、ベラさんと言うらしい。そして隣にベラさんの後ろに隠れている女の子は、俺より年下そうな気がする。

「この方は、私がお使えしているアリント・フェルトフーゼン様でございます」


金髪青眼であるこの子は、どこかのお姫様か何かだろうか。そう思い、俺はベラさんに聞いた。


「あの、この子はどこかの姫様か…」

「えぇ、はい。帝国の第二皇女でございます」


まさかの皇女様だった。と言うことは、俺より断然上の方。

そう思った俺は、次の行動に移したのはかなり早かった。

片膝を地面につかせる。これは、何かの動画で見たことがある。王族関係者などに示す態度だと。


「立場を知らずに、タメ口で申し訳ありません。アリントお嬢様」

「………どういたしますか?お嬢様」

「か、顔を上げてください。貴方のおかげで助かりました…」


まだ幼そうながらも、不慣れに感じながらも、そう言う。顔が引き攣っており、あまりこう言うのはやったことないか…。と、予想がつけられる。


「寛大なお心。誠に感謝します」

「あの、あなたのお名前は?」


そうベラさんに聞かれたため、忘れそうとなっていた。相手が名乗った場合は、俺も名乗らなければならない。


「失礼いたしました。自分はリオン・アディントン。アディントン辺境伯の次男坊でございます」

「やはり、悪魔の一族でしたか」


警戒心を全身に醸し出している、ベラさんの表情は一変する。

どうやら、アディントン家は物凄く嫌われているらしい。


「ベラ、多分この人悪い人じゃないわ」

「いえ、しかし……」

「だって助けてくれたもの」


アリントお嬢様は、ベラさんにそう告げた。それは無邪気さから来ているのだろうか?ベラさんは顔を顰め、うーんと唸る。

「わかりました。あなたは私たちの恩人ですからね。あのような態度、申し訳ありません。最近、魔物の発生率が高いものでして。いえ、これは言い訳ですね。



———もし、何かありましたら。ぜひ、帝国の方へと来てらっしゃってください」

「うん、来ていいよ」


その二人の言葉に、俺は妙に引っかかる。何故そんなこと言ったのか。

そんな時、再び脳内からフェネクスの声が聞こえた。


『早く戻ってこい。貴様の父親がカンカンになってるぞ』

つまりは、あの二人が言っていたのは、この事かもしれない。


♢♢♢


予測

悪いことの匂い





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