第5話 魔物と初対決
フェネクスが言うには、辺境から離れた場所に魔物が出現したらしい。
だが、フェネクスに聞く前にひしひしと伝わってくる。魔物の気配というものが。
どうやら、それは悪魔と契約の一家にしか、分からないらしい。それが分かるようになるのは、この紋章。
『悪魔の紋章』だと言われているみたいだ。
「よっと…!」
それより、辺境からこの地へ来たが、体が思った以上に軽い。
これはフェネクスの能力だと言っていた。
フェネクスは鳥。鳥のように動ける。そんな事を言っていたが、どうやらその調子だと、家族のあの不可解な動きを納得がいく。
母親らしき人物の使い魔は、アガレス。
父親らしい人物の使い魔は、ウァレフォル。
兄の使い魔は、アモン。
聞いたこともない悪魔の名前だが、どうやらそこは気にしなくていいとのこと。
適当すぎる。だが、フェネクスの言うには悪魔の能力を受け継ぐことができるとのこと。だから俺の体は軽いというわけだった。
(ここ辺りか)
魔物達の気配がビンビンに反応する。
(…ん?)
魔物の影があるとは別に、動いている影が1つ。あれが誰なのか、木陰から見ていると。
(………騎士!?)
よく見ると、女騎士が一人。家族のような身なりが一人。
どうやら、その二人が魔物に襲われているようだった。
様子見をするべきか。そう思いながら見ていると、剣と魔物の交わりの音が聞こえる。
金属音でできている剣の、音。
魔物の鳴き声。
女騎士は可憐そうな少女を守りながら、戦っていた。
(………ふぅ、やるか)
常に常備させているダガーナイフを、鞘から取り出し、自分の手のひらに傷を作る。
痛みは生じるが、病気よりかはマシだ。
滲み出た血を操るようにし、生き物かのように動き始める、血魔法は魔物の方へと急行していく。
だが———。
(なっ!?攻撃できないだと!?)
どうやら、魔物相手では攻撃することすら愚か。という訳だった。
(くそ、どうするか。ダガーナイフで出来るか?)
ここまで来たら、考えている暇はなさそうだった。
(ふぅ、一旦落ち着け。大丈夫。一応力上げはしている)
ダガーナイフの柄を持ち、俺は木陰から飛び出す。
「………!?何者!!」
「一応怪しいものじゃないんだけど……」
「嘘をつくのはおやめなさい。その紋章……」
悪魔の一族を意味する紋章。三叉の槍のマークだ。
これはどうやら、悪魔一族の中の家系。アディントン家を意味する
「あぁ、これか。言っておくけど、これだからという意味で、攻撃するのはやめてね」
一応害がない人間と伝えたかったが、どうやらその気は無いようだ。
『リオン。よく聞け』
(………フェネクス?)
『こう唱えろ。“悪魔の賜物”とな』
(でも、魔物に対して魔法は……)
『あぁ、そうだ。だから悪魔式のワープを使い、相手の武器を奪え』
(は!?奪う!?)
流石は悪魔。と、言うべきなのだろうか。よくもそう簡単に、非道徳的な事をさせようと。
(…ん?待てよ。悪魔式のワープと言ってたな。なら……)
フェネクスのお陰で思い浮かんだ。この状況を覆す方法を。
「『
そう唱えると、魔法陣が一気に展開され、禍々しそうなオーラを放つ。そこから俺はまるで俺の体じゃ無いかのように、動き始めた。
「『負と血塗られた、一族の紋章。それは我を蘇らせる魔法の一部。
一気に言葉が並べ尽くされ、俺はそう唱えた。魔法陣が展開されているその中から、ゴーレムらしきものが出現し、そのゴーレムは目と鼻の先にいる魔物を敵と認識し、攻撃し始める。
その時俺は、まるで憑き物が取れたかのように、ふわぁっとなった。
『奪うのが嫌なら、こう言う系統を使う事だな。それは闇魔術の一つ。悪魔式だ』
フェネクスがやっていたのだと思うと、なんともやるせない。その光景を唖然と見ていた二人は、俺の方を見る。
「あ、あの。もしかして助けてくださるために…?」
「まぁ、そうですね」
苦笑を浮かべながら、俺はそう言う。すると、女騎士は慌てて俺に謝ってきた。
「も、もも申し訳ありません!どうやら、勘違いしていたみたく……」
「ま、まあ、勘違いは誰にだってありますよ。はい……」
どうやら、誤解は解けたようだった。
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悪魔式魔法
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