第2話 生とは始まり

目を覚ます感覚がある。

もうすぐ、目を覚ますと言うことが自分でも分かる。

何だろうか、何かが揺れる。俺は何かに揺れていた。

この感触は何だろう。ふわふわしている。


俺は、確か。病気が再発してしまい、そのまま生き絶え……。


そうだ、思い出した。


そう思うと、意識が一斉に覚醒する。

目を覚ますと、そこは木々に囲まれており、長閑な風景が目の前に広がる。

空には飛行船が……。


飛行船?空に飛行船が飛んでいるのだろうか。

って言うより、ここは一体どこだ!?


自分の部屋にいたはずだ。心臓病がまた始まり、そして苦しむ中で両親を呼んだ。

そして両親が来る前に、俺は死んだはず。なのに、ここは一体どこだ。

見慣れない風景が広がっており、目が慣れない。


「リオン…。早く戻りなさい。儀式を始めるわ」


広大さの風景を見ていると、後ろから俺の名前を呼ぶ。

声色的には女性だ。母さんかと思い、後ろを振り向くと、誰だろう。あの夫人は。

確かに、俺の名前を言った。“里音”と。

それなのに、見慣れない人から言われたこと。一体全体何がどうなっているんだ。


貴族のような身だしなみの、夫人と自分の格好。

貴族なんて、日本では存在していない。天皇さま以外。

そして俺は、外国人じゃない。イギリスにもいた事ないし、貴族だなんて、21世紀じゃない。

なら、この身なりは何なんだ。


「こら、リオン。早く入るわよ」

「あ、あの!」

「ん?何かしら」

「あ、あの。あなたは、一体…。誰なんですか?」


そう言った。最初は夫人の人も目を見開いたが、すぐさま威厳のある顔へと戻り、俺の前へとやってくる。


「馬鹿なことは言ってないで、さっさと行きますわよ」

「い、行くってどこへですか?」

「何言っているのですか?廃墟です」


廃墟に何の用事があると言うのだ。って言うより、名前を知らない。誰だ。

そもそも、何で俺の名前を知っている?ここは外国か何かなのか?


そう思わずには、居られない。そう思うほど、この状況が不可解であった。



ーーーーーーー


俺は夫人の人に手を引かれ、長閑な風景からガラリと変わり、そこは薄気味悪いところだった。

鬱蒼とした、森の中。そこはまるで心霊スポットのようだ。

何かが出そうな、そんな異様な雰囲気。思わず、退けてしまう。


「何をしているのですか?早く、行かなければなりません」

「え、ちょっと?!」


腕を強く引っ張られ、廃墟の中へと入る。

薄気味悪い。帰りたい。と言うより、帰れるのだろうか。


廃墟の奥へと進んでいくと、一つの水晶玉がある。そして魔法陣のような形。オカルト染みた風景だ。


「さぁ、リオン。魔法陣の上へ立ち、水晶玉の方に手を当ててください。そして、こう唱えるのです。———『我の使い魔、ここにあり』と」


変な事を言っている。だけど、それに従わないといけない気がしてくる。


俺は、魔法陣の上へと立ち、そして水晶玉に触れる。

そして夫人が言ってたように、唱えなければならない、文章を唱えた。


「『我の使い魔、ここにあり』」


そう言うと、水晶玉が光、それに共鳴するかのように魔法陣が大きく展開され、そして強烈な光を放つ。


そんな時、頭に声が響いた。


『我を呼んだのは、貴様か』

(……!?だ、誰?)

『我の名はフェネクス。貴様の使い魔だ』

(………どういう事だ)

『知らないのか?なら、教えてやろう。貴様の家は代々、悪魔と契約をしている』

(悪魔と、契約…!?)

『そうだ、リオン・アディントン。契約をした暁に、貴様から名を貰わなければ、ならない』


悪魔、フェネクスが言っている言葉が、何を言っているのか困惑していた。

そもそも、名前が違う。リオン・アディントン?

ここは、もしかしたら。



———異世界、なのか?


ーーーーーーー


リオン・アディントン。生










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