第4話 争奪戦
時は推しのグッズ発売日、5時過ぎ。
世は戦の時。
アニメート秋葉原本館にて、今、寺島瞬の人生の分岐点であろう戦が始まろうとしている・・・
この戦いはのちに、抱き枕カバー争奪戦として歴史に刻まれている。
俺はアニメートの階段を登ろうとしたとき、絶句した。
いつもならみんなちゃんと左側通行を守っているのに・・・
まったく守っていないのだ。
「うおおおおおー--!!」
「おい!押すんじゃねえ!!」
「今、お尻触りましたよね?」
「触ってない!!」
「物を売るってレベルじゃねーぞ」
まあなんか事件性のある会話も聞こえてきたけど・・・
とにかく!このままだと取られる。
登りたくても、登れない・・・
なら、エレベーターだ!
来てくれ、早く。
早く来い!
来た!
行先は4階!
ここまではいいぞ。
まだ一つ難関を乗り越えただけ。
一番の難所はここ、売り場だ!
棚が見えないくらい人が沢山いる。
どこだ・・・スバルちゃん・・・
俺のスバルちゃんレーダーが反応している!?
まだある!
そこだ!!
手を伸ばした先には・・・
「掴んだ!!」
俺はまだ勝ち取ったわけではないみたいだ。
本当の戦いはここから始まる。
でも、スバルちゃんはもう目の前。
それは、このよくわからんおじさんも同じだ。
「俺があなたより先に取ったので俺のです」
「そ、そんなことないデュフ」
なんで語尾にデュフって付くんだこいつ、キモ過ぎるだろ。
「埒(らち)が明かないのでいい解決方法を決めましょう」
「そうデュフ」
なんかいいのあるかなぁ。
「瞬君ー買えた?」
「よくこの状況で買えたと思ったな」
「今どういう状況?」
「あーっと今俺のほうが先に掴んだのにこのよくわからんおじさんに取られた」
「あーなるほどね」
「で、今解決方法をどうしようか悩んでいるとこ」
「こんなのはどうデュフか?」
「なんですか?」
「どっちのが推せてるかで決めるデュフ。ジャッジはそこにいるかわいい子に頼むデュフ」
下心全開のキモイ笑い声がこのフロアに響いた。
「じゃあ、早速始めよう」
「長期戦になる前に片付けるデュフ」
「ジャッジは僕が担当ということで、第一ラウンド始め!」
「拙者からいくデュフ。まず、スバルちゃんを推し始めたのは忘れもしない3年前の7月。
拙者はこの子を見たとき、ビビっと来たデュフ。この子は必ず有名になる。だから、この子を推すと決めたデュフ」
「へー、そうなんだ。ちなみに会員番号は?」
「178デュフ」
「ちなみに俺は1004だよ」
「にわかデュフね」
「そうかい?この話を聞いてもかい?」
「な、なんデュフ?」
店内BGMが処刑用BGMへと変わる。
「このカードを見ろ!」
「な!?そのカードは・・・本当に実在しているデュフか!?」
「前から推してるお前には見ただけでわかるよな?」
「なんなのそのカード?」
「このカードは日本で10人しか持っていないという品物をなんでお前みたいなガキが持ってるデュフ!」
「それは愛だ!愛とは、誰かに思い寄せるだけでは無いッ!!愛とはッ!それが原動力となって、その身を犠牲にしてでもこうしたいと思う力のことだッ!!」
「な、なにー---!」
「俺の方が愛が強かった様だな」
「約束通り認めるデュフ」
「お会計お願いしまーす。最近の人は愛の使い道を間違えているよね。さっきの階段みたいに」
「師匠!師匠と呼ばせてくださいデュフ」
「考えとく」
「はあ、もう今日疲れたよ」
「そうだねー僕も疲れたよ」
「電車で寝たら置いてくからな」
「それは僕のセリフだよ」
「おなか減ったー」
「そうだねごはんどこかで食べる?」
・・・
「あれ?寝ちゃった」
「え?しゅ、瞬君?」
純の肩に瞬の頭が乗る
「次は~新宿~新宿~」
「あ、ごめん寝ちゃった」
・・・
え、なんで怒ってんの?
「俺なんかした?なんで怒ってんの?顔赤いし」
「お、怒ってない・・・し」
いや、怒ってんじゃん
「じゃあまたね」
「うん」
家にて
「ただいまー」
「瞬ーご飯できてるよー!」
「うん、荷物置いたら行くね」
「いただきます!」
「瞬、今日学校どうだった?」
「特になんもないかな」
「じゃあ今日はどこ行ってたの?」
「幼馴染の純って覚えてる?いじめられっ子の」
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