第5話


「どうしたの?シューガー君?」


 先生がその男子生徒の声に反応して、そう聞き返す。すると、シューガーと呼ばれた男子生徒は笑みを浮かべながら口を開いた。


「俺、ミドル君の相手に立候補したいんですけど~」


 この一言で、俺は確信した。こいつ、俺のことが気に入らないからってボコボコにする気だわ。


「そう?なら、それでいきましょうか」


 先生!?あの悪意が分からないんですか!?明らかに俺を保健室送りにする感じですけど!?


 そう叫べるわけもなく、すぐにシューガーが俺の方に向かってくる。そして、俺の隣を通り過ぎる時に、シューガーが俺にしか聞こえないような声でこう言ってきた。


「……ぶっ潰してやるよ」


 やはりシューガーは、俺をボコす気満々のようだ。確かに魔術についてほとんど理解していない俺では、シューガーには敵わないだろう。


 だが、ここまで言われると、流石にイラッとしてしまう。何とかぎゃふんと言わせてやりたい。


 というか、ここでシューガーをぶっとばせば、大分スッキリできる。夢なんだから、そうさせてくれるはずだ。


 シューガーは距離を開けて俺の前に立ち、杖を取り出して戦闘準備をする。俺も慌ててではあるが、杖を右手に持った。


 そしてその杖の先をシューガーの方に向けて、取り合えずの体勢を作った。そしてお互いに先生の合図を待つ。


 先生が手を叩いた瞬間、シューガーは自分の杖から陣を作る。俺もまた、杖から陣を作ることをイメージした。


 だがやはり、そう簡単には陣を作ることができない。ならばと、まずは杖に魔力を流すことをイメージしてみる。


 するとすぐに、杖から陣が現れた。俺としては、段階を一つ飛ばしたような感覚だ。


 というより、結局イメージじゃないか。難しく考えすぎていたのだろうか。簡単で助かった。


 おかげでシューガーをぶっ飛ばして、スッキリした夢にできそうだ。そう思いながら、シューガーの方を向く。


 シューガーの陣には、風が球体のように集まっているように見える。そして俺の陣からは、光輝く球体が出てきた。


 だが、俺の陣から出てくる球体の大きさが、一向に衰えない。どんどん大きくなってしまい、シューガーの風と比べて二倍ほどにまでなってしまった。


「……は?な、なんだよ、それ……?」


 俺の魔術を見たシューガーは、明らかに顔色が悪くなっている。この分だと、ぎゃふんと言わせることはできそうだ。


「ば、爆発魔術、よね……?でも、この大きさは……!」


 ……え?これ、そんなにまずいのか?正直、俺はこの魔術の事を何も知らないので、どれぐらいなのかとか分からないのだが……。


「ミドル君!今すぐその爆発魔術を解除して!」


「え?……あ」


 先生にそう声をかけられた俺であったが、もちろん解除の仕方など知らない。どうにかしようと思い杖を少し動かすと、勝手に俺の爆発魔術が放たれてしまった。


「っ!伏せて!」


 先生のその声を聞いた生徒たちは、すぐにその場で伏せる。すると、その瞬間に爆発してしまった。


 まさに大爆発だった。俺はそれを一番近いところで受けてしまい、地面を転がってしまう。


「リ、リヒト!」


 爆発が終わってすぐに、沙羅が駆け寄ってきてくれるのが分かった。だが、俺は立ち上がることができない。


 意識がだんだんと、闇に落ちていくのが分かる。もうすぐ、夢が終わってしまうのだろう。


 悪い夢ではなかったとは思うが、最後に一つだけ言いたいことがある。いくら夢でご都合主義とはいえ、これは駄目だろう。


「爆発オチなんて、サイ、テー……!」


 言いたいことを言った俺は、必死に声をかけてくる沙羅を無視して、意識を手放した。

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異世界の俺と入れ替わる~勉強ができるだけの高校生の俺と、実力隠しの学園最強魔術師のオレ~ 辻谷戒斗 @t_kaito

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