第4話
昼食を食べ終えた俺は、沙羅と共に外へ出ていた。ここは恐らく、校庭のようなものだろう。
ここで、魔術実習の授業が行われるらしい。俺は沙羅に連れてこられただけなので、詳しくは知らないのだが……。
「はーい。皆そろってるわね?じゃあ、授業を始めましょうか」
先生がそう言うと、生徒たちは杖や剣を取り出す。俺もどちらを手に持つか迷った末に、杖を持った。
剣でもよかったのだが、魔術となるとやはり杖の方がイメージしやすいと思ったからだ。知識がなく何も分からない俺は、もはやイメージに縋るしかない。
チラリと隣を見ると、沙羅もまた俺と同じように杖を持っていた。やはり、基本は杖なのだろうか。
「今日の魔術実習は、対人戦闘よ。もちろん、殺さない程度に、だけどね」
た、対人戦闘、だと……!?初心者には一番きつくないか、それ!?なんでこの夢は、俺に優しくないんだよ!?
「じゃあまずは、プライメリーさんからしてもらいましょうか」
「はい」
プライメリーと言われて立ち上がったのは、俺の隣にいる沙羅だった。先生はもう一人生徒を呼び、二人を向かい合わせる。
向かい合った沙羅と相手の生徒は、杖を構えて戦闘準備の態勢を整える。先生が手を鳴らしたその瞬間、沙羅と相手の生徒は同時に杖から陣を作った。
すると、沙羅の陣からは電気が、相手の生徒の陣からは炎が、それぞれ出てきた。それは、お互いの方に向かって行って、ついにぶつかる。
威力は沙羅の電気が押しているように見えたが、結局は相殺された。すると、周りからパチパチと拍手が送られていた。
俺も皆に遅れないように、慌てて拍手を送る。すると沙羅は杖をしまって、俺の隣まで戻ってきた。
「お、お疲れさん」
俺が沙羅に声をかけると、沙羅は目を見開いて驚いていた。そんな沙羅を見た俺は、何かまずいことを言ってしまったか、と困惑してしまう。
「う、うん……。……え?い、今――」
「じゃあ、次はミドル君にしてもらいましょうか」
「げっ……!」
思っていたよりも早く、俺の名前が呼ばれてしまった。俺は嫌々ではあるが、ため息をついてから歩き出す。
「じゃ、行ってくるわ」
「あっ……。え、ええ……」
俺がそう言うと、沙羅は俺に向かって手を伸ばしてきた。だが、すぐにその手を引いて頷く。
そんな沙羅に疑問を持った俺であったが、気にしている余裕はないので先生の元まで急ぐ。
「さて、じゃあ相手は――」
「せんせ~!」
俺が先生の元まで着くと、先生が相手の生徒を指名しようとした。だが、それをある一人の男子生徒が遮った。
俺がその方向を見ると、その男子生徒には見覚えがあった。なぜならその男子生徒は、昼休みに沙羅をご飯に誘っていた男三人組の内の一人だったからだ。
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