第3話
「……はい。二限目の授業はここまでよ。各自、昼食を済ませてきてね」
2つの授業を終えて、昼休みの時間に入った。俺はその瞬間、勢いよく長机に突っ伏した。
「……全っ然分からん」
そう。授業の内容がほとんど分からなかったのだ。いや、文字が分からなかった時点で考えれば当然のことなのだが……。
午前中に受けた歴史と魔術理論という二つの授業で分かったことは、今いる国が共和国であることと、魔法ではなく魔術だったことぐらいなものだ。正直、ほとんど情報が増えなかった。
歴史に関しては途中からで、ほとんど分からなかった。文字での説明ではなく口頭での説明でも、やはり前提知識がないので無理だったのだ。唯一分かった共和制は、王国との対比で出されていた。
魔術に関しては、歴史よりももっと分からなかった。なんなら意味不だ。最初は魔法なんだからなんとなくのイメージかなぁ~、と気楽に考えていたのだが、それは瞬く間に打ち砕かれた。
そこには、理論があったのだ。魔術理論の授業ではすでにある魔術を習ったのだが、その魔術を習う際、意味の分からない文字列が先生の前に現れたのだ。
先生はそれを、魔術式と呼んでいた。この式を陣にして、魔術を使用するのだそうだ。
そして、この魔術式を作る際に必要なのが魔術理論、ということらしい。らしいというのは、これ以上分からなかったのだ。
恐らくだが、魔術理論≒魔術式みたいなものなのだろう。理論を式に起こしたのが魔術式、というのが俺の考察である。
言葉だけならこう言えるが、実際に魔術式を見せられても何が何だか分からない。この魔術式はこうだからこうでこういう魔術が発動されます、と言われましてもという感じだ。
俺の夢だというのに、魔術がややこしすぎる。全く使える気がしない。ここは、夢だからこそのご都合主義が欲しいところだ。
「ど、どうしたのよ?」
「い、いや……。ちょっと、疲れただけだ……」
沙羅がそう声をかけてきたので、俺は机に突っ伏したまま顔を沙羅の方に向けて返事をした。そんな俺の反応に首を傾げた沙羅だったが、その後すぐにため息を吐いて俺の肩を叩いてくる。
「ほら、お昼ご飯を食べに行くから立ちなさいよ。午後からは魔術実習なんだから、しっかり食べないと」
「ま、魔術実習!?」
魔術実習という授業名を聞いて、俺は突っ伏していた顔を一気に上げてしまう。魔術実習という授業名からして、魔術を実際に使う授業だろうが、それはまずい。
なぜなら、俺が魔術を使える気がしないからだ。使えないのに行っても、人の魔術しか見ることができないじゃないか。
……いや、それはそれでいいな。でもやっぱり、魔術は使ってみたい。夢ですら使えないなんて、虚しくなる。
「……毎週そうでしょ?本当に大丈夫なの?」
「あ、ああ。ごめん。大丈夫だ。早く昼食を――」
「「「サラさん!」」」
俺が誤魔化そうとしたら、見覚えがあるのかないのか分からない男三人組が、沙羅に声をかけてきた。まあ、俺の夢に出てきているという事は、見たことはあるのだろう。
「……なに?」
「「「お昼、一緒にどうですか!?」」」
またも男三人組が、声をそろえてそう言った。いや、ハモリすぎだろ。示し合わせてんのか。
「ごめん。ワタシ、リヒトと食べるから。今日はなんか、心配だし……。行くわよ、リヒト」
「お、おう……」
俺は沙羅にそう言われたので立ち上がり、沙羅の後に続いて歩き出す。沙羅に声をかけた男三人組は、これまたそろって俺を睨んできていた。
なんなら、舌打ちまで聞こえてくる始末。これ、夢なんだよな……?夢にしては、俺の思い通りじゃないことが多いんだが……。
そんな疑念を抱きつつも、俺は沙羅と共に教室から出る。そして、朝食を取った食堂へと歩み始めた。
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