一章 月と海 第八話 回想

人の足と肩がぶつかりそうになるほどの人混みと、喧騒のなかを駆け抜けてゆく男の存在がある。

克己は学生時代に格闘技をやってきたので、軽い身のこなしで上手く人をすり抜けていく。


「麻美の実家に行けば会えるに違いない。話が出来るに違いない」

克己はこれから、警察に連行されていった麻美の実家に向かう。



「それにしても、先ほど俺の腕を引っ張っていった女の人」

「最初から俺の事を知っている人みたいだった。もしかして、どこかで会ったことがあるのかな?」

「全然初めて会った気がしなかったな……」

克己は先ほど腕を引っ張っていた人の顔を思い出す。


「もしかして、あの人が探していた渚だったのだろうか?」


「しかし……あれで本当に良かったのか?でも俺は付き合い時始めたら相手を最後まで裏切れない。だから……あの時点で安易に麻美から渚かもしれない人に乗り換える訳にはいかないんだ……。本当に渚だったら……ごめん……」

と、克己は渚に心の中に生まれた罪悪感を落ち着かせようと、心の中で謝罪する。



ーー  ∞ ーー ∞ ーー


「どうして克己は私の手を振り払ったんだろう?」

やっと巡り合えた、と思った克己にあのように対応される事を予想出来ていなかった渚。


「私の事がわからなかったのかな?」

渚は目を閉じて先ほどの事を回想していく。


「でもあの時は……お互い名前は呼ばなかったんだけど。でも何を言いたいのかは理解出来た気がする。じゃぁ、何が理由だったの?」


「あの時克己は別の女の人の方へ向いていた。あの二人付き合っているのかしら?そうは見えなかったんだけど……」


「あの二人の関係……一体何だろう?」

渚は二人の関係に対する違和感を感じて、疑問を募らせていく。

あの時の宇宙空間での出来事は幻だった……の?


「克己……克己に逢いたいよ……なんで私。いつも会えないの……?



もしかしたら「克己」という名前や存在、偽物なのだろうか……?だとしたら私……許せない……よ……


「……」


その時私の元に、友人の「パーティー参加案内書」が届いたのだった……


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