手編みのマフラー①

「男なら一度は手編みのマフラーを貰ってみたい」


 そんな願望が僕にも昔ありました

 当時クラスで仲の良かった君にそんな話をして

 まさかその君が

 まさか本当に編んでくれるなんて

 夢にも思わなかったから


 *:.。☆..。.


 思い起こせば

 夕陽の差し込む教室で

 後ろから茜色の光を纏った君は


「今、好きな人いる?」


 と、突然聞いてきた


「うん、いるよ」


 絶賛 他の女子に片想い中だった僕は

 とても仲の良い友人だと思ってた君に

 鈍感系ラブコメ主人公ばりの間抜けな返事をした


 そのあまりに呆気ない淡白な返事に

 君は自分がその意中の人物ではないことを察して


「そう、ごめんね変なことを聞いて」


 そう言って言葉をつぐんだ

 いつもは陽気で明るい君のそんな陰を落とした態度に

 どうして当時の僕は気がつかなかったんだろう?


「君も今、誰か好きな人いるの?」


 そんな馬鹿な質問を能天気にも返してしまった


 夕陽が眩しくて君の表情がよく見えない

 でも君がとても真剣だったことは伝わってきた


「うん、いるよ」


 それはさっきの僕と同じ言葉

 でも全く違う言葉のようだった

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