第4話 いやらしい仕草
翌日の体育の時間はバスケットボールをすることになった。本当は持久走の予定だったけど、あいにくの雨でグラウンドが使えなくなってしまったのだ。
もちろんわたしを含め、ほとんどの子はその変更を喜んだ。疲れるだけの持久走よりも、球技をやる方がずっといいに決まってる。
だからきっと、憂鬱だったのは運動が苦手な子だけ——。
「ご、ごめんなさい……!」
「ううん、全然大丈夫だよ。
わたしが投げたパスを逸らしてしまった森川さんは、申し訳なさそうに謝りながらボールを拾いに行く。わたしは気にしなくていいよと手を振り返した。
「ほ、ホントにごめんね
それからも何度かパスを逸らして謝ってくる森川さんに、わたしは内心でため息を吐きながら笑顔で手を振り続けた。
試合までの準備運動の時間、わたしは森川さんと一緒にペアを組むことにした。
いつもは
そんなことをしたのは、もちろんそうするべき理由があったからで。
「あ、そうだ森川さん」
そろそろ練習も終わりという頃、わたしはさも今思い出したように言った。
「な、なに?」
「んっとね、来週の土曜日にさ、期末の打ち上げってことでクラスの何人かで遊園地行くつもりなんだけど……よかったら森川さんも行かない?」
「え? わ、私……?」
普段から誘われることに慣れていないのだろう。森川さんは調子を合わせるように
どうしてこんな子を……。
そんな内心なんておくびにも出さずにわたしは笑顔を意識して話を続ける。
「うん、どうかな? いまのところ決まってるのは、わたしと里枝と、
少しの
「……
「え……」
堂林くんの名前を聞いたときに彼女が
一瞬だけ、ほんの少し目を
——ああ、ほんとうに森川さんも堂林くんのことが好きなんだ。
黒い感情が
そんなわたしの様子に気づきもせずに悩んでいる様子の森川さん。バスケットボールが床を跳ねる音がまるで彼女の鼓動のようにわたしの耳に届いていた。
やがて彼女はたどたどしく、けれど確かな意志を持った声で呟いた。
「えっと、う、うん……私も、行きたい、かな?」
くるくると、何かをごまかすように髪をいじりながら。
「オッケー。じゃあ詳細が決まったらまた連絡するね」
そう言って、わたしは逃げるようにこの場を離れようとした。だけど森川さんはわたしを呼び止めてくる。
「あ、待って、吉崎さん!」
「ん、なに?」
振り返ったわたしの目には、
「……どうしたの?」
「あの、そ、その……」
思いのほか低い声になってしまったわたしの言葉に、森川さんは
「さ、誘ってくれて、ありがとう……!」
「……ん、楽しみにしてるね」
そんなひと言を告げる
いやらしい
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