第11話「オフ会」
『カンパーイ!』
「慰労会がはじまりました。私たち受付嬢にとってはこれからが本番です。
いいですかユリナさん、リュカさん」
厨房裏、受付嬢3人肩組んでの円陣。
なんだか気合が入る。
「「はい!」」
***
『シンシアちゃーん。こっちのテーブルにもおかわり持ってきて!』
「はーい」
『ユリナちゃん、こっちのテーブルもお願い』
「はーい」
冒険者さんたち、クエストの緊張感から解放されて飲めや唱えやドンチャン騒ぎ。
「シンシアちゃん。ちょっとお触りしてもいい」
「テヘヘ。次はテメェを討伐すっぞ!この3流冒険者が」
「す、すみません」
ハメを外しすぎるのもアレだけどきっとギルドマスターも喜んでいるんだろうなぁ。
「⁉︎」
「⋯⋯」
めっちゃ青い顔してる。
「具合が悪いんですかマスター?」
「いや、たいしたことない。これだけの人数の冒険者に一斉に報酬を払ったらうちは破産だと意識が飛びそうになっているだけだ」
「全然たいしたことあるじゃないですか!」
「ギルドマスター、しっかりしてください」
「ユリナちゃん」
「お父様に頼んで報酬の上げてもらいましたよ」
「やはり雇うべきは領主のご令嬢だ」
「涙流して喜んでる⋯⋯」
『誰でもいい!厨房手伝ってくれー!』
「リュカ・ミティーネ行きまーす」
***
「盛りつけ頼むぞ」
「はーい!」
これをこうして⋯⋯こうかな?
「もっとテキパキ頼むぜ」
「できました!」
「意外と早いな」
「どうです?」
「おっやるじゃねぇか!」
「どんなもんでしょ!」
「わかったから次の料理」
「よぉし!かかってこい」
「なぁリュカ。俺もここひとりでまわすのキツいんだ。
意外とセンスあるようだし、これからは厨房の方も手伝ってくれたっていいんだぜ」
「テーブルに運んできまーす!」
「俺のはなし聴いてた?」
「味見担当なら毎日!」
「おい、また太っただろ」
***
「ユウリくん、Dランク昇格おめでとう!」
「リュカさん!リュカさんのおかげです」
「リリムちゃんにボーダくんひさしぶり。もしかして3人のパーティー復活したの?」
「違いますよ。ユウリがひとりだけだとバジリスクの餌だから手伝っただけですから。
それに私たち別のパーティーに入って今、Cランクですから」
「ちょっと待てよ! それは個人じゃなくてパーティーがだろ」
「Dランクのユウリには関係ありません」
「仲良いねふたりとも」
「「どこがッ!」」
『リュカさん』
「パドルくん」
「今日はお招きありがとうございます」
「いいんだよ! バジリスク倒せたのもパドルくんがつくった武器のおかげだし。
むしろ今回、いちばん貢献したのはパドルくんだよ」
「そ、そんな⋯⋯」
「どうしたのモジモジして」
「い、いやこんな賑やかなところ来るのはじめてで緊張しちゃって」
「ほら、同年のユウリくんたちいるから打ち解けて来なさい」
「そ、その僕はリュカさんとおはなしが⋯⋯⁉︎」
「「⁉︎」」
「ちょ、ちょっとユウリ何、顔紅くしてるの!」
「い、いやだってこんなかわいい子が急に来たらほら⋯⋯」
「はぁッ!」
***
『男の娘と少年ーーこの組み合わせはなかなかいいッ!』
「こんなところに隠れて何やってるんですかリリさん。さっきから出てますよ鼻」
「いかんヒールッ!ヒールッ!」
「床拭いといてくださいね」
『リュカさん』
「ノイドさん!」
「ちょっといいかな」
「はい。ノイドさんバジリスク討伐お疲れ様でした」
「リュカさんもお疲れ。ここどうぞ」
「はい。ノイドさんどうかされました?」
「リュカさんは現役に復帰されないのかなと思って」
「私?」
「勇者じゃなくてもここの冒険者としてはどうかな?」
「どうだろう迷っちゃうな」
「リュカさんだったらすぐにSランクになれると思うんだけどな」
「そうかなーー」
「僕はずっとひとりでやって来たんだけど。最近、クエストの難易度も上がってきたせいかどうもしんどくてね。
一緒にパーティー組める人を探していたんだ。そしたらリュカのような経験豊富な人が現れた。だからリュカさん。
僕と一緒にどうかなパーティー?」
「うーん。ごめんなさい。今は冒険者ギルドの受付嬢のおしごとがおもしろいんです。
ギルドのスタッフと一緒にサポートしながら冒険者さんの成長を見守るのが楽しいんです。
冒険はもうしばらくあとで。それにふかふかベッドでぐっすり眠るのを覚えたらなかなか前の生活には戻れないですよ」
「最後の方がリュカさんの本音だね」
「しまった」
「ノイド、うちのスタッフ今度引き抜いたら出禁な」
「ギルドマスター!」
「やれやれ見つかってしまったか。ではまた次の機会にするよ」
「リュカ。今夜は片付けが終わるまであがれないと覚悟しておけ」
「⁉︎ え⋯⋯終わるのそれって何時ですか⋯⋯」
「この分だと3時ころだな」
「⁉︎」
全身に雷が落ちたような衝撃が。
「ベ、ベッドが遠いよぉ」
「それと朝はいつも通り4時からだ」
「誰かー!私にぐっすりと遅くまで眠れる仕事紹介してー!」
おわり
「無能ちゃんはさよなら」聖女のひとことでパーティーを抜けた女勇者は冒険者ギルドの受付嬢からやり直す ドットオー @dogt
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