第6話「ニーズは隠し味」

「は? スタミナ料理? それを俺に作れっていうのか」


「はい! そうです! 食材も買ってきました。 タマネギにニンニク」


「はええなぁ」


「そしてやっぱりスタミナといえばお肉。幸いイートラビィのお肉がいっぱいあります」


「それあれだろ。ユウリとかいうガキに狩らせてたモンスターだろ」


「とにかくつくりましょう! 料理長の腕は確かです! 味はとてもおいしいんです!

あとは冒険者さんが求める料理を提供できればいいんです!」


「ああもう! わかったから手を勝手に握るな!」


「あっごめんなさい!」


「それで冒険者が求めている料理ってなんだ? 俺ん家は代々、伯爵家の料理番だ。

野蛮な冒険者たちにもいちおう貴族が食べる料理を食べさせてやっているんだ。

感謝されてもいいくらいなんです」


「そこなんです」


「は?」


「冒険者さんははっきりいって山賊と見分けがつかないくらい野蛮な人たちです。

そんな人たちが求めるのは貴族様のお上品な料理じゃなくてもっと豪快なものなんです」


「じゃあ、お前に食わしてやっているようなものでいいってことか?」


「はい!」


「しゃあねぇな。味付けは自由にやらせてもらうからな」


「はい。もちろん! 料理長の味は王国イチです」


「言ってくれるぜ」


気づいてよかったぁ。


そりゃあ貴族様は料理に食らいついてお祭り騒ぎしないですからねぇ。


当然、ここの冒険者さんたちも静かになるわけだ。


ギルドマスター待っててくださいね。


もうじき冒険者さんたちのお祭り騒ぎが見れますよ。


***


『おかわり!』


「おお!どの冒険者もむしゃむしゃ食べておかわりをしてくれている!」


『今日は酒が進む!こっちも頼むぞ』


『はーい』


「今夜は受付の子たちも駆り出さなけれいけないくらい忙しいですね」


「そうだな。いったいどう口説いてケルトに味を変えさせた?」


「口説く?いいえ。味は変えさせてないですよ。ただ冒険者さんたちのパワーがみなぎる料理を作ってもらっただけです」


「は?」


「スタミナですよ」


「イートラビィの肉を薄くバラにして、タマネギ、ニンニクと一緒に炒めてから甘辛く煮て、それをライスと混ぜて盛り付けた」


「ケルト⁉︎」


「おっさんと新入りがうるせぇから仕方なく新作を作ってやった。感謝しろよ」


「ありがとう。こんな光景が見たかった」


「俺たちシェフは酒に合う料理を修行して作ってきた。だけど酒が進む料理も悪くねぇな。

待ってろこのあとビークボアの丸焼きを出してやる」


「へへへ楽しみです。料理長」


「ケルトでいい」


「え?」


「お前も好きに食べろ。リュカ」


「いただきます!」


ん?


今朝のポインセチアが花瓶に入れられて飾ってある。


そうかケルトくんが⋯⋯


味だけじゃなくて食事をするテーブルの雰囲気も笑顔にしてくれていたんだね。


つづく

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