第3話「専属契約」

「はぁ! 俺たちは冒険者はじめて1ヶ月経つんだぞ! ゴブリンぐらい余裕だ!

ガキだからってみくびるなよ!」


「そうですよお姉さん!」


「ユウリもリリムも落ち着いて」


「かわりにイートラビィの討伐なんてどう? 牧場の草とか荒らして大変なの」


「はぁ? なんでそんなうさぎもどきを俺たちが!」


「駆除したら、ほらぁ牧場の人に感謝されると思うんだけどなぁ?

それにすばしっこいモンスターと戦うと結構経験値つめるんだよぉ」


「ちょっと! お姉さんどういうことですか?

他の受付のお姉さんもマスター呼んでください! おかしいですこの人!」


「あの、だから⋯⋯」


『さっきからなにを揉めているんだい?』


「⁉︎」


誰⁉︎ この見目麗しい方!


「ひょっとしてSランク冒険者のノイド・グライド様ですか?」


この魔女っ子、急にときめいてどうしたの?


たしかに落ち着いた雰囲気でステキ。


「ゴブリン退治か。なるほど僕が代わりに引き受けよう」


「え⁉︎ Sランク冒険者がゴブリン退治を引き受けるんですか?」


「ああ。Sランクには申し分ない依頼だ。ではこれを」


「はい⋯⋯」


「「「⋯⋯」」」


「君たちはイートラビィの討伐がんばって。手強いぞ」


「「「はいッ!」」」


「じゃあ、強くなって戻って来るんだよ」


***


翌朝


Sランク冒険者のノイド・グライドさんが再び冒険者ギルドを訪れた。


「やぁ」


ノイドさんが笑顔で私の窓口に立つ。


「昨日はありがとうございました」


私は深く頭を下げる。


「きのうの子たちにこのクエストを行かせなくて良かったよ」


「え?」


「やはりゴブリンを支配するオーガがいた。オーガは賢いからね。ゴブリンを囮に

駆除しにきた人間を捕まえて食糧にしていた。あの子たちだったら間違いなく餌になっていた。

なんとなく嫌な予感がしていたんだ。君もそうだったんだろ?」


「は、はい⋯⋯」


「よかったら僕の担当になってくれないか?」


「わ、私なんかで本当にいいんですか?」


「君の推察力には感服させられた。これからも頼むよ」


「は、はい! リュカ・ミティーネです!」


「ノイド・グライドだ」


「リュカちゃん。よかったね。いきなりSランク担当なんてすごい」


「ユリナちゃん⋯⋯」


「この子たちもなにか言いたいようだ」


『『『お姉さん!』』』


「きのうの子たち⋯⋯」


「きのうはごめんなさい! ノイドさんから聞きました」


「それじゃあイートラビィはどうだったかなぁ?」


「依頼された数は倒しました!」


魔女っ子の女の子も申し訳なさそうに口を開く。


「ついでに巣穴を見つけてそれも」


「あの! リュカさんのいっていた通りでした! あいつはすばしっこくて大変だったけど

経験値がたくさん集まった気がします」


そうでしょそうでしょ。


「今日でパーティー解散します!」


「え?」


「だからッ俺の担当になってください!」


「はぁ?」


「俺、リュカさんに担当してもらってもっとすごい冒険者になりたいんです!」


「うれしいけど。パーティーの今後はよく話し合ってね。

うしろでリリムちゃんがすごい顔してるよ」


「はッ⁉︎」


「ユウリちょっと来な」


「はい⋯⋯」


「1日で2人と専属契約か。やるじゃないか」


「ギルドマスター!」


「その調子だよ」


「はい!」


つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る