5-18 4次職のマスター

 反省会のおかげで、足りないものや改善するものが見えてきた。

 しかし、結論としては全体的に保留となった。


 レッサーデーモンへのリベンジはしたいが、すぐさま改善できるものは多くない。


 それに加えてカイトの基本4次職の情報はまだまだ増えていくし、4次職のマスターも見え始めている。


 4次職のマスターによって5次職へ転職できれば、そこからまたかなり変わるだろう。


 そんな訳で第46波以降は保留となり、第45波までを周回することになった。


 1周2時間半。

 1周で基本3次職が3つマスター出来るはずだ。


 普通であれば3次職のマスターに20年かかると言われているので、とんでもない話だ。


 ただ、カイトは何らかの事情で転職機能が失われたせいでそうなっていると考えている。

 レベル上げが必要ないならば、日銭を稼ぐだけで十分となり、効率的な戦い方をしなくなったのだろうと。


 【罠士】はあと少しでマスター出来るので、残る基本3次職は生産職の9種となった。

 あと3周で終わる計算だ。


 1周で4次職が2レベル上がれば3周時点で70になるはずだが、そこまでは上手くいかないだろう。


 そんなわけで午後から2周、出来れば3周する予定だ。


ー▼ー▼ー▼ー


 1周目はカイトの無双状態だった。

 第45波まで全て【シャイニングレイン】の一撃で終わらせたのだ。

 かかった時間は驚きの1時間弱。


 基本4次職のスキルを洗い直したカイトが発見したバフの組み合わせが異常だったのだ。


 通常のダンジョンアタックでは到底使えない組み合わせだが、フォースリムダンジョンでは驚きの強さを発揮した。


 使用したバフは7種類。

 【パワーファイター】の【捨て身】。

 【デストロイヤー】の【チャージ】

 【魔闘士】の【魔闘術】と【魔力活性】。

 【練気士】の【練気術】。

 【気功士】の【気功術】。

 【生命魔術士】の【補助魔法強化】を利用した【パワーアップ】。


○【捨て身】:防御力を下げる代わりに攻撃力を大きく上昇させる。

○【チャージ】:使用後一定時間経過するまで次の攻撃の威力を段階的に上げる。

○【魔闘術】:魔力を持続的に消費する代わりに攻撃力を大きく上昇させる。

○【魔力活性】:気力を持続的に消費する代わりに魔力を持続的に回復する。

○【練気術】:生命力を持続的に消費する代わりに攻撃力を大きく上昇させる。

○【気功術】:気力を持続的に消費する代わりに攻撃力を大きく上昇させる。

○【補助魔法強化】:【補助魔法士】の魔法の効果を上昇させる。


 これらに加え、【スキルチャージ】による増幅。

 それがカイトの無双を生み出した。


 それを成したのが【ものまね】の新たな使い方。

 スキルの使い方を洗い直している時に思いついた方法。


 それが【ものまね】に【スキルスロット】を指定することだった。


 【アイテムボックス】がジョブ依存で分けられているから、恐らく意味がないだろうと考えていたのだが、【ものまね】の【スキルスロット】は完全に独立した別のスロットになったのだ。


 【スキルスロット】の【スキル情報】はこうだ。


○【スキルスロット】:【スキル情報】で確認したスキルを設定して使用できる【スキルスロット】を追加する。使用すると設定は解除される。パッシブスキルは指定不可。


 『追加する』なので、【ものまね】でも新しく追加されたのだろう。パッシブだと思っていたが、色々操作可能なのでアクションスキル判定されているのだろう。


 それぞれでクールタイムを管理するのはやや大変だが、これでさらに汎用性が広がったのは間違いない。


 【スキルスロット】で使うスキルはクールタイムがそのスキル毎で判定されるので【シャイニングレイン】2連発は出来ない。

 【シャイニングレイン】のクールタイムは10秒ほどなので15秒毎に交互に使用することは出来るが。


 今回カイトが無双した手順はこうだ。


 第1波から第15波は元々【シャイニングレイン】一撃なので、各ウェーブ15秒で進んで、およそ3分。


 第16波から第25波までは【捨て身】を使用し、それまでと同じく各ウェーブ15秒で進んで、2分半。


 第26波から第29波では【魔闘術】【練気術】【気功術】【魔力活性】を2つの【スキルスロット】と【サードジョブ】で使用して追加。ここも第26波で準備した後は各ウェーブ15秒で突破。2分ほど。


 第30波から第45波までは、それまでのバフを掛け直しつつ、【チャージ】を使用。1分チャージして突入することで一撃で粉砕。

 各ウェーブ間で3分ほど待機することで、50分ほど。


 デメリット付きのバフは発動中任意で止められる。そして説明文には『攻撃力を大きく上昇』とあり、その効果は1.2倍だと思われた。

 1.2倍のバフを5つ重ねることで2.4倍強。

 それだけで今まで【チャージ】していた2.2倍を超える。


 そこにさらに【チャージ】を加えることで4.8倍。

 流石のランク4モンスターも耐えられなかったようだ。


 デメリット付きバフのデメリットは一撃で倒す分にはデメリット足り得ない。

 唯一【魔闘術】の魔力持続消費は厳しいが、それは【魔力活性】で気力に賄ってもらっている。

 生命力と気力は【ジェネラリスト】で使える【ヒール】と【リカバリー】で対処できる。


 獲得マナゴールドは7,000,000弱。

 【罠士】はもちろんマスターし、【工芸士】【料理人】【建築士】をマスターした。

 新たに解放された基本4次職は38種類。

 流石に把握しきれないので、少しずつ検証を進めることにした。


 4次職は全てレベル66となった。


ー▼ー▼ー▼ー


 「ん。やりすぎ。」

 「出番なさすぎ。」


 「流石にあれはないわよ。」


 全員から責められるカイト。


 「いやーここまで上手くいくとは思わなかったわ。」


 あの分ならレッサーデーモンすら倒せるかもしれない。


 「まぁ今の目標を考えたら早いのはいいんだけどね。どうせレベル70にならないと方針が立たないんだし。」


 「5次職?」

 「転職?」


 「そうなんだよなぁ。5次職あるといいなぁ。」


 未だに5次職の情報はさっぱりない。


 「もし転職するなら目指すべき基本4次職を探さないとね。」


 「ん。【グラディエーター】。」

 「【ウェポンマニア】もありかも。」


 「【ジェネラリスト】の方が優秀な気がするけどな。」


 「むぅ。」

 「つまらない。」


 カイトのツッコミに膨れる双子。


 「いずれにせよまずは5次職があるかの確認をしないと。色々考えるのはその後よ。」


 「そうなるとこのままさっくり2〜3周するのがいいか?」


 「ん。不本意だけど。」

 「その間に相談。」


 「そうね。カイトが戦っている間に【精霊術】とか戦い方の相談をしておくわ。」


 「それじゃさくさく進めていくわ。【スキルテイカー】がマスターしたら、一度ダンジョンを出て、もう一度入って第1波の最中に相談しよう。」


 ダンジョンの入り口で相談は避けたい。

 転職があったとしたらレベル1で帰るのも避けたい。


 それならば、とダンジョンの中。

 それも第1波の最中ならモンスターもノンアクティブなので最長30分話すことが出来る。

 それでも足りなければ第2波も使える。


 その後再度カイトが無双して2周し、カイトの基本3次職は全てマスターし終えた。

 

 4次職のレベルは69。

 少し足りなかったが3周目のどこかでマスターは出来るはずだ。

 カイトはサードジョブを【ウェポンマニア】にする。

 有用なものにしたい気持ちもあったのだが、転職してしまえばどちらにせよそのジョブのスキルは使えない。

 そうであるならば無駄に悩まず順番にマスターしていくのがいいだろうと判断した。


 そうして3周目が始まり、第36波を終えた時、【スキルテイカー】まで含めた全員の4次職をマスターしたのだった。

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