5-17 周回前の反省会
初めてのタイムオーバーでダンジョンから排出された一行。
今日は朝早くからダンジョンに突入したので、3時間かけたとは言え、まだ午前中だ。
「とりあえず休憩がてらノースビーストリムに移動しようか。」
ダンジョン前の待機部屋に誰も居ないことを確認すると【リターンポイント】でノースビーストリムの拠点へと移動する。
当然、事前に転移石による移動と、【リターンポイント】による転移が似通っていることは確認してある。
戻るための【セットポイント】も設置済みだ。
ノースビーストリムに移動するのは、ダンジョンの側にダンジョンに入る人間を確認している連中を避けるためだ。
何度も出入りしている所を見られるのは避けたい。
ダンジョン前に戻るのならば攻略者がいない限り見られることはない。
攻略者に見られたところでダンジョンから戻ってきたと思われるだけ。
その場で少し話をして、攻略者がいなくなるのを待てばいいだろう。
今日は朝が早く、入るところは見られていないので、そのまま街の外から戻ってもいい。
ー▼ー▼ー▼ー
拠点へと移動した一行は反省会を始める。
「ん。悔しい。」
「やっぱり火力。」
【ジェネラリスト】は対応の幅が広い分、強力な攻撃がほぼない。
ランク4ダンジョンに求められている火力が4次職のスキルを前提としているのだから、3次職までのスキルしか使えない【ジェネラリスト】には少々厳しい。
「【ルーチンワーク】によるスキルの強化はどれくらい進んでるんだ?」
さらに【ジェネラリスト】は【万能士】の【器用貧乏】の効果でスキルの威力が2割下がっている。
【ルーチンワーク】により、回数をこなせば少しずつ強化されるのではあるが。
「んー。1日100回。」
「3000くらい?」
【パワーアタック】【シャープアタック】【マジックボール】は1日100回をノルマにしているらしい。
100回で1%増加するので3000回であれば30%増加。
元の威力よりは強くなっている計算だ。
【ヘビーアタック】【ペネトレイト】【マジックアロー】【マジックバースト】は消費がやや大きいため回数はこなせていない。
「それなりに上がってるな。そうなると後はそれこそまた武器を変えるか、バフを鍛えるかしかないか。」
「ん。カイトのバフは?」
「4次職の。」
「んー。二人にも掛けられるバフとなると・・・。」
候補は二つ。
28種類もの4次職が解放されているのにパーティ向けのバフは少ない。
候補1つ目は【生命魔術士】の【補助魔法強化】パッシブで強化された【パワーアップ】【スピードアップ】を使うこと。
これは【スキルスロット】に【補助魔法強化】、【職業体験】に【ジェネラリスト】で可能だ。
候補2つ目は【ポーショナー】。ポーションを扱うことに長けたジョブで、【ポーション強化】と【ポーションパーティライズ】がある。
これでバフポーションを強化しパーティ全体化することでメンバーを強化する。
これは【スキルスロット】で可能だ。
ただし、自作しなければポーションを確保できない。
「んー。どっちも?」
「ポーション作る。」
「作るにしてもレシピがなぁ。【薬師】で作りやすくはあるだろうけど。それに【スキルスロット】だと時間がかかるな。」
【ポーション強化】と【ポーションパーティライズ】を順番に設定しなければならないので最低30秒はかかる。
「むぅ。」
「残念。」
「とりあえず【補助魔法強化】で試してみようか。」
【補助魔法強化】を試してみたところ、倍率1.1倍のところが1.2倍になる程度だった。
数字だけで言えば+100%だが、元があまり大きくないので実質の効果は小さい。
「まだ今の4倍くらいの4次職は残ってるからそっちに期待だな・・・。」
今のルナとレナに出来るのは引き続き【ルーチンワーク】による強化を目指すことだけだった。
補助魔法も使用し続ければ【補助魔法強化】を使ったのと同じくらいになりそうだからだ。
「私は・・・威力は大丈夫だけど、引き出しの少なさが気になるわね。エンシェントレイスとかレッサーデーモンには簡単に避けられちゃうし。あと今回はフェルムの力ばかり借りてたから、消耗が気になったかしら。」
生命力・魔力・気力を持続回復する領域を作る【エレメンタルフィールド】、『精霊のおもちゃ』を使用して【精霊器召喚】で強化した鞭。
どちらもフェルムの力を借りるものだ。
「確かにそういう意味では引き出しが少ないのかもな。そうなると、もっとそれぞれの精霊に合ったものを考えるか、どの精霊でも使えるものを増やすかだけど・・・。」
「うーん。両方あった方がいいけど、属性を気にすると使える場面は偏りそうよね。」
「それこそバフ系・デバフ系でいいんじゃないか?それも精霊によって得意不得意あるだろ?」
「そういえばバフというか【エレメンタルフィールド】ってフェルムくらいしかやってないわね。他の子達はどうなのかしら?」
『リルムは〜、敵を柔らかくできるよー?』
『アルムはみんなを素早く出来るかな?』
精霊が話に加わってきた。
『ガルムは・・・みんなの攻撃アップ・・・。』
『カルムはねー!硬くできるよー!』
「おー。ガルムとカルムも話せるまで成長したんだな。」
ガルムは無口な感じ。
カルムは陽気な感じ。
属性のイメージに引っ張られているのかも知れない。
「イルムはみんなの思考速度アップが出来て、トルムは敵を遅くするのね?」
イルムとトルムの出来ることはフェリアが聞いたようだ。
「これで【エレメンタルフィールド】は全員使いやすくなったんじゃないか?消耗がどれくらいかは考えないといけないけど。」
「そうね・・・。便利そうだけど、全員が使うと流石に自然回復じゃ間に合わなさそうね。」
「【精霊器召喚】はどんなもんなんだ?」
「んー。ワンポイントで使うなら消耗は問題にならなさそうよ。常時展開だと流石に厳しいけど。」
「フェリアの魔力回復はマジックポーションで何とかなっても精霊力はそういうわけにもいかないしなぁ。」
訓練とミスリルのおかげで、大分効率的に【精霊術】が使えるようになってきたとは言え、無制限に使えるわけでもなく、ややセーブ気味に行かないと精霊達は力を使いすぎる。
「あとはいくつか新しい攻撃方法が欲しいところね。【精霊器召喚】を軸にしたものでもいいけど何かないかしら。」
「うーん。そうだな。魔法を真似てみるのが一番イメージしやすいと思うんだけど・・・。その前に。」
「その前に?」
「フェリアは一度精霊達と話し合ってみるのがいいかも知れない。【精霊憑依】はあまり使ってないし、【精霊顕現】はさせてるけど【エレメンタルフィールド】のようなものは把握してなかったしな。【精霊憑依】【精霊術】【精霊顕現】【精霊器召喚】でそれぞれ何が出来るのかまとめてみるのが必要なんじゃないか?」
「言われてみると確かにそうね。ほとんど精霊任せで何が出来るとか聞いたことはなかったかも。」
「ん。お話大事。」
「レナも聞く。」
「その前にカイトのことも話さないとね?カイトの反省点は何かある?」
「まぁ俺の場合は4次職をどれだけ把握できるかにかかってそうな気もする。まだレベルが1だからサードジョブに設定してもあまり使えないけど、【スロットアップグレード】でパッシブも設定できるようになったから、色々考えてみる必要があるかな。」
「そういえば私は防御方法も考えないとね。私が自分の身を完全に守れればカイトが攻勢に出ることも出来るわよね?」
「まぁそれはあんまり考えなくてもいい気もするけど、オプションとしてはありだな。」
「それじゃ午前中いっぱいは、その辺りのことを考えましょう。私はルナ達と精霊と話して色々纏めてみるわ。」
「分かった。俺は基本4次職で何が出来るか考えてみる。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます