5-14 レッサーヴァンパイア達の群れ
カイト達は次の日は朝早くからダンジョンに向かった。
午後からでも良かったのだが、第36波に挑戦して問題なければ周回を、問題があれば今日中に改善点を、と言うことで早くからと言うことになった。
ここのところ午後開始ばかりだったと言うのもある。
いつもより30分早く、1時間かけて第35波まで突破。
レベルが上がったことと、新しく得られた基本4次職のスキルをうまく使うことで今まで【シャイニングレイン】で一掃出来なかったランク3モンスターのワイルドウルフ とオークが倒せるようになったからだ。
流石にリーダー種は残るが、それはフェリアの【マルチロックレーザー】で対処。
オーガにしても【シャイニングレイン】で大きく削れるため、残りはルナとレナの駆けながらの一閃であっという間に対処したからだ。
ランク4モンスターは流石に大きく変わることはなかったが、それでも1,2回攻撃する回数が減るのは、討伐時間に大きな影響を与えた。
大きく貢献したスキルは【デストロイヤー】の【チャージ】。
○【チャージ】:使用後一定時間経過するまで次の攻撃の威力を段階的に上げる。
【スキルチャージ】と同様、最大倍率は2倍。
大きく違うのはその時間で、【スキルチャージ】は最大倍率まで10分掛かるのに対し、【チャージ】は1分。
ただし、【スキルチャージ】はその間いくらでも攻撃できるのに対し、【チャージ】はダメージを与える行動をすると使用されてしまう。
両者は重複するため、両方とも最大倍率まで上がれば、合計4倍になる。
流石に10分は待っていられないのでウェーブ間に1分チャージして2.2倍の【シャイニングレイン】で火力を大きく上げたのだった。
「それじゃバフを更新したらチャージするから、それが完了したら第36波を始めるぞ。始まったら【シャイニングレイン】を使って、念のためすぐに【ダンジョンウォーク】を使用するからそのつもりで。最初だし後のことは考えずに全力で行こう。」
カイトはこの数日の間に【ダンジョンウォーク】をラーニングしていた。
元々それなりに使用していたのでようやくかと言ったところだ。
そうして始まった第36波。
出現の兆候が現れたらすぐに【スキルスロット】から【シャイニングレイン】を放つ。
そして【ダンジョンウォーク】で角に移動した。
「・・・は?」
そこに居たのは大量の『レッサーヴァンパイア』。
ランク4のモンスターだが、レッサードラゴンよりは数段落ちる。
さらに光属性弱点のため、2.2倍【シャイニングレイン】で既に瀕死の様相だ。
そしてお供には『ブラッディバット』がいたようだ。すでに全滅しているが。
残ったレッサーヴァンパイアをフェリアが片付ける。
「うん。普通なら脅威なんだろうな?」
数が多く、制空権も奪われ、体が小さい蝙蝠には複数から攻め立てられる。
その巨体から行動を制限されていたレッサードラゴンとは違うのだ。
ランク4モンスターに対して4次職レベル60の複数持ちの魔法。さらに弱点属性で2.2倍撃。
レベル60のメイジが【シャイニングレイン】を4発撃った以上のダメージと考えればこの結果も不思議では無い。
バフなどがあることまで踏まえると、むしろ生き残ったレッサーヴァンパイアに驚くくらいだ。
「こうなるとレッサードラゴンの方が強いわね。元々の性能もレッサードラゴンの方が上でしょうけど。」
「まぁレッサーヴァンパイアはどっちかっていうと搦手メインで攻撃力も耐久力もないからな。」
レッサーヴァンパイアはハーピィと同じように空中戦を得意としていて、メインの攻撃は基本4属性の【マジックボール】だ。
レッサーだけあってヴァンパイアらしい攻撃はほとんどない。
唯一と言えるのは噛みつきからの吸血攻撃くらいだろう。
もちろんブラッディバットも吸血攻撃をしてくる。
吸血攻撃とは言っても実際に血を吸われることはないらしい。
【ヒール】などの生命力を回復する魔法で回復するからだ。
実際に血を失っていたら【ヒール】では回復できないだろう。
「これは第39波までは苦労しなさそうね。第40波はヴァンパイア系だとしたら何が出てくるかしら?」
「ランク5のヴァンパイアだと『ヴァンパイアデューク』という情報はあるけど、レッサーヴァンパイアからヴァンパイアを飛ばすなんてことあり得るんだろうか?」
「今までのパターンからは考えにくいわよね。例えランク5で倒せなさそうでも30分耐えればいいんだし、取り巻きはいたとしても倒せるでしょうから、私としては試してみたい気はするわね。イルムの精霊器なら光属性で弱点狙えるし。」
「まぁとりあえず第39波まで進めてから考えようぜ。」
とは言え、バフを1つ追加したら【シャイニングレイン】で一撃となったので、苦労するはずもなかったのだが。
追加したバフは【パワーファイター】の【捨て身】。
○【捨て身】:一定時間防御力を下げる代わりに攻撃力を大きく上げる。
【スキル情報】にある攻撃力は魔法攻撃力も含まれていることは分かっている。
サードジョブは予定通り第38波を終えた時にマスターし、【補助魔法士】から【狩人】へと変更。すでにレベル39となっている。
4次職もレベルを1つ上げて61だ。
解放された4次職は【ガーディアン】【技法戦士】【気功士】【ウィザード】【生命魔術師】の5つ。
「まぁ第40波も行ってみるか。」
「ん。賛成。」
「暇だよ?」
カイトが一撃で倒すので、ルナとレナがしたことはカイトへのバフくらい。
「次は流石に出番があるさ。油断するなよ?」
「当然。」
「カイトもね?」
「フェリアもいいな?それじゃ行くぞっ!」
ー▼ー▼ー▼ー
結果から言うと第40波は全く問題ではなかった。
出現したのはヴァンパイア。
ランク4モンスターだ。
ただしランク4の中では上位に位置し、【ライフドレイン】や【蝙蝠化】など多様なスキルで翻弄してくる厄介極まりない戦術を持つ。
通常、ランク4ダンジョンの最後のボスはランク5モンスターが出てくる。
つまり第40波は最後ではなかった。
「結局ヴァンパイアの波は数で押すタイプだったんだろうな。」
第40波で出てきたモンスターはヴァンパイアが50。レッサーヴァンパイアが50。そしてブラッディバットが圧巻の1000。
ちなみに数は数え切れないので、あとでマナゴールドの増加量から計算した。
これだけの数がいれば、範囲攻撃が貧弱なパーティであれば、その圧倒的な物量差に押し潰されることだろう。
カイト達には全く当てはまらず、カイトの【シャイニングレイン】、フェリアの【マルチロックレーザー】でそのほとんどが消滅し、残ったヴァンパイアはルナとレナが切り裂いた。
「ん。不完全燃焼。」
「出番が少ない。」
「あの数全部を相手にするのは嫌だろ?」
「んー。」
「それは嫌。」
「あの数は範囲攻撃というか【シャイニングレイン】並の魔法は必須よね・・・。」
【シャイニングレイン】は戦略級とも言えるほどの範囲の広さだ。
何よりパーティメンバーに効果が出ず、フレンドリーファイアが発生しないのも大きい。
基本3次職までの範囲攻撃の代表格である【マジックバースト】が自分中心半径10mほどであるのに対し、【シャイニングレイン】は半径100mほどだ。
フォースリムダンジョンの部屋の大きさが100m四方であることを考えると、隅で使えば対角以外はほとんど効果範囲に含まれる。
「この空間の広さであの数は・・・。何というか密集って感じだよな。一撃で終わるからすぐ視野は拓けるけど。」
体長が1mほどのブラッディバットが1000匹だ。
適当に魔法や矢を放っても当たるだろう。
「それにしても予想はしてたけど、マナゴールドは1,000,000か。次が500,000になるのか別のパターンになるのか。」
10の倍数の波を超えると、その次の波は基礎値とも言える数字が10倍になり、また1から倍々になっていく。
計算上は第41波からは基礎値が500,000になり、第42波では1,000,000になる。
ただし、この計算だと第50波では20,000,000になり、ランク5モンスターでもかなりの数出現させないと達成できないはずで、それだけの数のランク5モンスターはランク4ダンジョンと言えなくなるのではないかと、カイトは考えている。
そうであるならば、第31波からの基礎値50,000をそのまま受け継いで、第41波が550,000、第42波が600,000、第50波が2,000,000がまだ現実的だろう。
「しかしこのダンジョンは意地が悪いな。」
「ん?」
「意地悪?」
「ああ、オークまでの第25波までは3次職の4人パーティまでは何とかなるかも知れないけど、第26波から第35波までは完全に『魔法職殺し』だろ?」
オーガもレッサードラゴンも魔法にそれなりの耐性を持ち、高い生命力と攻撃力で押してくるタイプだ。
魔法職にとって相性が良いとは言えず、【攻撃魔法士】の魔法では大したダメージは与えられない。
「それに対して第36波からここまでは完全な『近接職殺し』だ。意地が悪いだろ?」
対してレッサーヴァンパイアとブラッディバット、そしてヴァンパイアは基本的に空中にいるモンスターで、近接職からは攻撃しづらい。
しかも機動力もあるので、近づいてきたとしても攻撃を当てるのは簡単ではない。
「そう言われると私たちだから対応出来てると言えるわね。」
カイトもルナもレナも近接攻撃も魔法攻撃も可能である。
流石にルナとレナの魔法は力不足になってきてはいるが。
フェリアの攻撃は精霊力がメインで、魔法耐性はあまり気にせずダメージを与えられる。
魔法耐性が高い方がダメージは小さいと思うが、それを超える火力があるのだ。
「ん。つまり?」
「第35波までこのまま?」
「少なくともその可能性は高いだろうなと思ってる。第41波で予想を覆される可能性はあるけど。」
「まぁ余裕はあるんだし、次に行きましょ。」
「そうだな。それじゃ準備したら第41波だ。」
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