5-12 【陶芸家】とフェリアの武器
「とーげーか?・・・あぁ【陶芸家】か。」
「カイト、よく分かるわね・・・。私はどんなのかも想像できないわ。」
「簡単に言うと粘土で食器なんかを作る人のことだな。そのジョブでなんでミスリルが加工できるかは分からないけど。」
考える時間が無駄なのでとりあえず【職業情報】と【スキル情報】で確認する。
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【陶芸家】
基本4次職
転職条件
【工芸士】をマスターする
【料理人】をマスターする
成長条件
特になし
レベル上限:70
習得スキル
【マナクレイ】(1)
【ベイキング】(30)
【トランスポジション】(60)
○【マナクレイ】:マナゴールドを使用して、マナで出来た粘土を出現させる。
○【ベイキング】:【マナクレイ】の形を固定させる。
○【トランスポジション】:固定化した【マナクレイ】と指定の素材を入れ替える。
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「あー、これは銀食器とか作ることを想定してるんだな。」
【マナクレイ】で形を作り、【ベイキング】で固めた後、素材と【マナクレイ】を入れ替える【トランスポジション】を使えば、普通では作れない形でも作ることが可能になるだろう。
「【トランスポジション】の対象をミスリルにすれば出来そうね。」
「普通の武器をこれで作るのは不安だけど、形重視なら十分なのかもな。」
普通の武器のように叩いて鍛えたり、刃をつけたりはこの方法ではやりにくいだろう。
元々そういう部分はないので問題はないが。
【マナクレイ】はそこまで消費マナゴールドは多くなく、インゴットサイズで1,000だった。
そして【マナボトル】などと同じく、任意で消去可能。役目を果たした【トランスポジション】後も同様に消去された。
【トランスポジション】に指定できるのは『素材』だけで、すでに別の役割を持っている武器の鋼などからは入れ替えはできなかった。
またレッサードラゴンの歯などの原型があるものからも無理で、【粉末化】したものは可能だった。
「とりあえずマナクレイで作って見るか。メインの形は俺が作るから、3人は装飾を考えてくれないか?」
「ん。手伝う。」
「かっこいいやつ作る。」
「ルナ、レナ、お願いね?私は精霊からの要望なんかも纏めるわ。」
制作が開始される。
まずカイトが作ったのは接続用部品。
精霊達と話し合った結果、それぞれの部品は金属棒で繋ぐだけでいいことが分かったので、把持部、発生部、接続部のそれぞれの接続可能箇所には、金属棒が嵌まる穴があればいいことになった。
金属棒は棒手裏剣としても使えるように円柱に両端を四角錐状に尖らせたものにし、何本か作って【ベイキング】で硬化させる。
続いて把持部の作成。
持ちやすいように太さを調整しながら、長さ15cm、直径2cmの円柱状に。その後実際にフェリアに握らせて、手の型を採る。
そして最後にその両端の平面の中央に接続部品を半分刺し込み、穴を開ける。
【ベイキング】後は実際に接続部品を差し込み、問題がないことを確認する。
発生部は、直径4cmの完全な球体になった。
その円周状に等間隔に接続部品用の穴を開け、それに直交するようにも穴を開ける。
そしてこの発生部は、当初斜方立方八面体が使われる予定だった把持部の柄頭としても使われることになった。
その理由は接続部。
当初の予定だった四角柱の接続部は、フェリアが使うにしては無骨すぎると却下されたのだ。
そして考案されたのが『翼状部』。
翼状部2つで発生部を挟み込むとブーメランとしても使えるような形状で、その発生部に把持部を差し込むと剣の柄と鍔になるような形だ。
翼状部を1つにして把持部の角度を変えると銃としての形状も取れる。
元々大型武器の把持部を接続する予定だったものが無くなったため、新たに『延長部』が追加され、長さを調節して使いやすいように、長さ20cm太さ3cmの円柱が3本用意されることになった。
「んー、こんなもんか?」
【ベイキング】して固定したマナクレイを実際に組み立てて形状を変化させてみる。
手作業ではそれなりに時間がかかるが、形状は思った以上にしっくり来る。
装飾のメインとなる翼状部にはしっかりと花と蔓をあしらったデザインが施されており、女性向けらしい仕上がりになっている。
「なんか最初に聞いた時はどんなのが出来上がるか不安だったけど、意外にしっくりくるのね。」
「ん。カッコいい。」
「フェリアに似合う。」
「まだいないけど、他の武器が好きな精霊が来ても対応できるはずだし、悪くはないと思う。結局インゴットも1つで済みそうだし。問題は変形時間がどれくらいかかるかだけど、精霊は自信満々だし、ミスリルじゃないと出来ないみたいだから、こればっかりはぶっつけ本番だな。」
精霊に変形を試してもらおうとしたが、マナクレイは扱えなかった。
精霊石が使用されているミスリルだからこそ出来るのだろう。
「重さもミスリルだからそこまででもないし、あとは持ち運びの方法くらいかしら?」
「一番長いのでも20cmなんだし、矢筒みたいなのでいいんじゃないか?腰の後ろにでも回せばバランスも取れるだろうし。」
「なるほど。それならいいかも知れないわね。どうせ武器としては直接は使えないでしょうし。」
「杖としてくらいなら使えるだろうけど、アイビーロッドのような使い方は出来ないし、フェリアの【精霊術】は魔法じゃないから強化もされないしな。」
「ん。とにかくミスリルにする。」
「早く試そう。」
考察していたらルナとレナが【トランスポジション】を急かしてくる。
「そうだな。それじゃやってみるか。いくらかかるか分からないけど、魔力じゃ絶対足りないだろうなぁ。」
【トランスポジション】も魔力かマナゴールドか消費方法を選べるスキルだった。
各部品を集め、傍にミスリルインゴットを置く。
カイトが【トランスポジション】を使うとそれぞれが光を放ち、ミスリルインゴットが消失した。
「出来たかな?」
消費したマナゴールドは驚きの1,000,000。
『できたー!』
『たのしみー!』
『フェリア早く〜!』
無事完成しているようだ。
「これの名前はフェリアが付けてくれ。」
「んー、そうね。『精霊のおもちゃ』ってのはどうかしら?」
変形機構なんかはまさしくおもちゃだろう。
直接の武器としての能力もない。
「高級なおもちゃだなぁ・・・。」
カイトは苦笑するも反対はしない。
「ん。いい名前。」
「レナ達も名前つけないと?」
二人の武器はまだ名前に(仮)が付いている。
「フェリア、とりあえず精霊達と色々試してみてくれ。」
「うん。やってみる。」
精霊達はものすごく楽しみなようで、とてもはしゃいでいる。
そうして『精霊のおもちゃ』は完成した。
【精霊撃】の効果はかなり上がり、精霊力の消費量も格段に下がったようだ。
それと同時にミスリルのおかげで【精霊術】使用時の魔力効率も上がったらしい。
ただでさえ効率のいい【精霊術】が更なる力を得ることに成功したのだった。
「ん。決まった。」
「ドラゴンファング。」
そうこうしていたら双子の武器の名前も決まったようだ。
二つ合わせて『ドラゴンファング』のようだ。
「まぁドラゴンの牙を使ってるし、使い方もそんな感じだけど、個別で言う時はどうするんだ?」
「んー、上と下?」
「分かればいい?」
「あーうん。それでいいならいいんだけどさ。」
こうして全員の装備更新が完了した。
ここからカイト達のレベル60、そしてレベル70に向けたダンジョン攻略が本腰を入れて始まることになる。
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