5-8 不穏の気配と竜鋼、そしてダンジョン周回
「流石にランク4の群れは大変だったわね。精霊達に渡してた魔力もかなり無くなったみたい。」
「ん。疲れた。」
「武器が必要。」
「ランク4相手じゃなぁ。明日はミスリルを見せに行くついでに進捗を確認しにガルドさんのとこ行こうか。」
「そうね。」
「ん。」
「賛成。」
次の日の予定が決まった。
注文したのは昨日なので、余裕があれば1つくらい出来ているかも知れない。
「ねぇカイト。ミスリルって作るの難しい?」
その流れでフェリアが訊ねてきた。
「ん?いや、精霊石さえあればスキル使うだけだから難しくはないよ。」
「そうなの?なら次精霊石出来たら私の分のミスリルお願いしていい?精霊達が凄い気にしてるみたいなの。」
「精霊が?それなら今回のを使ってもいいけど。他にも素材作ってみるつもりだし。必要な量とか使い方に希望とかあるの?」
ミスリルの性質もまだ分かっていないし、精霊が気にしているならフェリアに使ってもらう方が有用かも知れない。
「うーん。それがよく分からないの。ミスリルそのものに興味があるみたいで。」
「そうかぁ。それなら分かるまで保留かな。」
精霊器とかに関係あるのかもな、とカイトは思ったが、まだ習得していないので何とも言えない。
「明日はもう1つ考えてる新素材も作ってみたいから、拠点で作ってからノースアクアリムかな。」
「それもミスリルみたいにカイトの知識にあるものなの?」
「いや、そっちはサードジョブが【職人】の時の直感かな?知識にあるミスリルみたいなのは他にもあることはあるけど、そっちは材料に見当もつかない。それに多分3次職のガルドさんだと扱えないかも知れない。ミスリルもだけど。」
「ルナが頑張る。」
「レナも頑張る。」
「ああ、折角工房のついてる家を手に入れたんだし、生産系も挑戦し始めてもいいかもな。」
現在ノースビーストリムにある家の工房部分には生産設備はまだ何もない。
そこまで広いわけでもないし、どんな設備を設置すればいいか分からないからだ。
「そういえばこの前の買い物で何か使えそうなものはあったのか?」
「んーん。何も。」
「ここは高い。それに不穏。」
確かに物価は高い。
フォースリムダンジョンに人気がないため、経済状況が悪いのだ。
「不穏?何かあったのか?」
「領主に不満。」
「税金が高い?」
「経済状況が悪くて増税したのかもな・・・。それで不穏って言うのは、その不満が爆発しそうな雰囲気があるってことか?」
「んー。変な団体?」
「ダンジョン前のも多分?」
「ダンジョン前ってあの変な視線を向けてくる人達よね?団体なの?」
「確かにあの連中、何をやってるか分からないし、団体だとしたら不穏なことを考えてるのかもなぁ。」
「ここの領主が噂通りならありえなくもない話ね。増税もあったみたいだし。」
カイトは噂は知らないが、フェリアの身柄を「災厄のせいで領地が衰退している」と理由をつけ、受け取ろうとしたことは知っている。
「フェリアの嫌がらせ作戦が、とかいう段階はとっくに過ぎてるのかもな。」
嫌がらせ作戦とは、あまり流行っていないダンジョンを攻略し、そこで得られる特産品はその場では売却せず、他所に流してしまい、経済的なダメージを少し与えようとしたものだ。
ところが予想よりも経済状況は悪く、今それをしてしまうと市民の困窮にも繋がりかねない。
「あんまり拘ってるわけじゃないからいいけど、方針転換は必要かもね。いくつか思いつくことはあるけど、それにはやっぱり私達がまずは強くならないと。せめてここのダンジョンが攻略できるくらい。」
「そうなるとやっぱりまずは武器ってことだな。あとは精霊達のミスリルの使い方か。」
「そっちは何とか色々聞いてみるわ。」
「了解。それじゃあ、武器に関しては明日また動くとしますか。」
ー▼ー▼ー▼ー
翌日、カイトは新しい素材を作り上げた後、ガルドの元を訪れた。
「これは・・・。こっちが竜鋼で、こっちがミスリルだな?」
カイトが作り上げたもう一つの素材は竜鋼。
レッサードラゴンの素材と鋼インゴットを【合成】したものだ。
カイトの知識にはっきりと存在するものではないが、ドラゴンの歯を見たときになぜか思いついたものだ。
ドラゴンの牙には武器として使えるほどの耐久性や長さがあるのだが、それ以外の歯には使い道がなく、廃棄するしかなかった。
そういう意味で鋼の上位素材として、竜鋼が作り出されたのは画期的と言えるだろう。
作成方法は鋼インゴット1つに対してドラゴンの歯を3つ。
ドラゴンの歯は【粉末化】した方が【合成】の負担は小さく、結果的に必要なマナゴールドが少なくなることが分かった。
「竜鋼は鋼と同じように扱えそうだな。ミスリルは・・・試してみないと分からんな。」
「とりあえずルナとレナの武器が出来たら、竜鋼でバスタードソードを頼みたいんだけど。」
「ああ、それは問題ない。代わりに竜鋼をいくらか譲ってくれ。」
ルナ達の武器を竜鋼で作らないのは重いからだ。
両手で1本ずつ使うにはなるべく軽い方がいい。
「出来る範囲では用意するけど、結構マナゴールド使うんだよ。」
「それは装備代から差し引くから大丈夫だ。」
「それならまぁ。それで全部揃うのにどれくらい時間かかる?その時持ってくるよ。」
竜鋼を1つ作るとカイトの魔力が枯渇寸前になる。
使うマナゴールドは50,000。
精霊石を【粉砕化】するのと同じ消費だったので、マナゴールドの消費量と魔力の消費量は一定の比例関係にあるのだろう。
「そうだな・・・。双子の嬢ちゃんたちのは明日までには出来る。難所は終わったからな。カイトのも明日までに何とかしておいてやるさ。鋼と同じならその気になりゃすぐ出来る。」
「ミスリルはどうする?」
「是非色々試してみてぇ。と言いたいところだが、竜鋼も気になる。まずはそっちからだな。だから明日いくつか持ってきてくれよ?」
「うん、分かった。ミスリルは別で使うかも知れないから次はいつになるか分からない。」
「おう。すげぇもんなのは間違いないから、使えるんなら使っとけ。それじゃ頼んだぞ?」
「そっちも任せる。防具は大丈夫そう?」
「張り切ってたから大丈夫じゃないか?遣いを出して確認しておくぜ。」
「分かった。ありがとう。それじゃまた明日。」
新素材はガルドのやる気を引き出したらしい。
思ったよりも早く武器が手に入るようだ。
信頼しているので急ぐことによって出来が悪くなるなどは心配していない。
新たな装備に期待を寄せつつ、カイト達はフォースリムへと戻った。
ー▼ー▼ー▼ー
フォースリムダンジョンは、装備を更新するまではハイオーガは避けると言うことで、第29波までを攻略する。
相変わらずダンジョンの前では視線を感じたが、何もされないのならば気にしないことにしたので、そのままダンジョンへと入った。
第29波まで終えるのに大体1時間程度だと分かったので、夕方まで周回することにした。
視線を向けてくる連中もダンジョンの転移石付近までは見ていないようなので、入り口付近から離れなければ何周したとしても気づかれないだろう。
いつもより長いとは思われるだろう。
もちろんカイト達をそこまでチェックしていたらという話だが。
結局5時間ほどかけて4周。
マナゴールドの増加がハーピィでの狩りよりやや劣る程度になった。
リザルトとしては【リクルーター】【精霊術士】【ジェネラリスト】がレベル49、【スキルテイカー】【重戦士】がレベル47となった。
サードジョブは流石のジャンプアップである。
次の狩りでマスターに至るかも知れない。
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