5-4 ルナとレナの新戦闘術
フェリアの【マルチロックレーザー】の練習が終わったあと、第11波から出現するゴブリンを利用してルナとレナの特訓が始まった。
カイトもするべきなのだが、とりあえずは二人の動きを見てアドバイスすることになった。
「まずやるべきことは、相手の攻撃を回避するということだな。当たったり防御すれば【コンビネーション】の効果が切れるから、とにかく回避優先を心がけよう。まぁエンシェントレイスみたいに範囲魔法とか使われたらどうしようもないけど。」
「ん。バフ?」
「全開?」
「バフはとりあえず【ステップ】だけでいいんじゃないか?ゴブリン相手に【ウォークライ】は必要ないだろうし。」
「ん。分かった。」
「じゃ、お願い。」
二人の準備が出来たので、カイトは第11波を始める操作を行なった。
第11波。出現はゴブリン20。
二人は正反対に広がり、まずは【挑発】を使用。
近くにいたゴブリンがそれぞれ二人の近い方を狙う。
ノーマルのゴブリンは武器を持たないので、飛び掛かって噛みつこうとするのが基本攻撃だ。
二人はそれを【パリィ】し、【カウンター】。
「回避主体ならそれもありだよなぁ。忘れてた・・・。」
【ジェネラリスト】としてかなりの成長を見せる。
「確かに攻撃力が物足りないのも分かるけど、多様性って面ではダントツよね。」
近接戦も遠距離戦もこなす。
さらにはアイテムや罠を使った搦手も出来る。
今までは遠距離戦をすることが多かったが、今の動きを見る限り近接戦も問題がない。
そんな考察をしている間にゴブリン20体は消えていった。
「うーん。今のところ問題ないよな?次は【スピードアップ】も使ってみるか。」
【ステップ】も【スピードアップ】も敏捷性を高めるバフだ。
2重の上昇は思考の遅れを生み出し、慣れなければその効果を十全には活かせない。
「あと【カウンター】を多用すると【バリエーション】の効果が増えにくくなる・・・って言ってもゴブリンじゃ意味ないか。」
【雑用士】系統3次職の【万能士】で習得した【バリエーション】は『同一相手に過去5回と違う方法で攻撃すると攻撃力が上昇する』スキルだ。
まともに当たればそれだけで倒せるゴブリンには意味がない。
さらに言えば、5回以内に同じ攻撃方法があったとしても、その攻撃で攻撃力が加算されないだけで【カウンター】を多用しても問題はない。
続く第12波、第13波でも何の問題もなく、ゴブリン達を屠っていく。
右手の小剣で【パワーアタック】、左手の短剣で【シャープアタック】。
どちらのスキルも武器不問で攻撃力を上げるスキルだ。
敢えて言うならば、【パワーアタック】は斬撃強化、【シャープアタック】は貫通力強化といったところだろう。
左右の攻撃が終われば【マジックボール】。
そして【挑発】し、【パリィ】からの【カウンター】。
そして左右の武器で素早く切り付ける。
これは通常攻撃として判定させるためだろう。
これで6種類の攻撃。
【バリエーション】の条件を満たす。
【カウンター】が使えるかどうかは相手次第だが、【コンビネーション】の終了判定がダメージを受けるか防御することなので、【パリィ】で受け流せば終了判定を受けることは恐らく無い。
アンデッドレッサードラゴンを相手にした時は遠距離攻撃主体だったので出番はなかったが、近接戦であれば【格闘士】の【インファイト】も効果を発揮する。
○【インファイト】:至近距離で攻撃する際、攻撃力が上昇する。
「なんというか、言うことがない?」
「完全に使いこなしてるわね。」
第13波も終わった。
「ん。【集中】すごい。」
「【聴覚強化】も有能。」
「スキルの組み合わせのシナジーがすごいな。」
「音まで聞いて攻撃を察知してるのね。」
「ん。よく分かる。」
「【気配探知】も。」
「うん。言うことないな。まだ攻撃アップ系のバフもあるわけだし。」
「敢えて言うなら・・・装備かしら?」
確かに、二人の装備は小剣も短剣も鉄製だ。
通常であれば2次職でお世話になる装備である。
「鋼製でもいいけど、それでも力不足かなぁ。重いのはよくないだろうけど。」
二人とも小柄であるから、長すぎたり重すぎたりする武器は適さないだろう。
そのための小剣だ。
「「あ。」」
二人の声が重なる。
「ん?どうした?」
「忘れてた。」
「戦利品。」
「え?何かあったっけ?トレジャーボックスなんて出てないだろ?」
カイト達は未だトレジャーボックスに遭遇していない。
普通はランク3以上のダンジョンで出るのだが、ノースビーストリムダンジョンでは【ダンジョンワープ】メインであまり移動していないし、ボスで落ちることがよくあるのだが、徘徊型ボスは例外なのだ。
「違う。ドラゴン。」
「それとオーガ。」
「「あ。」」
今度はカイトとフェリアの声が重なる。
ゴースト戦で戦ったアンデッドレッサードラゴンとアンデッドオーガは魔物だったため、その死体はそのまま残った。
今は二人のアイテムボックスにある。
大きな死体であるし、普段使わないジョブの【アイテムボックス】に入れてあったので忘れていたのだ。
「あれならきっといい武器作れるよなぁ。」
「オーガなら防具にもいいわね。」
「今日また街を出るのも微妙だし、明日の午前中にガルドさんのところ行ってお願いしてみようか。」
「ん。それがいい。」
「早くしないと腐る。」
「それは大丈夫だと思うぞ。」
高ランクの魔物は腐りにくい。
それが常識である。
理由は分かっていないが、一説によると魔力によるものだろうと言われている。
「とりあえずレッサードラゴンの左右上下の牙で小剣と短剣を2本ずつは作れるんじゃないか?アンデッドだし、普通よりも強いのが出来そうだな。」
アンデッドの素材は、そのアンデッドになった元の魔物やモンスターよりも上質になる。
魔物の場合は、ドロップと違って品質は均一にはならず、その状態に左右されるが。
「フェリアも、精霊のことを考えたらいくつか武器を持ちたいところではあるよな。【精霊憑依】を使えば近接戦も出来るだろうし。」
「私は今は【精霊術】で手一杯だし、レベル60の【精霊器召喚】で何とかなりそうだから、武器は後回しでいいわ。」
「そう言えばそれがあったな。」
精霊器が武器とは限らないが、好みの武器がある時点で可能性は高いだろう。
防具には興味を示さないし。
「俺の武器も変えないとだよなぁ。」
カイトは現在はオーソドックスな剣と盾を使っている。
どちらもやや上等な鉄製だ。
「盾はドラゴンの鱗でいけるだろうけど、剣がなぁ。」
「ん、錬金術。」
「【合成】?」
「あぁ、【錬金術師】か。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【錬金術師】
基本4次職
転職条件
【補助魔法士】をマスターする
【工芸人】をマスターする
成長条件
特になし
レベル上限:70
習得スキル
【アルケミー】(1)
【合成】(30)
【クリエイトゴーレム】(60)
○【アルケミー】:魔力と素材を用いて、細かい過程を省いて製品を作ることが出来る。
○【合成】:物質同士を合成し、新たな物質を作ることが出来る。
○【クリエイトゴーレム】:3m級のゴーレムを作り使役出来る。追加で魔力を使うことで細かい造形や命令をすることが出来る。
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【クリエイトゴーレム】にはノースビーストリムの陣地を守るのに非常にお世話になった。
「スキルが分からなさすぎて使ったことないんだよなぁ。」
【アルケミー】は錬金術で作成できる範囲のものを瞬時に作るスキルだ。
この世界の生産品は、瞬時でなければ【錬金術師】でなくても作れる。もちろん成功率や品質は落ちるが。
情報は失われているので、何が錬金術、というか【アルケミー】で作れて何が作れないかは分からない。
レシピが存在しないのである。
【合成】も同様だ。
ただトレジャーボックスから得られる武器には素材の分からないものがあったりする。
【合成】ではそのような素材も作れたりするのだろう。
「まぁ確かに試してみる価値はあるか。いい武器を買うのもいいけど、俺たちじゃなぁ。」
若すぎると高級品は購入すらさせてもらえない。
「それじゃあ昨日と同じところまでやって、明日ガルドさんのところへ行こう。」
そうして第25波まで戦い終え、ダンジョンを後にするのだった。
【リクルーター】【精霊術士】【ジェネラリスト】はレベル39に、【スキルテイカー】はレベル36に、【サードジョブ】は【職人】を終え、【農家】レベル29となった。
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