5-2 初回攻略のリザルトとカイトのアイデア

 自重なしに進み始めた結果、第15波までは【シャイニングレイン】の一撃で終わらせることが出来た。


 第16波からはランク3のワイルドウルフが出現し、大分削れはするものの一撃とは行かないようだ。

 同じランク3のハーピィも一撃ではなかったのでそんなものだろう。


 ただ同時に出現するランク2のグラスウルフは一撃なので、対応する労力は非常に少ない。

 16~19波まで、出現するワイルドウルフは10体で、残りはグラスウルフが40~75体なので、グラスウルフを一撃で倒してしまえば、あとは残ったワイルドウルフ10体を少し削るだけだ。


 第20波からは難易度が跳ね上がった。

 10ウェーブ毎にボスが出るので当然と言えば当然だ。


 出現したのはワイルドウルフリーダーが3体とワイルドウルフ60体。一気に6倍以上の戦力だ。

 グラスウルフとまともに戦っていれば、もうちょっと戦力差は少ないはずだが。


 カイト達はハーピィを集めて同じような数を相手にしていたので、特に問題はない。

 【シャイニングレイン】で削られたワイルドウルフ達は、何とか【スキルスロット】に指定できた【ダークイロージョン】で次々削られて消えていった。


 第21波から第25波にはオークが出現した。

 カイト達が戦うのは初めてだった。


 第21波はオーク20体だけだったのだが、オーク自体はワイルドウルフより強く、簡単には倒れないようだ。


 第22波では先のオーク20体に加えて、オークアーチャー10体、オークファイター10体の計40体。

 オークアーチャーは耐久力が低く、すぐに倒れることになったが。


 第23波と同じ構成で数だけが増え、第24波はオークに代わってオークマジシャンが出現。第25波は、第24波に加えてオークリーダーが出現した。


 下見はとりあえず十分だろうと言うことで、【精霊術】で一掃し、ダンジョンを後にした。


 1ウェーブにかけた平均時間は1分弱。ウェーブ間の待機時間もほとんど飛ばしたので、ダンジョンに滞在したのは僅か1時間程度だった。


 その結果【リクルーター】【精霊術士】【ジェネラリスト】はレベル35からレベル37に、【スキルテイカー】はレベル30からレベル34に、【サードジョブ】は【斥候】を終え、【職人】になった。レベル28なので間もなく【職人】も終えられるだろう。


ー▼ー▼ー▼ー


 宿に戻ったカイト達がまず行なったのが、今回得られた情報から、どのようにして個人の課題のクリアに繋げるかの検討だった。


 フェリアは徐々に強くなるスライムを相手に【精霊術】の練習をすることになった。

 これは第1波でやろうとしていたことだ。


 ルナとレナはゴブリンを相手に、右手に小剣、左手に短剣を持って双剣を練習することになった。

 理想はそこにさらに魔法のコンビネーションを加えることだ。

 小剣は剣のカテゴリー、短剣は短剣のカテゴリーに属していて、それぞれ違う攻撃手段と認識されるのは確認済みだった。

 あとは【ウォークライ】と【ステップ】、慣れてきたら【パワーアップ】【スピードアップ】を使用し、バフ状態を十全に活かせるようにする。

 出来れば【パワーアタック】【シャープアタック】【ベビーアタック】【ペネトレイト】もスムーズに使えると尚いい。


 ノースアクアリム近くの洞窟ダンジョンのゴブリンは非常に臭かったが、環境が違うのかダンジョンの特徴なのか、フォースリムダンジョンで出てくるゴブリン達はそこまでの臭いはなかった。

 一撃で倒したので分かりにくかっただけかも知れないが。


 カイトはとにかく【スキルスロット】を戦いながら使うことになった。

 相手はゴブリンとオークだ。

 ゴブリンは言うまでもなく、オークも戦うだけなら余裕があるからだ。

 使うスキルに指定はないが強力なものは禁止。

 

 今はまだ2次職をマスターさせるためだけの【サードジョブ】も3次職が使えるようになれば【転職】で色々切り替えて使えるようになる。

 その【転職】も【スキルスロット】と同じくらい集中力を必要とするので、戦闘中に【スキルスロット】を扱えるようになれば、必要な時に【転職】でジョブを切り替えて戦えるようにもなるだろう。


 方針が決まったあとは、カイトの持つ【精霊術】のアイデアをどうフェリアに伝えるかの話し合いが始まった。


 カイトの持つイメージは、必要なエネルギーを持つ精霊弾をフェリアの手元に止め、そこから射線が重ならないようにややカーブしながら対象に向かうレーザービームのようなものだった。


 フェリアの精霊たちも楽しそうに聞いている様子だったらしいが、フェリアも精霊もレーザービームが分からない。

 レーザービームでなくても、放物線を描く球体でもいいのだが、そもそも誘導弾の概念もない。

 そんなに簡単に当たるなら便利すぎるしおかしいだろうと。


 ちなみにこの機会に、フェリアと精霊たちに魔力と精霊力の関係を確認した。

 分かったことはまず、【精霊弾】は最小単位で、精霊力を1必要とする、ということだった。

 そしてフェリアの魔力を【精霊術】で渡すと、魔力1に対して精霊力が5扱えるようになるとのことで、この割合は精霊の成長によって増加していくらしい。

 【感応士】系統は相変わらず省エネである。


 現在の【精霊弾】の威力だとベビースライムは確殺なので、まず基本として【精霊弾】の威力を50、ベビースライムの生命力を10と仮定して説明を開始する。

 第1波はベビースライム50体なので、全部倒すとすると500の威力が必要になる。

 精霊力1の【精霊弾】で威力が50なので、必要な精霊力は10だ。

 つまりフェリアが【精霊術】で渡す必要がある魔力は2となる。


 魔力を2渡すと言われてもわかりにくいので、まずは最小の1を渡す練習をすることにした。

 そこで生まれる精霊力を全て1つの【精霊弾】にすれば250の威力を持つものになる。


 その250の威力を10ずつに分けることが出来れば、現在の目標である最小威力をさらに分割することが出来るという訳だ。


 ちなみにそんなことが出来るのかという問いに対しては、必ず出来ると答えられる。

 すでに実現はしているからだ。


 銃が好きなアルムの【精霊撃】は【エレメンタルショットガン】という形で散弾状に変化させることが出来ている。

 これはアルムが半分ふざけてやったことではあるが、可能であることには変わりない。


 そのようなことをカイトがフェリアに説明したところ、精霊たちは興味津々だったようだ。

 【精霊術】は契約者のイメージを精霊が具現化する術(すべ)であるため、カイトの話を精霊が聞けば、そのサポートになるのかも知れない。


 カイトはフェリアにその話を聞いて、フェリアに理解させるよりも精霊に理解させる方が重要だと考えを改めた。


 そこで精霊達に伝えるのに使用した方法が絵だった。

 【サードジョブ】が【職人】であるためか、それなりに分かりやすく描くことが出来た。


 フェリア視点からの絵、上方からの絵、側方からの絵のそれぞれを描くことで、フェリアも精霊達も、ルナもレナも理解できたようだ。


 さらに興味深いことも分かった。

 精霊達はフェリアが何を見ているかをしっかりと認識しているのだ。

 イメージを必要とする【精霊術】の根源となるものかも知れない。


 その力があれば、漠然とモンスターを見て同一種族を全て狙うことも出来るし、そのモンスターのピンポイントも狙うことが出来るはずだ。


 そうして理論的な話は完成し、実践に移ることとなるのだった。

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