4-20 【ネクロマンサー】の主力
カイトとフェリアが移動したのは、アンデッド達を挟んだ反対側、ノースビーストリムの北西だった。
そこにはルナとレナが待機していた。
アルマリアと接触しないように、ある程度堀を作り終えたら監視を兼ねて移動していたのだ。
当然そこには【セットポイント】でポイントを設置してある。
ルナとレナは【気配隠蔽】を使い、アンデッドに見つからないように、【視覚強化】でアンデッド、特に【ネクロマンサー】であるビーストを中心に偵察していた。
「ルナ、レナ、お疲れ。何か変化は?」
「ん。スケルトンは減った。」
「中心は変わらない。」
「そうか・・・。この時点になっても動かないってことは、主力はあれだけで、それでもその主力だけで十分だと思ってるってことか。」
「まぁ、普通に脅威よね。」
「ん。」
「伝説?」
「まぁ伝説ほど珍しいもんでもなさそうだけどな。」
ビーストの主力は、20体の『アンデッドオーガ』。
オーガはランク3上位クラスのモンスターだ。この場合は魔物だが。
そして、『レッサードラゴン』。当然アンデッドだ。
通常ランク4のモンスターで、ランク3ダンジョンのボスを務めていることもある。
ランク5モンスターの『属性ドラゴン』であれば伝説級と言えなくもないが、『レッサードラゴン』はそこまででもない。
実際ランク5のドラゴン種ダンジョンで、北都フォレストリアと同格の東都ドラゴリアのダンジョン、『ドラゴリアダンジョン』には普通に出現するようだ。
「ノースビーストリムダンジョンのボスは『ウェアウルフ』だし、宵闇の森に生息しているんだろうな。最低ランク4のダンジョンは存在するってことか。」
オーガもレッサードラゴンも宵闇の森の魔物なのだろう。
それを【ネクロマンス】でアンデッド化し、使役しているようだ。
ゴーストはアンデッドレッサードラゴンに騎乗して戦況を見ているようだ。
かなり離れているのだが、使役しているアンデッドの状況は把握できるのかも知れない。
「オーガならノースビーストリムの攻略者でも何とかなるかも知れないけど、流石にレッサードラゴンはまずいわよね・・・。」
「オーガでも例のスキルを使われたらかなり危険だと思うぞ?未だに使わないところを見ると消費が激しくて常用できるものではない可能性が高いけど。」
例のスキルというのは【ネクロマンサー】の【ルインフィールド】というスキルで、範囲内のアンデッドを強化するというものだ。
「やっぱりチャージした【シャイニングレイン】と【不意打ち】で一掃するのがいいんじゃないか?」
「それをするとゴーストまで殺しちゃうでしょ。やっぱり状況確認のためにも捕らえるべきよ。」
「そんな余裕はないと思うんだけどなぁ・・・。」
「私達ならやれるわ。例の作戦もあるんだし。」
現状カイトの最大の攻撃は【スキルチャージ】によってチャージされたスキルを【アサシン】の【不意打ち】で使用することだ。
相手の防御力を無視して最大火力を与える。
それもカイトの複数の4次職の力でだ。
ただし圧倒的すぎて手加減は出来ない。
今回の首謀者であるゴーストは間違いなく死亡するだろう。
例の作戦というのは簡単に言えば分断策である。
フェリアがオーガ20体を。
ルナとレナがレッサードラゴンを。
そしてカイトがゴーストを相手にする。
フェリアの心配は必要ないだろう。
近づかせなければ圧勝する。
オーガに出来る遠距離攻撃は投擲くらいのものだからだ。
命属性のフェルムの攻撃はアンデッドに特攻があるのが確認できている。
【ヒール】なども効果があるようだ。
【回復魔法士】の魔法は命属性だと言えるのだろう。
心配なのはルナとレナだ。
相手はランク4中位クラスの魔物である。
二人も4次職中盤なのだから能力的には問題がないかも知れないが。
もちろん作戦もある。
【ジェネラリスト】ならではの戦い方だ。
作戦の中核となるのは【バリエーション】。
そして【格闘士】のパッシブスキル【コンビネーション】だ。
○【バリエーション】:過去5回と違う手段で攻撃する場合攻撃力が順次増加する。パーティメンバーの攻撃は対象にならない。攻撃対象が変わると効果が消失する。
○【コンビネーション】:連続で攻撃すればするほど攻撃力が上がる。ダメージを受けたり、防御したりすると効果が途切れる。
【コンビネーション】は【格闘士】のスキルだから、近接攻撃にしか意味がないと思っていたらそうでもないようだった。
つまり遠距離から【バリエーション】を発動させながら、攻撃を受けないように立ち回り、攻撃していくことでかなりの攻撃力上昇が見込める。
1個体が強力な相手にはうってつけと言えるだろう。
レッサードラゴンは攻撃の手段が少なく、遠距離から立ち回れば注意するのは【マジックブレス】くらいのものである。
○【マジックブレス】:扇状の範囲を持つ強力な無属性のブレス攻撃。
カイトの相手であるゴーストの力は正直未知数だ。【ネクロマンサー】のレベル60以上で、かつカオスジョブも4次職。
カイトよりも数値上の能力は上だろう。
カイトとしてはステータスと表現するのが分かりやすいのだが、この世界では通じない。
カオスジョブに関しては【リクルーター】のレベル30スキル【職歴確認】で、その詳細を調べることが出来た。
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【アウトサイド】
カオス系統1次職
転職条件
強制取得:カオスカウントを一定以上得る
成長条件
カオスカウントを得る
レベル上限:20
習得スキル
【カオスジョブ】(1)
【贖罪】(1)
○【カオスジョブ】:メインジョブはそのままに、【カオスジョブ】として【アウトサイド】を得る。通常経験値取得不可。メインジョブ成長率半減。
○【贖罪】:【アウトサイド】限定。一定期間カオスカウントが増えなかった場合、カオスカウントが0になり【アウトサイド】が破棄される。
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【アウトロー】
カオス系統2次職
転職条件
【アウトサイド】をマスターする
成長条件
カオスカウントを得る
レベル上限:30
習得スキル
【カオスチェック】(1)
【賠償】(1)
○【カオスチェック】:顔を見た人物がカオス系統かどうかを瞬時に判断できる。
○【賠償】:マナゴールドでカオスカウントを減少させる。カオスカウントが0になるとカオス系統ジョブが破棄される。
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【ギャングスター】
カオス系統3次職
転職条件
【アウトロー】をマスターする
成長条件
カオスカウントを得る
レベル上限:50
習得スキル
【マナコンバート】(1)
【ドロップコンバート】(1)
【指名手配】(1)
○【マナコンバート】:マナゴールドをカオスカウントに変換する。
○【ドロップコンバート】:ドロップをカオスカウントに変換する。
○【指名手配】:カオス系統が支配していないダンジョン圏内に侵入すると敵対者と判定される。
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【クリミナル】
カオス系統4次職
転職条件
【ギャングスター】をマスターする
成長条件
カオスカウントを得る
レベル上限:70
習得スキル
【カオスハイド】(1)
【カオスブースト】(1)
【大胆不敵】(20)
○【カオスハイド】:マナゴールドを使用し、その額に応じた時間、外敵判定を回避する。【カオスハイド】を使用して侵入した場合ダンジョンを奪うことはできない。
○【カオスブースト】:マナゴールドを使用し、一定時間全能力を強化する。
○【大胆不敵】:【カオスハイド】を使用せず他のダンジョン圏内に侵入すると、自身の勢力認識を変化させられる。
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『カオスカウント』がその人物のカオス判定に使われるものだとは分かったのだが、現在どの程度溜まっているのか、いくつ溜まったらカオスに堕ちるのかは不明だ。
【ギャングスター】まで上がってしまえば、マナゴールドやドロップでレベルを上げることが出来るようになる。代わりに【指名手配】を得て、敵対者判定を受けることになるが。
そして【クリミナル】になれば、今回の騒動を引き起こす中核であった【カオスハイド】と【大胆不敵】を使えるようになる。
カイトにとって幸いなのは、【ネクロマンサー】にも【クリミナル】にも直接的な攻撃スキルがないことだ。
【ネクロマンサー】の下位【シャーマン】で習得する【ポゼッション】や【クリミナル】の【カオスブースト】でどのくらいステータスを上げられるのかは未知数ではあるが、【スキルテイカー】の【テイクスキル】を使えばどちらかは封じられる。
【ネクロマンサー】系統の中核である【スピリットリンク】をテイクするのも悪い選択肢ではないだろう。
封じた後に使役されていたアンデッドがどう動くことになるのかが不明なため、今回は作戦に組み込むことは保留としている。
「うーむ。気が乗らないけど、この作戦が一番か・・・。」
カイトとしては一気に殲滅してしまいたい。
どうせ目立つのも、この街を離れるのも確定しているのだ。
それに【ネクロマンサー】の情報も出来れば秘匿したい。
希少職の上級職の存在なんてものはカイト達にとっては知られるべきではないからだ。
捕らえて情報源としてしまえば、そう言ったことが明らかになり、希少職が注目されることになる。
良い方に傾けばいいのだが、そう簡単にはいかないだろう。
「まぁ仕方ないわよ。【クリミナル】なんかの情報も大事だし。」
「それもそうだな。仕方ない。やりますか!」
カイト達はバフなどの準備をして、いよいよ戦いに挑むことになった。
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