4-18 vsアンデッド
カイトとフェリア、ルナ、レナの4人は夜明け前、ノースビーストリムの北の平原にいた。
アンデッドの襲撃に備えるためだ。
予定では3時間後にその影が見えてくるはずだ。
最初の情報より多いと言うことはすでにノースビーストリムに伝わっている。
かなりの混乱が起きかけたが、それはアルマリアが身分を明かし協力を申し出たことで収束した。
カイト達はアルマリアの配下として指示を受けた形で準備に奔走している。
フェリアはフェルムを顕現し、全員の魔力回復のサポートを。
ルナとレナはノースビーストリムダンジョンで解除して手に入れた罠を【罠士】の【罠設置】で次々と設置していく。と言ってもアンデッドに効果的な罠は余りないので、【栽培人】の【振り下ろし】を使用して地面を掘り返し、落とし穴と堀を作成。掘り出した土は【アイテムボックス】に入れてカイトに渡す。
ちなみに【振り下ろし】は攻撃スキルとしても利用できる。
カイトはルナとレナから渡された土を利用し、【錬金術師】の【クリエイトゴーレム】を【スキルスロット】で使用。30秒に一度、3m級のゴーレムを作成していく。
【クリエイトゴーレム】は材料があれば、かなり効率的な魔力消費で使用でき、作られたゴーレムはある程度の自律行動が出来るので、このような状況には便利なスキルである。
さらに可変でありながら、何も指定なしで作れば固定消費になるので【スキルスロット】でも扱える。
フェリアの契約精霊で土属性のカルムは、カイトの【クリエイトゴーレム】に興味を持ち、フェリアに強請って顕現し、同じようにゴーレムを作っていく。
これはカイトにとっても嬉しい誤算となった。
作られたゴーレム達をルナとレナの手伝いに回し、【ものまね】も併用することで、3時間で500体のゴーレムを作り上げた。
一度起動したゴーレムは壊されない限り12時間稼働する。
材料が必要だったり、細かい指定をしたり、増強したりすると消費が跳ね上がるため使いにくい【クリエイトゴーレム】ではあるが、このような平原で、雑兵のような使い方であれば戦力補強には大きな力になる。
アルマリアがフォレストリア家にあるマジックアイテムを使っていると説明すれば誰しもが納得した。
後に騒ぎになるだろうが、カイト達はもはや移動を前提に考えているので問題はない。
そうしていよいよアンデッドの大群との激突が迫っていた。
ー▼ー▼ー▼ー
ノースビーストリムの布陣は、第一防衛線として最前線中央に300体のゴーレム。その前には大きな堀がある。
ゴーレムにはその場を動かず、近づいてくるアンデッドを攻撃するように命令を出してある。壊れるまで動き続けるだろう。
強さとしては4次職のスキルだけあって、ランク2なら相手にもならない。
最前線の左右には土壁が堀を半包囲するように盛られており、そこには矢狭間が切られている。配置されているのは【攻撃魔法士】達だ。最序盤に【ファイアバースト】で一斉攻撃したら下がる予定なので、作りは甘い。
ただし、土壁の奥には落とし穴が多数掘られている。
そしてその奥に100体のゴーレム。左右で200体だ。
アンデッドは知能が低いので、通常であれば中央だけで事足りるのだが、今回は【ネクロマンサー】がいる。
どう動いてくるか分からない。
第二防衛線として、攻略者パーティ。
第一防衛線で【ファイアバースト】を撃った【攻撃魔法士】達もここに戻る。
役割別に配置したいところではあるが、攻略者達はそのような訓練は受けていないので各パーティで動くこととなった。
第三防衛線にして最終防衛線は当然ノースビーストリムの城壁となる。
カイトのパーティは完全な遊撃だ。
準備で使用した魔力が回復したら、戦場を迂回し、【ネクロマンサー】を叩く。
【ネクロマンサー】であるゴーストの能力は正直分からないが、アンデッドの補充はかなり出来ると考えておかないとまずいだろう。
さらにアンデッドには同種族を呼び出すことの出来るものもいる。
つまりアンデッドを全滅させてから戦うのは難しいということだ。
ノースビーストリムに対するアンデッドは、その大半がスケルトンだった。
スケルトンはランク2〜3のアンデッドで、その攻撃方法により名称が変わる。
ランク2にはただのスケルトンの他に、剣や斧などを持つスケルトンウォーリア、杖を持ち魔法攻撃を仕掛けてくるスケルトンメイジ、弓で攻撃をするスケルトンアーチャーがいる。
ランク3には、重装備のスケルトンナイト、スケルトンを呼び出しその数を増やすスケルトンリーダーがいる。
特にスケルトンリーダーは優先的に始末しないと泥沼だろう。
スケルトン以外には実態を持たず魔法攻撃しか効果がないと言われているレイス種も多い。
ただ、耐久力はないので、魔法攻撃さえ当たればどうにかなるらしい。
そして残りは【ネクロマンス】によってアンデッド化されたであろう元攻略者のグールと、強力な魔物のゾンビが複数種類と言ったところか。
「さて、諸君!」
アルマリアが指揮官として戦場全体に話しかける。
「いよいよ接敵の時が近い!恐らくそのまま突撃してくるだろう!ノースビーストリムの街を守ることが出来るのは諸君らしかいない!特に第二防衛線は今回の鍵となる!心して挑むように!」
「「「うぉーーー!!!」」」
首謀者の名前は伏せられている。
ゴーストはこの街の出身で、有名な希少職だったのだ。
「希少職が成長して攻めてきた」などと知られるのは非常にまずいのだ。
「それでは!!【攻撃魔法士】隊!放てっ!!」
【攻撃魔法士】達の【ファイアバースト】で開戦の狼煙は上げられた。
ー▼ー▼ー▼ー
戦闘開始から1時間。
戦闘は順調に推移した。
開幕の【ファイアバースト】は相手の前衛のほとんどを消し飛ばした。
その後放棄された土壁は未だ健在だ。
アンデッドは愚直に中央に向かっていき、ゴーレムに弾き飛ばされている。
ゴーレムは非生物なので、アンデッドの攻撃対象にはならないようだ。
もちろん数が数なので一部はゴーレムの間を通り抜けてくる。
とは言え、それは問題なく控えている攻略者パーティによって倒されている。
「まずいな・・・。」
そんな状況であるのにカイトがそう呟く。
「ええ、まずいですね。」
アルマリアもそう答える。
「一発打ち込んでみる?」
フェリアも何か感じているようだ。
「うーん、俺たちが消費しすぎてもよくないからな。それに出来れば使いたくない。」
カイトの【シャイニングレイン】、フェリアの【精霊憑依】による【エレメンタルバースト】や【精霊術】など、アンデッドの大群に痛撃を与える手段はいくつかある。
ただ、間違いなく目立つ。
ゴーレムで目立っているので今更ではあるが。
「とりあえず土壁の後ろにいるゴーレムを25体ずつ突撃させて中で暴れさせてみるか。」
何がまずいのかと言うと、1時間順調であるのに、戦況が変わっていないからだ。
すでに1000体や2000体、もしかしたら3000体を超えるスケルトンやレイスを倒しているのにも関わらず。
これはゴースト側の補充が間に合っていることを意味する。つまり消耗なしと同意だ。
ゴーストも人である以上、消耗はするであろうが、ノースビーストリム側はその比ではない。
さらにゴーレムは最長12時間で消えてしまう。
何かを変える決断をするならば、今しておかないとジリ貧になりかねなかったのだ。
「では、それでお願いします。」
アルマリアの許可を得てゴーレムを動かす。
第一防衛線を超えてゴーレム達が進軍する。
相変わらずアンデッド達はゴーレムには反応しない。
現状で唯一朗報と言えるものは、ゴーストは恐らく全てのアンデッドを統率できているわけではないということだろう。
出来ているのならば見えている堀を避けないはずがないし、ゴーレムや土壁を破壊しない理由はないはずだ。
この状況を打開するにはスケルトンを呼び出して補充しているスケルトンリーダーを破壊するしかない。
カイトとアルマリアはそう考えてゴーレムを出撃させた。
ゴーレム達は無事敵陣の中に入り込み暴れ始めた。
次々とスケルトンを破壊していくゴーレム達。
スケルトンリーダーも仕留めているのか、第一防衛線への圧力もやや減っているようだ。
このまま優位に傾くかと思ったその時、敵陣の中にいるゴーレムが数体破壊されたのだった。
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