4-17 フェリアとアルマリアの再会

 アルマリアはカイトの話を聞いて考え込んでしまった。


 「あの・・・?」


 「ああ、すまない。何を聞こうか考えていたものでな。契約のこともあるし、出来れば聞きたくないのだが。気になる事が多すぎる。」


 「そうですね・・・。お聞きしたいのですが、貴方は主様に逆らえないのでしょうか?それとも逆らう気がないのでしょうか?」


 カイトは核心に迫ることを質問する。


 「それはっ・・後者だ。いや、前者でもあるのだが。」


 前者でもあるのならば、契約か隷属によるものだろう。


 「そうですか・・・。私に貴方のジョブについて詳しく教えていただけませんか?どの程度のことが許されているのか分かれば対処もしやすくなるので。」


 「申し訳ないがそれは出来ない。今回と同様、契約で縛られている。」


 カイトは【スキルスロット】で【コンファーム】を使用する。


☆アルマリア 契約数2


 今回カイトと交わした契約の他にもう一つ。

 それがジョブについて話せないという契約だろう。


 つまり、アルマリアがフォレストリアに逆らえないのは契約ではなく隷属であることがはっきりしたと言える。魔法契約書ではそこまで複雑な契約は出来ないはずだ。


 今回、本末転倒の調査を行なってまでアルマリアと接触した理由は、アンデッドの戦いでアルマリアに旗頭となってもらい、カイト達はその陰に隠れて行動するのはどうかという案が出たからだ。


 これであればフェリアはアルマリアと再会できるし、フォレストリアにもメリットはある。カイト達に強く出られなくなるかも知れない。

 当然魔法契約で時間を稼いでいる間に姿をくらます気ではいるが。

 アルマリアにフェリアの追放の真意を問う事が出来れば、どんな事実であれフェリアのためになるだろうという考えもある。

 フェリアは気にしていないと言っていたが、アルマリアを見かけてから逡巡していたのは見ていれば分かる。


 「そうですか。それは仕方ありませんね。ところで貴方にお会いしたいという方がもう一人いるのですが、連れてきても構いませんか?」


 「え、ああ、構わないだろう。考えを纏めるにももう少し時間がかかる。」


 「騒動を食い止める方策はあります。そのためにもお会いしていただきたいですね。」


 「そうであるならば是非もない。是非お呼びしてくれ。」


 「それでは少し席を外させて頂きます。」


ー▼ー▼ー▼ー


 「アルマリア、久しぶりね。」


 「フェリアお嬢様っ?!カイト殿!これは?!」


 「私がフェリアと遭遇し、保護させて頂きました。」


 「カイト、話し方が気持ち悪いわ。」


 「仕方ないだろ?!」


 理不尽な扱いを受けるカイト。


 「フェリアお嬢様!!よくぞご無事で!・・・良かったです・・・。」


 「貴女が森に置き去りにしたんじゃない。死んで欲しかったのではなくて?」


 形の上でだが、冷たくあしらうフェリア。


 「それはっ・・・。申し訳ありません。」


 「いいわ。お父様に逆らえないのは分かってるもの。」


 「ただ、私は死んで欲しかったわけではありませんっ!」


 「そう。確かに貴女が置いてくれた食糧には助けられたわ。あれがなかったらカイトに出会う前に動けなくなってたかも知れないもの。」


 「そうですか。それは本当に良かったです・・・。」


 「それで?貴女の任務は私を殺すことではなくて?一応戦う覚悟は持ってきたんですけど。」


 「私の任務は貴女を森にお連れして離れた時点で完了しております!!決して殺すなどと言うことはありません!」


 「そう。それならいいわ。私のことに関してお父様への報告義務は?」


 「ありません。自ら報告する気もありません。」


 「分かったわ。信じましょう。じゃあカイト、続きお願いしてもいい?」


 「ああ。っと、その前にアルマリア殿?口調を崩させていただいてもよろしいか?」


 「ああ、構わない。フェリアお嬢様にあんなこと言われてはやりにくいだろう。」


 「良かった。じゃあ続きを話す。具体的には騒動を食い止める方法だ。」


 「そう言えば、そのために会わせたいというのがフェリアお嬢様だったな。・・・え?」


 フェリアとの再会に衝撃を受けたアルマリアの頭は回っていなかった。


 「嘘じゃありませんよ。フェリアは成長しました。今は【ネクロマンサー】と同格の4次職になっています。」


 「それは・・・希少職を成長・・させられたのですか?」


 フェリアの情報はある程度開示できる。

 報告の義務がないことが分かったからだ。

 フォレストリア当主の質問の仕方にもよるが、そこは仕方がない。


 「ええ、お陰様でね。」


 「そうですか・・・。っ!それで作戦とは?」


 涙を堪えるアルマリア。

 本当に嬉しそうだ。

 殺したいわけではなかったのは事実なのだろう。


 「フェリアの能力は強力な魔法。ランク2や3のアンデッドなら鎧袖一触に蹴散らすことができるはずだ。流石に5,000は厳しいだろうけど。そこでアルマリア殿には、身分を明かしてもらい、指揮をとって欲しい。俺たちはアルマリア殿の配下として扱ってもらい、攻略者がアンデッドと交戦している間にゴーストへと吶喊。これを討つ。」


 「俺たち、というのはフェリアお嬢様とカイト殿ですか?それと私のことは呼び捨てで。フェリアお嬢様を呼び捨てなさっているのに私に敬称を付けられると困惑してしまいますので。」


 「それなら私もお嬢様は辞めてほしいわ。もう家も追い出されてるのだから。」


 「では、フェリア様と。」


 「様もいらないわ。」


 「それは譲れません。どうかお許しください。」


 「フェリア、そこまでだ。それとアルマリア・・さん、年上なのでこれくらいは許して欲しい。」


 「そうですね。それよりも話の続きの方が重要ですし。」


 「そうだ。それで俺たちにはあと二人仲間がいる。情報秘匿の観点から紹介は避けさせて欲しい。ただ戦力としては十分だと考えてもらって構わない。」


 「最上級職2つ分の能力を持っている相手に十分だと言うのですね。・・・分かりました。身分を明かし、協力を求めましょう。それにしても私のことを何故知っているかも疑問でしたが、フェリア様がいたのなら当然ですね・・・。」


 「ところでアルマリア、貴女は大丈夫なの?」


 「大丈夫・・・とは?」


 「貴女の忠誠はどこに向いているのかって話よ。」


 「っ!そこまでご存知なのですね。私たち【従者】の忠誠はフォレストリア家に向いています。事実先程まではハーピィに苦戦するほどでしたが、今はフェリア様にお会いし、力が溢れているようです。」


 「私はもうフォレストリアではないわ。」


 「それでも!私にとっては将来の主だったのです!!それなのに・・・。」


 「そう。・・・カイト、もういい?」


 「・・・あぁ。」


 カイトはフェリアに、アルマリアに対して冷たい態度を取るように指示していた。

 忠誠というのは様々な形がある。

 個人に向かうもの、家系に向かうもの、土地に向かうもの、国家に向かうもの。

 今のやりとりで、アルマリアの忠誠が、現当主に向かうものでなく、家系に、アルマリア個人に関して言えばフェリアに向いていることが分かった。

 それ故、フェリアはカイトに求めたのだ。

 もう冷たくしなくてもいいか、と。


 「アルマリア!」


 フェリアはアルマリアに駆け寄り抱きついた。


 「フェリア様?!」


 「アルマリア、食糧ありがとう。忠誠をありがとう。お陰で生きてこられたわ。カイト達にも会えた。追放は辛かったけど・・・、今は良かったって思えるわ。冷たく当たってごめんね?」


 「いいえ、いいえ・・・っ!私が・・・私が悪いのです!私が・・・。」


 カイトは感動の再会に水を差すのも無粋だろうとその場を後にした。


 その後落ち着いた二人を交えて懸念点などを確認し、作戦を実行するための準備をした。


 そうして翌日、アンデッドの大群がついにノースビーストリムの近くに姿を現した。

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