4-15 今後の動き方とアルマリアへの対応

 「それでみんなはどうしたい?」


 カイトはそう問い掛ける。


 カイト達は管理局に登録しているわけではない。

 よって、参戦する義務もない。


 むしろ参戦してしまえば目立つだろう。

 若くして鎧袖一触に魔物を殲滅していくことになるのだ。


 もちろん力を抑えて戦う方法もなくはない。


 ただ、アンノウンが本当に【ネクロマンサー】であるならば4次職である。

 【ネクロマンス】が使われている可能性も考えると、さらに高レベルであるとも考えられる。もしかすると5次職かも知れない。


 その上、未知のカオスジョブの可能性まである。

 最悪、【ネクロマンサー】と同等レベルの能力補正値を持っている複数ジョブということもあり得る。


 そうなれば、カイトの【リクルーター】レベル35と【スキルテイカー】レベル30を合わせた能力補正値よりも高い。

 力を抑えるどころか全力を以てしても危険な状況に陥る可能性も否めない。

 4次職の力を持つ全員で力を合わせて何とかと言ったところか。


 「カイトは何を考えてるの?」


 フェリアがそう問い掛けてくる。


 「俺としては・・・、危険性を考えると参戦したくはないかな。目立ってしまうだろうし。ただ心情としては、このまま放置するのもどうかなと思う。」


 「やっぱりそんなところよね。ノースアクアリムから移動してきたのは目立つのを避けるためなんだし。」


 「ん。」

 「移動?」


 カイト達であれば、この街を抜けて移動することも難しいことではない。


 「でも・・・。」


 フェリアが言葉を続けた。


 「でも!やっぱり元フォレストリア家の人間としては、ここで民を見捨てようとはどうしても思えない・・・・。」


 「まぁ・・・そうだろうな。俺としても見捨てるのは寝覚めが悪い。」


 「んー。」

 「こっそり?」


 ルナとレナは積極的ではないが、助力することに反対ではないようだ。

 こっそり助けるのはどうかと提案している。


 「こっそり・・・ねぇ。【ネクロマンサー】の強さ次第じゃないか?」


 「というか、アンノウンが【ネクロマンサー】と確定したわけじゃないのよね?」


 「あーまぁそうだな。現状考えられる一番可能性の高い現実だってだけで、俺の予想もしないものが飛び出してくることは十分あり得る。」


 「それなら・・・まずは調査しない?」


 「了解だ。どうやって調査するか決めようか。」


 「え・・・。私がそう選択するって分かってたの?」


 「まぁなぁ。俺も言うだけ言って確認しないのも気持ち悪いし。」


 それはそうだ。

 今までの、アンノウンが【ネクロマンサー】でカオスジョブ、そしてそのアンノウンがアンデッドを率いて攻めてきているという予想は、カイトの想像でしかない。

 【ネクロマンサー】というジョブの存在を知らなければ想像すら出来ないが。


 「それじゃあ、何か作戦はあるの?」


 「いや悪いけど何もない。イグルードの時と同じようにお手上げだよ。目立ってもいいと思って動いても、俺たちの形じゃ誰も相手にしてくれないだろうしな。」


 「ん。こっそり?」

 「宵闇の森?」


 「それしかないだろうな。俺たちだけでカルムと契約した辺りに移動。東に向かいながら行軍の痕跡を見つけたら南下。遠くから様子を伺う。出来ればアンノウンを確認する。」


 「十分じゃない?何か問題があるの?」


 「外敵侵入警報の対策の存在かな。それがまだ分かってない。【ポゼッション】で特殊能力を使えるようになったくらいがあり得そうだけど。」


 「今ある情報ではそれくらいかしら?」


 「それで、実はアンノウンが既にこの街にいる可能性がある。」


 「あ・・・。【サモンアンデッド】で内部からって方法も取れる可能性があるのね。」


 「かと言って二手に分かれるのは悪手だろう?何を選択するかって話さ。」


 「ん。アルマリア。」

 「【従者】だし?」


 ノースビーストリムの街はアルマリアに任せればいいという話だろう。


 「はっきりと協力関係が結べればいいんだがなぁ。」


 こちらにフェリアがいる限り難しいだろう。

 開き直るとすれば別だが。


 「ねぇカイト。私がアルマリアに会ったとしたら何が起きると思う?」


 「そうだな・・・。」


 カイトは考える。


 フェリアは希少職であるが故、追放された。

 過去に出現した希少職も何らかの形で処分されている可能性は高いらしい。


 ただ、気になることもある。


 それは、なぜフェリアがと言うことだ。


 本当に問題であるならばより確実な方法を取るべきだろう。

 森に置き去りにするにしても死亡確認はするべきだ。

 フェリアが精霊に導かれて森を出るまで、それほど時間が経っていたとは思えない。魔物に襲われていないのだから。

 フェリアが森を出た時点で捕捉されていないということは、本当にフェリアを置き去りにしてからすぐさまそこを離れたか、捕捉していながら手を出せない、もしくは出さない事情があるかだろう。

 

 本当は殺す気がないとも考えられなくもない。

 だがフェリアは15歳までほぼ軟禁状態にあったとも聞いている。


 殺す気がなかったとしても、武器もなしに森に置き去りにされれば、当然死んでいた可能性もある。


 殺す気であれば、直接手を出せない理由がある、もしくは魔物の手にかかって死ぬ必要がある。


 直接手を出せない理由。これはカオスに堕ちる可能性を考えれば分からなくもない。

 魔物の手にかかって死ぬ必要性の有無は、死亡確認をしようとしていない時点で考えにくいだろう。


 殺す気がないのであれば・・・、死ぬ可能性があったとしてもそうせざるを得なかった事情があることになる。

 仮にそんなものがあるとすれば、15歳まで軟禁に近い状態にされていた理由とも重なるのだろうか?


 フェリアとアルマリアが会った時何が起こるか予想するには、殺す気があったのかなかったのかが重要になる。


 「フォレストリア家は、フェリアを殺す気があったのだろうか?」


 カイトは先程考えたことをフェリアに話す。


 「殺す気であれば、死なない可能性が少しでもある選択肢を使うのは確かに中途半端かも知れないわね。」


 15歳になったばかりの娘を殺す。

 もし知られればかなりの衝撃となるだろう。

 実際カトレアは憤慨していた。


 「殺す気でなかったから、少しでも生存の可能性がある道を使った?つまり、そうしなければフェリアの身に危険が迫っていた・・・?」


 その可能性はなくもないだろう。

 どんな危険かも分からないが。


 「貴族であれば、婚姻関係か?」


 思わずそう呟く。


 「それは・・・、無くはないかも知れない。実際、教育の中では貴族の娘は望まない結婚をさせられる可能性があるとは言われていたわ。15歳になってもそんな話は一度も出なかったけど。」


 通常、貴族であっても婚姻を結ぶのはお互いが3次職になってからだ。

 ただ、フェリアは希少職だった。カイトがいなければレベルは上がっていない。


 「うーん。単純に殺す気があっても遺体を確認するのは忍びないと思った可能性もあるんだよな・・・。」


 「結局アルマリアとの接触は難しそうね・・・。」


 「ん。」

 「案ずるより産むが易し。」


 その言葉、この世界にもあるのか、とカイトはそう思った。


 「とにかく接触してみろって?」


 「どうせ目立つ。」

 「結果は同じ?」


 ルナとレナの言う通りであった。

 今回動いて目立ってしまえば、フォレストリアでなくともカイト達の力を得ようと動き出すだろう。

 元々懸念していたことだ。

 そうなればいずれにせよ、フォレストリアにも露見するのだ。


 「結局考えすぎだったのかもな。」


 「でも殺す気はなかったかも知れないって思えただけ良かったわ。」


 「真実は分からないぞ?」


 「それでもよ。カイトありがとう。ルナもレナもありがとう。」


 「・・・どういたしまして。」


 「ん。当然。」

 「きっと大丈夫。」


 「それじゃあ接触してみると言うことでいいか?」


 「ん。」

 「賛成。」


 「ええ。お願いね?」


 そうしてアルマリアとの接触が決まるのだった。

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