4-14 カイトの真実と【ネクロマンサー】

 「あるって断言するってことはすでに見つけてるって事よね?どんなジョブなの?


 カイトが断言する様子を見てフェリアが問いかける。


 「それを説明する前に、説明しなきゃいけないことがあるんだ。」


 カイトは説明している最中に覚悟を決めていた。


 これから遭遇する相手の情報を説明するには、自身が転生者であることを隠したままでは難しかった。


 やろうと思えば誤魔化せただろう。

 まだ確定はしていないし、実際にアンノウンに遭遇したら【職歴確認】を使えばいいのだから。

 すでにアルマリアに使用している【スキル鑑定】でもいいだろう。


 使い道のないスキルだと思っていた【職歴確認】が必要になるとは思ってもいなかった。

 しっかりレベルを上げてきた恩恵だろう。


 「説明しないといけないことって?」


 「ああ。まぁ理解してもらえるかは分からないけど。」


 元々フェリアはカイトの謎の知識を疑問に思っていたし、カイトとしてもその度に誤魔化すのが心苦しかった。

 ルナとレナもカイトの特異性は知っている。


 なるべくなら隠したかったのは事実だ。

 なぜならカイト自身、カイトの前世の記憶、記憶というより知識が、本当に自身のものであるか断言できないからだ。

 カイトの中にあるのは知識だけで、前世のカイトがどこの誰で、何をして生きてきたのか。そう言った情報はまるでない。


 逆に言えば、記憶ではなくただの知識ということだけであるから、伝えてしまうデメリットもあまり無い。

 知識は知識でしかないからだ。

 開き直ってしまえばあとはただ説明するだけである。


 「俺が5歳になった時、前世の記憶、というか知識が俺の頭の中に流れ込んできたんだ。」


 「え?前世の記憶?前世って?」


 輪廻転生の考えが無ければ前世というものも理解できないのは当然である。


 「んー、生まれ変わりと言えば分かるかな?全ての生命はその生を終えると、次の生へと繋がって繰り返していくって言う考え方なんだ。」


 「でも私にそんな記憶ないわよ?」


 「あぁ。前世なんてものは普通は確認できない。生まれ変わりなんてものはただの概念のはず・・・なんだけど。」


 「カイトは違う?」

 「だから不思議?」


 「あぁ。と言ってもその前世の自分がどこの誰で、どんな人生だったとかの情報はなく、ただ知識だけがある感じなんだけど。」


 「うーん。よく分からないけど、知らないはずの知識があるってことね?それで、カイトには不思議な知識がいっぱいあるのね・・・。」


 「そんな理解でいいさ。」


 「それで、なんでそれがアンデッドを操るジョブとかの前に説明しないといけない事だったの?」


 「そのジョブの知識が、その前世の知識を使うものだったから。それにいつまでも隠しておくのもな。」


 「なるほどね。色々気になることはあるけど、今はそのジョブについて教えてくれる?」


 思った以上にすんなり受け入れられ、呆気に取られるカイト。

 まさか流される程度のものだとは思ってもいなかった。


 「うーん。」


 「何?」


 「ここまであっさり受け入れられるとは思わなかった。」


 「別に、カイトはカイトでしょ?そりゃ気になることも聞きたいこともいっぱいあるけど。」


 「今はアンノウン?」

 「あとで料理!」


 ルナとレナも聞きたいことはあるようだ。料理がメインのようだが。


 「そう・・・だな。それじゃアンノウンが持っている可能性のあるジョブについて説明しようか。」


 決意の上のカミングアウトだったが、本当にさっぱりと終了した。

 確かに今重要なのはアンノウンのことだろう。

 重要性を一番理解しているのはカイトであるのだが。


 「そのジョブって言うのが、特殊系【霊感士】系統4次職、【ネクロマンサー】だ。」


 カイトの世界の知識ではアンデッドを操る代表的なジョブ。

 カイトはかなり早い段階から把握していた。

 フェリアの【感応士】系統が精霊に関係するものなのだから当然と言えば当然だ。


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【霊感士】

特殊【霊感士】系統1次職

転職条件

 素質を有する

成長条件

 霊の力を借りてモンスターを討伐する

レベル上限:20

習得スキル

 【シックスセンス】(1)

 【ポルターガイスト】(10)


○【シックスセンス】:【霊感士】限定。通常の経験値獲得不可。成長率5倍。霊の存在を感知しやすくなる。

○【ポルターガイスト】:霊の力を物に宿らせ操れる。

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【エクソシスト】

特殊【霊感士】系統2次職

転職条件

 【霊感士】をマスターする

成長条件

 特になし

レベル上限:30

習得スキル

 【ゴーストシール】(1)

 【アセンション】(20)


○【ゴーストシール】:霊を封印し、その力が続く限り操ることが出来る。

○【アセンション】:霊を浄化し、その霊に応じた経験値を得ることが出来る。

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【シャーマン】

特殊【霊感士】系統3次職

転職条件

 【エクソシスト】をマスターする

成長条件

 特になし

レベル上限:50

習得スキル

 【コールスピリット】(1)

 【スピリットリンク】(20)

 【ポゼッション】(40)


○【コールスピリット】:霊を召喚し使役できる。

○【スピリットリンク】:霊と交信し、繋がりを得る。

○【ポゼッション】:交信した霊を自身に憑依させることで、特殊能力を使用したり、能力を向上させたり出来る。

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【ネクロマンサー】

特殊【霊感士】系統4次職

転職条件

 【シャーマン】をマスターする

成長条件

 特になし

レベル上限:70

習得スキル

 【サモンアンデッド】(1)

 【ルインフィールド】(30)

 【ネクロマンス】(60)


○【サモンアンデッド】:アンデッドになり得る素体を召喚し、交信した霊を憑依させ、アンデッドとして操ることができる。

○【ルインフィールド】:自分を中心にアンデッドに有利な環境を構築する。

○【ネクロマンス】:新鮮な遺体を死者のまま蘇生し、意のままに操る。高度な知能を持つ生物なら生前の記憶を有したままになる。

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 「4次職・・・私たちだけじゃなかったのね。」


 「アンノウンが【ネクロマンサー】ならな。」


 【ネクロマンサー】という4次職を発見していたからこそ、カイトは自身らが4次職になれることをほとんど疑っていなかったのだった。


 「【ネクロマンサー】の可能性が一番高い。それは今攻めてきているのがアンデッドで、【ネクロマンサー】には【サモンアンデッド】があるからね?」


 「ああ。それに加えて、最悪の予想では・・・、行方不明の攻略者が【ネクロマンス】で操られている可能性もある。さらに言えば、5次職だってありえるかも知れない。」


 「5次職。本当にあるのかしら。でも【ネクロマンス】の習得レベルが60なら確かにマスターしていてもおかしくないのかも。」


 「あと懸念点としては、カオスジョブかも知れない、というか外敵侵入警報の時点でカオスジョブだろう。それがどんなものかはさっぱり分からないけど。」


 カオスジョブは本当に分からない。

 ただ、アンノウンだとしたら【ネクロマンサー】のジョブを失っていることはないのだろう。


 「【ネクロマンサー】の力を使っているカオスジョブ。複数ジョブの可能性もあるのね。」


 「そうだろうな。」


 この世界ではカオスジョブは本当に忌避されている。

 なので、単純に犯罪を犯してカオスに堕ちるものは少ない。

 堕ちる人間で代表的なものとして、イグルードのように傲慢で何でも自分の思い通りにやろうとしてやり過ぎる人間や、お金を稼ぐことに執着しすぎて無理をする商人や、怒りのあまり限界を超えてしまうものなどが挙げられる。


 七つの大罪のようだとカイトは思う。

 七つの大罪とは「人間を罪に導く可能性があるもの」として挙げられる人間の欲望や感情を示すもので、『傲慢』『強欲』『嫉妬』『憤怒』『色欲』『怠惰』『暴食』のことである。

 『怠惰』や『暴食』は直接カオスに堕ちるようなイメージはないが、もしかしたら可能性はあるかも知れない。


 「アンノウンが【ネクロマンサー】であること、さらに複数ジョブでカオスジョブまで持っている可能性があること。今回の騒動が人為的なものである可能性が高いと俺が考えた理由は分かってもらえたと思う。」


 「そうね。それは確かにありえる話だわ。」


 「ん。」

 「要確認。」


 「レナの言うように、俺達が動くとしたらまずはそこの確認からになると思う。それで、みんなはどうしたい?」


 カイトは3人にそう問い掛けた。

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