4-7 加速するレベル上げ
「はぁ、みんな大丈夫か?」
「ん、疲れた。」
「疲労困憊。」
「私は大丈夫だけど、精霊達が消耗したみたい。みんな精霊石に戻ったわ。」
ルナとレナは魔力枯渇だ。
大きな問題はないが精神的疲労が大きくなる。
精霊達は精霊石にいれば回復が早くなる。
精霊石に戻ると言うのはそれだけ消耗が激しかったと言うことだ。
全体的にかなりの疲労であるのに、レベルが上がったのは【スキルコレクター】だけだった。
「このエリアが不人気なの分かるわね・・・。」
「あれだけ集まられたら普通のパーティじゃ切り抜けられないだろうな。」
そもそも4人だけでこの階層に到達すること自体が稀である。
大抵のパーティは3次職であれば前衛4中衛2後衛2の8人くらいが適正だ。
だからこそ遠距離主体でないと攻略できないこのエリアは不人気なのだが。
ちなみに戦闘職の割合も大体そのような形になっている。
【見習い戦士】から【戦士】への転職は多いが、他はやや少なめだからだ。
「さて、とりあえず少し休もうか。全滅させただろうししばらくは大丈夫だろ。」
「今日はお腹いっぱいの気分だけど・・・。」
「ん。」
「同意。」
「まぁまぁ、新しい戦術を思いついたから試してみようぜ。上手くいくかは分からないけど。」
「どうせまた突拍子もないことなんでしょ・・・。」
フェリアが呆れた目でカイトを見ていた。
いや双子もまた同じような目をしていたが。
ー▼ー▼ー▼ー
カイトが立てた新たな戦術とは・・・。
それはハーピィリーダーの【広域招集:ハーピィ】を【スキルスロット】で使用することである。
当然3人は猛反対だ。
「そんなことしたら危ないじゃない!」
「危険。」
「頭おかしい。」
「おいおい。まだこれだけじゃないぞ?そして・・・、だからレナは失礼だ!」
レナは地味に毒舌である。
容赦ないツッコミによって話の腰を折られたのだが、なんとか方向修正を試みる。
「まぁまぁ。とりあえず最後まで聞いてくれよ。俺が安全性を無視したことがあったか?」
「それは確かに・・・ないわね?」
「む。」
「むぅ。」
双子の新しい反応につい反応しそうになるが、とりあえず話を続ける。
「いいな?まずやることは11階層から15階層のそれぞれの四隅の、メインルートから遠く、周りから見えにくい地形を選定しておく。」
ノースビーストリムダンジョンの11階層から15階層は5km四方の形をしていて、その端は岩の山肌で閉ざされている。四隅というのはその地形の便宜的な北東、北西、南東、南西のことだ。便宜的というのは方角が正しいわけではないからだ。
そして四隅であれば四方八方から囲まれることはなくなる。その分注意を向ける場所が少なくなるのだ。
「場所が決まったら、俺がバフをかけて、【カモフラージュ】後、【ダンジョンウォーク】で移動。【コールパーティ】でみんなを呼んだら、【広域招集:ハーピィ】でハーピィを集める。そうしたら【スキルスロット】に【ダークイロージョン】をセット。【挑発】で耐えながら、ある程度集まったら【ダークイロージョン】を発動。全て巻き込んで弱らせがら止めを刺していくって寸法だ。」
【ウィザード】の闇属性魔法【ダークイロージョン】は設置型の持続ダメージを与える魔法で、かなり広範囲に設置できる。4次職のレベル60で覚える魔法だけあって、威力はそれなりに高いし、暗闇効果もある。応じて消費はかなり大きいが【スキルスロット】であれば関係ない。
さらに【ダークイロージョン】はパーティメンバーには効果を発揮しない。【メイジ】の【シャイニングレイン】も同様だ。フレンドリーファイアがないのは広範囲魔法を使う上で非常に助かる。
「確かに・・・それなら?」
「ん。」
「やる価値あり?」
「問題としては、【スキルスロット】を多用するから、それぞれのスキルを設定するのに時間がかかることかな。特に最初に【広域招集:ハーピィ】を使ってから【ダークイロージョン】を設定するまでの間にハーピィが来たら、【スキルスロット】の設定に多少もたつくかも。」
戦いながらの【スキルスロット】の設定にはまだ慣れていないのだ。
「んー大丈夫だと思うけど、次善策もあるのよね?」
「次善策というか、想定としてだけど、【ダークイロージョン】に突っ込んでこない場合は考えてるよ。と言っても【シャイニングレイン】をぶっ放すだけだけどな。出来れば使いたくないし。」
「あれは目立つもんね。」
「キラキラ。」
「シャラシャラ。」
「まぁその状態なら【アースバースト】でもいいかも知れないな。」
カイトの策が上手くいけば、階層の隅が闇に覆われている状態になり、その中にいるモンスターは暗闇の中で徐々に弱っていくことになる。
カイト達は暗闇にも影響されず自由に動き回れるため、危険は少ないだろう。
ちなみに【ダークミスト】や【ダークイロージョン】の効果は【生活魔法】の【ライト】で簡単に軽減される。
【ライトバースト】が使われたりしたら綺麗に取り払われるのではないだろうか。
これは暗闇を楽しんでいた双子がお遊びで【ライト】を使ったことで判明した。
【シャイニングレイン】に関しては分からない。自身の【シャイニングレイン】では自身の【ダークミスト】や【ダークイロージョン】に影響は与えなかった。
もちろんこう言ったテストは予めメインルートなどに人がいないことを確認した上、一番遠い所で行っている。
ー▼ー▼ー▼ー
そういう訳で新たな戦略が決まった。
実際に試してみると圧巻だった。
いくら連携して戦うとは言え、ハーピィ達にそこまでの知能はなく、【ダークイロージョン】だろうが、構う事なく突っ込んできて勝手にダメージを受けるのだ。
やや問題だったのはハーピィリーダーが含まれる場合だけだった。
流石に統率力が高く、ハーピィリーダーを欠いている場合と比べるとハーピィ達は慎重だった。
しかし、そこは次善策の出番。
目立つのを覚悟で【シャイニングレイン】を放つと、問題なくハーピィ達全てを巻き込むことが出来た。
その後はフェリアの【精霊弾】やルナとレナの弓での【パワーアタック】や【シャープアタック】、【マジックボール】で討伐するのだった。
そうして新しいルーチンは準備と討伐で1階層10分。5階層で50分。休憩とリスポーン待ちで10分の1時間サイクルになった。
ハーピィパーティのリスポーンタイムは1時間のようだったのだ。
11階層では6組、12階層では7組、15階層では10組と、ハーピィパーティの数も1階層につき1つずつ増えていることも分かった。
ちなみにハーピィリーダーのリスポーンタイムは2時間程度のようで、主に15階層で出現するようだ。
どのように上がってきたかは分からないが、11階層で遭遇するのは非常に稀なようだ。
初遭遇が15階層であったなら流石に危険だったかも知れない。
一行はその日は色々と試しながら2周ほど繰り返し、【ジョブホッパー】【精霊使い】【万能士】がレベル34からレベル40まで上がったところで終了し、宿へと帰った。【スキルコレクター】はレベル37まで上がっていた。
そうして獲得した新スキルは【ジョブホッパー】の【転職】、【精霊使い】の【精霊憑依】、【万能士】の【ルーチンワーク】だった。
どのスキルもそのジョブを象徴するスキルである。
○【転職】:自らのジョブを変更することが出来る。
○【精霊憑依】:契約している精霊を自らに宿し、その力を揮うことが出来るようになる。
○【ルーチンワーク】:スキルや生産を繰り返し行うことで、その威力や成功率を永続的に上昇させる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます