4-6 【スキルコレクター】とハーピィリーダー

 そうして【奴隷】系統ジョブに関して情報収集を始めた一行だったが、当然それにかかりっきりになることも出来ない。

 主目的はあくまでレベル上げである。


 そんなわけで、情報収集の傍ら、ハーピィの攻略法を打ち立てたのだ。


 そうして到達した【スキルマニア】の転職準備状態。


 カイトが転職したのは【スキルコレクター】というものだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

【スキルコレクター】

特殊【技能士】系統3次職

転職条件

 【スキルマニア】をマスターする

成長条件

 特になし

レベル上限:50

習得スキル

 【スキル一覧】(1)

 【スキルラーニング】(20)

 【スキルチャージ】(40)


○【スキル一覧】:過去に使用した【スキル情報】の対象一覧とその情報を見ることが出来る。

○【スキルラーニング】:一定回数【スキルスロット】で使用したスキルを、【技能士】系列のスキルとして直接扱うことが出来るようになる。

○【スキルチャージ】:【スキルスロット】に設定したスキルを使用するまでチャージし、最大2倍までその威力を増幅する。

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 【スキル一覧】に関しては便利なスキルであるということくらいだろう。得られた情報が増えてくれば、再確認したくなる時もあるはずだ。


 【スキルラーニング】は、【スキルコレクター】らしいスキルと言える。まさか職業系統のスキルを増やせるとは思いもよらなかった。

 パッシブスキルは【スキルスロット】に指定できないので、直接的な能力向上には繋がらないが、それでも【ものまね】枠を他のものに回せるようになるのは大きい。

 現状は習得までの必要使用回数は不明だし、【アースバースト】のように複数のスキルを組み合わせるものがどうなるかは分からない。

 まぁ【スキルスロット】に指定できるのだから問題はないかも知れないが。

 それに恐らく、習得したスキルは消費が存在するはずだ。


 【スキルチャージ】はもっと凄まじい。先の例に挙げた【アースバースト】をチャージすればハーピィ狩りも捗ることだろう。ただ【スキルラーニング】したものでも【スキルスロット】に指定しなければならないので、【スキルラーニング】は進まないことになる。


 「なんか【遊び人】系列とのシナジーがすごいな。」


 「どちらも単独でもすごいのにね。」


 【職業確認】や【スキル鑑定】で表示されたスキル名は【スキル情報】の対象になる。

 本来であればそのスキルを使用する人やモンスターから、【スキルメモリー】で記憶してから【スキル情報】を使うはずなので、【遊び人】がどれだけ【技能士】と噛み合っていることか。


 現在はカイトは、多用するスキルで消費の軽いものは【ものまね】で使用し、消費の重いものは【スキルスロット】で使用するという運用をしている。


 『消費』というものがあるので、何でも無制限というわけには行かないが、ラーニング後は30秒制限もなくなることを踏まえれば、【ものまね】で多用するスキルをラーニングすることも重要になってくるだろう。

 ということは、レベル20になって【スキルラーニング】を習得してからは、消費の軽いものでもこまめに【スキルスロット】で使用する必要が出てくるということだ。


 ラーニング候補としては【マジックボール】、各種バフスキル、【気配探知】が挙げられるだろうか。ただ、【気配探知】に関してはほぼ上位スキルである【スカウト】の【気配感知】を発見した。これはバフスキルで、アクションスキルである【気配探知】よりは有用と言える。

 【ヒール】や【リカバリー】もラーニング候補ではあるが、安全性を重視するカイト達にはあまり出番がない。

 

 なぜここまで【スキルラーニング】について考察しているかと言うと。


 「しかし、ランク3モンスターは経験値が凄まじいな。」


 「本当に。ただここまで狩るパーティも珍しいはずよ?」


 カイトが【スキルコレクター】になった次の日の狩りで、その【スキルコレクター】が一気にレベル28になり、当然【スキルラーニング】を習得したからだ。

他のジョブは全てレベル34となっている。


 最初は【スキルマニア】から【スキルコレクター】になったことで、【アースバースト】の火力は低下し、カイトの防御力も落ちた。

 だが数回戦闘を繰り返すだけで、それは解消され、逆に効率が上がっていったのだ。


 当然ながら、転職直後にランク3モンスターを狩るものなどいない。経験値は按分であるし、当然貢献できないことに加えて、一撃で死んでしまうリスクがあるからだ。

 この急激なレベルアップは複数ジョブを持つカイトだからこそ出来る荒業だった。


ー▼ー▼ー▼ー


 ところで、このダンジョンはボスモンスター徘徊型のダンジョンである。

 当然山地エリア、通称ハーピィの巣にもボスがいる。

 ハーピィリーダーである。

 11階層から15階層のどこで出現するか分からず、突然遭遇したパーティは準備不足であれば一気に壊滅に追いやられるほど危険なモンスターだ。


 幸いカイト達はまだ遭遇していない。


 実際に遭遇したのはカイトが【スキルラーニング】を習得した次の日のことだった。


 いつも通りカイトが【カモフラージュ】からの【ダンジョンウォーク】で11階層に移動し、【コールパーティ】で仲間を呼び出してから狩りを開始したのだが、なかなか遭遇しない。


 そして11階層の僻地で遭遇したのがハーピィリーダーだった。


 ハーピィリーダー自体はさして強くはない。ハーピィウォーリアと同じくらいだろう。ただその特性が厄介だった。

 ハーピィウォーリアを超える指揮能力と、ハーピィスカウトを超える招集能力、そしてハーピィメイジと並ぶ魔法攻撃能力を持っていたのだ。


 かなり上空から指揮をしながら、その階層全体からハーピィ達を呼び寄せる。

 

 激戦だった。


 いつもなら5分程度で済む戦闘が30分以上に及んだ。

 当然バフなども切れる。ほとんどのバフは10分継続だ。


 カイトは慣れない戦闘中の【スキルスロット】を使用する羽目になったし、ルナとレナは魔力が尽きて弓で攻撃しなければならなくなった。

 フェリアは消費がほとんどないため、特に変わりがなかったが、それでも精霊達への指示で天手古舞ではあった。


 ハーピィリーダーはカイト達の魔法攻撃を躱し、ただひたすら遠方からの支援に徹していた。直接攻撃を仕掛けてきたのは呼び寄せたハーピィ達が全滅してからだ。

 呼び寄せたハーピィパーティは6つ。

 各個撃破であれば苦戦はしないが、全部同時は流石にきつい。


 そんな戦闘も終盤に差し掛かろうとしている時、カイトは思い立った。

 【職業体験】を【罠士】から【スカウト】に変更。

 普段は罠を警戒する必要はあるが、この戦闘中には必要ないと考えたのだ。


 それで使用したのは【スキル鑑定】。

 【鑑定士】の【鑑定】ではモンスター名が分かるだけだが、【スキル鑑定】はそれに加えて所持スキルが分かる。


 得られた情報は大したものではなかった。

 カイト以外にとっては。


☆ハーピィ 所持スキル

【体当たり】

【集合:ハーピィ】


☆ハーピィスカウト 所持スキル

【体当たり】

【招集:ハーピィ】

【集合:ハーピィ】


☆ハーピィメイジ 所持スキル

【ウィンドボール】

【ウィンドアロー】

【集合:ハーピィ】


☆ハーピィウォーリア 所持スキル

【パワーアタック】

【指揮:ハーピィ】

【集合:ハーピィ】


☆ハーピィリーダー 所持スキル

【体当たり】

【ウィンドボール】

【ウィンドアロー】

【統率:ハーピィ】

【広域招集:ハーピィ】

【集合:ハーピィ】


○【集合:ハーピィ】:【招集:ハーピィ】を使用された場合その位置が分かる。

○【招集:ハーピィ】:範囲内の【集合:ハーピィ】を持つものにその位置を伝える。

○【広域招集:ハーピィ】:広範囲に【招集:ハーピィ】を使用する。

○【指揮:ハーピィ】:ハーピィのパーティを指揮することが出来る。

○【統率:ハーピィ】:複数のハーピィパーティを指揮することが出来る。


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