3-13 ガルドの店と新たな精霊

 そんなわけでガルドの元に訪れている4人。


 「お前ら、こんなに早く、しかもこれだけ集めたのかよ?希少職は役立たずってのはなんだったんだ。」


 「そんなもんですか?特に急がずに集めてたんですけど。」


 「ん。カイトは異常。」

 「普通じゃない。」


 「普通はあれだけの量、1ヶ月はかかるもんだ。まだ3日だぞ?」


 「そうだったのか・・・。」


 「本当にカイトの特異性には呆れ果てるぜ。」


 「むー。気を付ける。」


 「まぁ早いことはありがたいんだけどな。ほれ、13,000マナゴールドだ。」


 「ガルドさんありがとう。それでちょっとお願いがあるんだけど。」


 「あん?言ってみろ。」


 「ルナとレナがちょっとガルドさんの生産を教えてほしいみたいなんだ。ほら、【万能士】の話はしただろ?」


 「あー、あのとんでもない話か。いやカイトの話は全部とんでもないんだがな。」


 「そろそろ否定できないんだけど・・・。まぁそれで、特に【職人】のスキルをどう生産に活かすかってのを教えてほしいみたいなんだ。」


 「それくらいなら構わないぞ。ジョブを隠さないといけない時点で商売敵にも成り得ないしな。」


 「助かる。今日これからお願いしてもいいか?」


 「おう。問題ないぜ。んじゃ双子の嬢ちゃんたちはこっちへ来い。」


 「あ、ガルドさん。私からもお願いがあるんだけど・・・。」


 「フェリア?」


 カイトは何も聞いていなかった。


 「おう、フェリアの嬢ちゃんはなんだ?」


 「ん-とね。私のジョブに関わることなんだけど、ここに火の精霊がいてね。連れていって欲しいんだって。少しガルドさんを手伝っていたみたいだから一応許可が欲しくって。あ、後継の精霊はいるらしいから、今までと勝手が違うことはないみたい。」


 火の精霊・・・。フェルムと同等の力を持つ精霊がフェリアに声を掛けていたようだ。


 「お・・おう?よく分からないが、勝手が変わらないってなら大丈夫だぞ。」


 「ありがとうございます。じゃあお許しが出たから・・・カイト契約してもいい?」


 「あーそっか。マナが必要だったな。」


 4体目の契約には8000マナゴールドが必要である。

 精霊石にも5000マナゴールドが必要だと考えると今回の報酬は全て使用することになる。

 まぁモンスターの討伐時に得られるマナゴールドもあるので赤字ではないし、多少の余裕は出来ているのだが。


 「せっかく稼いだのにごめんね?」


 「気にするな。必要なものだろう?」


 「ありがとう。」


 そう言ったあと、フェリアは【エレメンタルリンク】を使用し、【精霊契約】を行なった。


 「貴方の名前は『ガルム』よ。よろしくね。それでこっちは貴方の精霊石ね。」


 無事契約が成立し、ガルムが住むための精霊石も完成したようだ。


 「ほう・・・。本当に精霊石が作れるんだな。やっぱりまだ力は込められてないようだが。」


 ガルドが興味深そうにその様子を見ていた。


 「前から持ってるやつを見るに、3ヶ月もありゃ精霊石として完成しそうだな。」


 3ヶ月後には100,000マナゴールドになるらしい。


 「素材としてはどんなのに使えるんだ?」


 「あー、その辺りは双子の嬢ちゃんに伝えておくぜ。」


 「ああ、それでお願い。じゃあ俺とフェリアはそろそろ行くよ。」


 「おう、依頼の達成助かったぜ。またよろしくな!」


 「鉄鉱石ならまだ集まると思うからまた持ってくるよ。」


 「今回と同じでいいならまた買い取るぜ!」


 そうしてカイトとフェリアはその場を離れるのであった。


ー▼ー▼ー▼ー


 その後二人の姿は孤児院の裏庭にあった。


 「ガルムの名前はガルドさんから取ったんだな。」


 「ええ、せっかくあの場所にいたんだしね。」


 「まぁいいと思うよ。本人も喜んでいるんだろう?」


 「とっても喜んでくれたわ。」


 「それで・・・今回の裏庭の目的は?」


 「訓練と・・・ガルムの好きな武器種でも探そうと思ってね。」


 「ああ、なるほど。居た場所のイメージだけなら剣とかハンマーだけどなぁ。」


 「とりあえず色々試してみましょ。」


 ガルムが好む武器は案の定ハンマーだった。

 ハンマーはフェリアが使うには流石に扱いにくい。


 「小型のハンマーを用意して使ってみるって手もあるが・・・。」


 「うーん、そういうことしてるとどんどん武器が増えそう。私自身は【アイテムボックス】を持ってないから即座に対応することも出来ないし。だからなしでいいかな。アリムの銃も返しちゃったから我慢してもらってるし。」


 「確かにそれもそうだな。」


 「それにガルムが出来ることは・・・こっちがメインね。」


 そう言って裏庭に設置してある的に向かって【精霊弾】を放つ。


 「おーー。火の【精霊弾】か。属性を持つ精霊ってのはそんなことが出来るんだな。」


 「そうみたい。流石にフェルムの【精霊弾】ではそんなことは出来ないけどね。」


 「命属性じゃあなぁ。アンデッドとかには効果あるんじゃないか?命の【精霊弾】。」


 「え?・・・そうなの?フェルムが『その通り!』だって。流石カイトね・・・。」


 「いや、今回のはたまたまって言うか、ただのイメージだったんだが。」


 前世のゲームでは、【ヒール】でアンデッドを倒すなんてことは普通だったからだ。


 「もしかしたら【ヒール】もアンデッドに効果あるのかね?」


 「え?そんな話聞いたことないわ。・・・でも【ヒール】とかが命属性だとしたらあり得る話ではあるわね。」


 「だよなぁ。そのうち遭遇することがあったら試してみるか。」


 「もし効果的だったらまた世界が驚くような発見よね・・・。」


 「希少職の時点で今更だろ。」


 「それもそうね。」


 「それで・・・、リルムとアルムは属性はどんなのがいいのかとか分かってるのか?」


 「あー、リルムは水で、アルムは風みたいよ。少しずつ増えていってるみたい。」


 「やっぱそういう属性があるところに行った方が目的の精霊は多いのか?」


 「そうみたいね。」


 「それならノースビーストリムは風属性ダンジョンだからアルムにはちょうどいいかもな。リルムに合うところも探しておかないと。」


 「そうしてくれると助かるわ。リルムとアルムも喜んでる。」


 「それじゃ訓練を再開するか。折角だし、ハンマーも練習しておくのはいいと思うぞ?俺の【アイテムボックス】に入ってるし。」


 「まぁ訓練くらいはしておこうかしら。使う機会があるだけで精霊たちも楽しそうだし。」


 ちなみに【アイテムボックス】のスキルは、そのアイテムボックスにアクセスするための鍵のようなものらしく、カイトの【ものまね】などで発動したあと【ものまね】を解除しても中身がなくなるようなことはなかった。

 【アイテムボックス】自体はジョブに紐づけられているようで、【栽培士】の【アイテムボックス】と【行商人】の【アイテムボックス】では入る先が違う。【ものまね】に対象職業設定がある理由の1つはこれだろうということが分かったのだった。

 【スキルスロット】で使用する際は、具体的にどのジョブの【アイテムボックス】かを考える必要があるが、ジョブ自体を指定する部分はない。【ものまね】を使うと1時間待つ必要があったのだが、【スキルスロット】のおかげで、若干の手間はあるものの、今までとは比べ物にならないくらい便利に扱えるようになった。


ー▼ー▼ー▼ー


 そうして訓練と休憩、雑談、その他やるべきことを終えた二人はガルドの元へルナとレナを迎えにいく。

 

 すると店の前には人だかりが。

 その奥から声が聞こえる。


 「いやっ!」

 「こないで!!」


 「お前らっ!何言ってんのか分かってんだろうな?!」


 ガルドの大声が響く。

 先の声はルナとレナのものだろう。


 それを聞いたカイトとフェリアは人混みを掻き分け駆け出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る