3-7 セカンドジョブ

 カイト達はスライムダンジョンの10階層でレベルを上げていた。

 3次職とは言えレベル1でゴールドスライムやシルバースライムに遭遇したら危険だと思っていたが、経験値が等分であることに気づいたあとは、カイト以外が【マジックバースト】の範囲外にいれば安全だと分かったのだ。


 そうしてシルバースライムを10匹狩るまでスライムダンジョンで、と考えていたのだが。


 それはシルバースライムの8匹目を討伐した時のことだった。

 カイトとフェリアがレベル20に到達したのだ。

 ちなみに双子はそのタイミングでレベル19になった。


 カイトのレベル20で習得するスキルは【セカンドジョブ】。その名の通り2つ目のジョブに就けるスキルだった。そうして、【セカンドジョブ】として表示されていたのは【技能士】。二つ目の希少職だった。


 「・・・。」


 戦い終えて絶句しているカイトに話しかけるフェリア。

 

 「私も【精霊石作成】覚えたわよ。・・・カイト?」


 「あ、ああ・・・。」


 混乱から覚めやらぬカイト。


 「とりあえずここから出ましょう。」


 そうしてボス部屋を後にするのだった。


ー▼ー▼ー▼ー


 「二つ目の希少職?!」


 「驚き。」

 「流石。」


 「だよなぁ。流石ってのはわからんけど。」


 「それで?どんなジョブなの?」


 「ああ、【技能士】って言うんだけど・・・。」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

【技能士】

特殊【技能士】系統1次職

転職条件

 スキルを5,000,000回以上使用する

成長条件

 スキルを使用してモンスターを討伐する

レベル上限:20

習得スキル

 【技能訓練】(1)

 【スキルメモリー】(10)

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「スキル5,000,000回って・・・そんなに使った?」


 「うーん。あり得ないな。【マジックボール】は確かに多用したけど。」


 絶対にそんなに使ってはいない。

 【遊び人】同様、前世の何かしらがカウントされているのだろう。


 「実は【遊び人】の転職条件も満たしているわけじゃないんだよな。」


 仕方がないのでここで【遊び人】の転職条件についてもカミングアウトする。


 「なるほどねぇ。なんで転職できるか分からないうちは話せないってのは分からなくもないけど。水臭いわね。」


 「仕方ないだろ。そもそも転職の方法だって分からないんだし。【技能士】のスキル回数ならまだしも。」


 「不思議。」

 「カイトそのもの。」


 レナが失礼である。


 「そう言われれば、カイトの謎の知識も不思議よね。」


 まさかの同調をするフェリア。


 「ん。」

 「そう。」


 「お前ら・・・。分からないものは分からないからこれで終わりな!」


 無理矢理話を打ち切るカイトであった。


 「それで、【精霊石作成】は試せそうか?」


 「んー、魔石を元にするみたい。使っていい?」


 「もちろん。」


 そうして精霊石の作成を試みる。


 「うん、出来た。ん?一人1個なの?待ってね。」


 精霊一体につき1つのようだ。


 「うん、精霊石があると精霊たちが力を回復させやすくなるみたい。」


 「ただでさえ効率がいいのにさらに良くなるのか。【精霊撃】も使いやすくなるかもな。」


 【精霊撃】は武器に精霊の力を込めて攻撃する手段で、【精霊弾】よりも精霊の消耗が激しいのである。


 「でも・・・3つ作ったら15,000マナゴールドも使ったわ。」


 「1つ5,000か・・・。まぁ多用するものでもないし仕方ないか。」


 ゴールドスライム3匹分である。

 ちなみに魔石もゴールドスライム産だ。シルバースライムも落とすが。


 お金に関しては、普段はカイトが管理しているが、新スキルを試す際に全額その人に渡すようにしている。


 「まぁあと2体シルバースライムを狩れば【技能士】もマスターするだろ。続けようか。」


 そうしてボス周回を再開する。

 20分周期なので待ち時間は多いが。


 そうしてボスを狩ること、3回。

 全てマジックスライムだったが、【技能士】がレベル10になった。

 覚えたスキルは【スキルメモリー】。

 効果は不明だった。

 パッシブで、はっきりとしたものではないので他の効果は分からない。

 釈然としない気持ちを抱え、その日の狩りは終了した。


ー▼ー▼ー▼ー


 次の日、早速シルバースライムに遭遇した。

 すんなりと倒し、大量の経験値を獲得。


 カイトの【ジョブホッパー】とフェリアの【精霊使い】がレベル21に。ルナとレナの【万能士】がレベル20に。カイトの【技能士】はマスターして転職準備状態となった。


 ルナとレナが獲得したスキルは【バリエーション】。パッシブスキルのようで効果は不明。アクションスキルであれば使えば何かしら反応が出るのだが、【スキルメモリー】同様、パッシブでは分からない。


 カイトの転職先は【スキルマニア】。

 相変わらず名前に悪意がある、と感じるカイト。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

【スキルマニア】

特殊【技能士】系統2次職

転職条件

 【技能士】をマスターする

成長条件

 特になし

レベル上限:30

習得スキル

 【スキル情報】(1)

 【スキルスロット】(20)

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 随分と都合がいいスキルだった。


 「うん、これ【職業情報】のスキル版だろ。」


 「え、何?そんなスキル手に入れたの?」


 カイトは3人に【スキルマニア】の情報を説明する。


 「それはナイスタイミングね!【バリエーション】の内容が分かるかも!」


 「まぁそうだな。先に【スキル情報】自体を調べるけど。」


 そうして【スキル情報】に【スキル情報】を指定して使用する。



○【スキル情報】:【スキルメモリー】で記憶したスキルや名前を知るスキルの詳細を確認する。


 【スキル情報】を知るのに必要なマナゴールドは100だった。【職業情報】よりは安い。


 カイトは3人に説明した後、いくつかのスキルを確認する。


○【スキルメモリー】:目で見たスキルを記憶する。

○【スキルスロット】:【スキル情報】で確認したスキルを当てはめて使用できる。使用すると設定は解除される。パッシブスキルは指定不可。

○【バリエーション】:過去5回と違う手段で攻撃する場合攻撃力が順次増加する。パーティメンバーの攻撃は対象にならない。攻撃対象が変わると効果が消失する。


 【スキルメモリー】はよくわからない。

 と思ったのだが、名前の分からないスキルらしきものは確かにある。

 【精霊弾】と【精霊撃】だ。

 それを対象にしても【スキル情報】が反応しなかったので、フェリアに頼んで何度か使用してもらった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

○【精霊弾】:精霊の力の塊をぶつける精霊の技。

○【精霊撃】:精霊の力を武器に纏わせる精霊の技。精霊によって効果や対象が異なる。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 説明はよく分からなかったが、【スキルメモリー】は取得してから見たものにしか効果がないことは判明した。

 そして名前は仮に付けたものそのままだった。

 

 「大ナメクジの粘液弾とか調べて、【スキルスロット】で使えるようになるのかもな。あんまりやりたくはないけど。」


 「スライム系の体当たりはスキルではないのかしら?」


 「そもそも【精霊弾】とかもスキルとは言い難いんだよなぁ。別の言い方考えておいた方が分かりやすそうだ。」


 「でも【スキル確認】で確認できたのよね?」


 「それもそうか・・・。」


 「ん!」

 「こっちも!」


 「【バリエーション】か?強力そうだけどな。」


 「6種類の攻撃手段が必要ってことよね。」


 「まぁ【アイテムボックス】使ったり魔法使ったり色々可能性はあるだろ。」


 「現状だと・・・銃は借り物だし入手は難しいから、槍・弓・【マジックボール】かしら?」


 「槍での【パワーアタック】【シャープアタック】もありだろう。」


 「となるとあと一つね。」


 「【バリエーション】に拘るのは危ないかも知れないからなぁ。手段としてはいいだろうけど。」


 「まずは各手段の熟練ね。二人とも何か候補はある?」


 「んー、投げナイフ?」

 「んー、剣?」


 「そう言えば剣は使ってたのか。投げナイフもありかも知れないなぁ。コストにもよるけど。」


 投げナイフは【アイテムボックス】を活用できるので数は持てる。


 「それじゃ一旦帰って、その辺り用意してみようか。」


 「ん!」

 「頑張る!」


 そうしてその日はシルバースライム1匹だけの討伐で終えるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る