第31話 改良した魔法陣の確認(1)

 翌日、いつも通りに薬草畑の確認を終わらせた後、改良した魔法陣のテストを行うことにした。


「というわけで、よろしくね」


 薬草畑から少し離れた場所に移動し、付き合ってもらうオニキスたちへと声をかける。


 確認のために用意した魔法陣は2枚ずつ。

 オニキスとスノウに1枚ずつ試してもらうつもりなので、この数になっている。


 まあ、万全を期すのであれば、もう少し数を用意するべきだったのかもしれない。

 けれど、おそらくは大丈夫だと思っていても、失敗作として無駄になるかもしれないもののために余計な労力をかける気にはなれなかった。

 それなりに慣れたとはいえ、魔法陣を用意するのも地味に時間がかかってしまうから。



「じゃあ、まずはオニキスからお願い」


 強度を強化した魔法陣を取り出し、オニキスへと声をかける。


 結界の魔法陣については、魔法陣を選定する際にもオニキスにお願いして強度を確認したことがある。

 あのときは、オニキスの体当りに対して破壊されることなく、効果時間が切れるまで無事に耐えきっていた。

 そのことを考えると、改良した魔法陣でも同じようにオニキスの攻撃に耐えてくれれば強度的には問題ないと考えることができるはずだ。


 そんなことを考えている間に、オニキスがゆっくりと前へと進み出てくれていた。

 それを見て、手に持った魔法陣へと魔力を流し、オニキスへと目で合図を出す。

 若干、後ろでそわそわしているアッシュが気になったけれど、そちらはスノウに任せることにして魔法陣を発動させた。


 意図したとおりに自身から少しズレた位置に結界が発動したことを確認し、距離を取るために後ろへと下がる。

 勢いよく体当たりを仕掛けるオニキスの姿を確認するものの、どうやら最初の一撃は無事に耐えてくれたようだ。

 そのことにほっとしつつ、助走をつけるために後ろへと下がるオニキスの姿を見つめる。


 直後、オニキスが勢いよく二度目の体当りを仕掛け、1枚目の結界が破壊されてしまった。


「えっ!?」


 1枚目の結界が破壊されたことに驚いていると、オニキスがさらなる追撃を加えるためにその場で前足を大きく持ち上げる。

 次の瞬間、勢いよく振り下ろされた前足によって、今度は2枚目の結界が破壊されてしまった。



「……」


 2枚目の結界を破壊した後もオニキスはさらに追撃を加えようとしていたけれど、効果時間が切れたことで残りの結界は消えてしまった。

 結界が消えた空間をやや不満そうに見つめるオニキスを視界に入れつつ、結界が破られてしまったことについて考える。


 一応、最終的に3枚目以降の結界が残ることになったので、身を守るための結界としての役割を果たせていないというわけではない。

 けれど、前回は破壊されていなかったはずの結界が2枚も破壊されてしまったというのは素直に不安になってしまう。


「……そういえば、前回の確認のときはまだ魔物化していなかったんだっけ」


 その事実を思い出し、内心の焦りが少しだけ落ち着く。

 それに、前回は体当りだけだったのに対し、今回は踏みつけという攻撃も追加されていた。

 そのことを考えれば、今回の改良が一概に失敗だったとは言えない気がする。


「いやでも、念のために確認はしておくべきかな」


 そうつぶやき、オニキスに声をかけて、いつも使用している改良前の結界に対する強度確認をお願いする。

 結果、改良前の結界についても、オニキスの体当りや踏みつけによって無事に?破壊されることが確認できた。




「じゃあ、改めて、次はスノウにお願いするね」


 ひとまず、改良で手を加えたことで結界1枚ごとの強度が落ちているわけではないと確認できたので、気を取り直してスノウによる確認へと移ることにする。


 一応、オニキスよりもスノウの方が攻撃力が強いはずだし、とりあえず、スノウ相手でも無事に耐えることができれば成功と考えてもいいはず。

 そんな風に考えつつ、オニキスのときと同じように目で合図を出してから結界を発動させ、発動した結界から距離をとる。


 直後、魔力をまとった前足を振り下ろした攻撃により、発動させた結界が1枚を残して破壊されていた。


「えぇ……」


 思わずそんな声が漏れ出てしまう。

 けれど、結界が一気に破壊された衝撃で呆然としている間に、スノウが残った最後の1枚についてもあっさりと破壊してしまっていた。

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