第27話 パーティーへの招待と第一王女(3)
経緯を簡単に確認した結果、ドレスの件については伝達ミスということで落ち着いた。
どうやら、第三王子から側近さんに伝えるときに言葉が足りず、認識にズレが発生していたらしい。
いやまあ、ドレスの心配がなくなったことはうれしいけれど、そのあたりの意思疎通はもう少ししっかりとしてほしいよね。
新拠点の整備とか追加人員の対応とかで忙しかったのかもしれないけれど、身内同士の話になるのだし。
まあ、身内だからこそ言葉足らずになったのかもしれないけれど。
とはいえ、意思疎通に関してはこちらも強くは言えない気がする。
今回のことも、第三王子と直接やり取りができるくらいの関係を築けていれば防ぐことができたと思うし。
そういう意味では、未だに内心で第三王子呼びしている私の態度も微妙なのかもしれない。
一応、以前にも歩み寄りが必要だと考えた気はするのだけれどね……。
「とりあえず、貴女には悪いけれど、そちらで手配した依頼については断りを入れておいてちょうだい。
フェリシアさんのドレスについては王都から連れてきた者たちに任せることになるから」
「かしこまりました」
そんなことを考えている間に、現在の状況を確認していた第一王女とエリーの会話が終わっていた。
どうやら、結果としてここ数日のエリーの苦労が全て無駄になってしまったらしい。
この場では無理だけれど、エリーに対してはねぎらいになるような何かを考えた方が良いかもしれない。
「それで、他に何か伝え忘れているようなことはない?
なければ、今度こそフェリシアさんとドレスの打ち合わせに入るけれど」
「いえ、他にはないはずです。
――フェリシア嬢、今回はこちらの不手際で手間を取らせてしまって申し訳なかったね」
「いえ、こちらもきちんと確認できていなかったようですので……」
「……いや、そんな言葉を言わせてしまっている時点でこちらの落ち度だよ。
もし、今後何か気になることがあれば、些細なことでも気にせず確認してくれて構わないからね」
私の返答に苦笑を浮かべ、そんなことを口にする。
まあ、見た目少女にフォローされるような言葉を言われるのは微妙でしょうね。
「では、今度こそ私は失礼させてもらうよ。
さっきも言ったけど、ドレスに関しては自由にしてもらっていいからね。
期間的に特殊なものは難しいかもしれないけど、できる限りのことはさせてもらうから」
「さて、今度こそ本当にドレスの打ち合わせに移りましょう。
まずは、王都から連れてきた者たちを紹介するわね」
第三王子が退室した後、第一王女のそんな言葉とともにドレスに関する打ち合わせがスタートした。
ひとまず、言葉通りにデザイナーと針子の女性たちが簡単に紹介され、今後の簡単な段取りが説明されるところから。
その説明によると、今日のところはデザインについての意見出しと採寸をする程度になるらしい。
で、今日の意見を反映したデザインが後日提出され、それにOKが出れば針子さんたちの方で仮縫いへと移ることになる。
なので、私がドレスの準備にかかわる機会はそこまで多くない。
今日を含めても、おそらく数日で済んでしまう程度だと思う。
まあ、ドレスの仕立てなんて、デザインを決めた後はプロにお任せすることになるから当たり前だろうけれど。
そんなことを考えつつ、目の前で繰り広げられるデザインについての話し合いを眺める。
いやまあ、私も当事者というだけあって、最初は意見を求められていたよ?
ただ、いきなりドレスのデザインに対して希望を出せと言われてね……。
正直、デザイナーさんが事前に用意していたデザイン案は全て素晴らしいものに見えたし、これまでそういったものに縁のなかった私に出せる希望なんてほとんどない。
だから、唯一出した希望が動きやすいデザインというものだけなのも仕方ないことだと思う。
むしろ、既に完成されているように見えるデザイン案に色々と注文を付けられる第一王女やエリーがすごいとしか思えないよ……。
「では、今お聞きした意見を反映したデザインを明日、改めて持参させていただきます」
最終的にこの場でデザインに反映させることができない意見なども出た結果、そういうことになったらしい。
途中から本当に首を縦に振ってうなずくだけのマシーンと化していたから少し記憶が怪しいけれど。
とはいえ、はたから聞いていた限りでは特におかしな注文が付けられたわけでもなかったし、こういうものはプロに任せるのが一番だと思う。
とりあえず、後は実際に見せてもらうことになる清書したデザイン案を確認させてもらえばいいでしょう。
「ひとまず、今日できることはこれくらいかしら。
出来ればパーティーに向けた準備についても話そうと思っていたけれど、予想以上に遅くなってしまったし、それは明日デザインを確認した後に話しましょうか」
「わかりました。
ちなみに、準備というのはどういった……?」
「そうね、基本的には社交に関するアレコレの確認になるわ。
フェリシアさんの場合、まだ学園に通う年齢にもなっていないからそこまでマナーにうるさく言われないはずだけれど、どうしても空気を読まない人間というのはいるものだからね。
なので、今のフェリシアさんがどれくらいできるのかということを確認して、今後のマナー教育などを考える予定よ。
後は、単純にパーティーに出席する主要貴族の顔と名前を憶えてもらうというのもあるわね」
「……」
マナー教育に貴族の顔と名前を覚える作業か……。
普通にやりたくないなぁ。
「そうイヤそうな顔をしないで。
面倒くさいのはわかるけれど、こればかりはどうしようもないことだから。
それに、今のうちに身に着けておけば将来の役にも立つと思うわよ」
「……そうですね」
まあ、これについては婚約者役を引き受けた時点である程度は覚悟していたことだしね。
ただ、本来の予定では、もう少し段階を踏むことができるはずだったけれど。
とはいえ、それについての事情はさっき聞いたし、受け入れるしかないのでしょうね……。
「まあ、なんにしても詳しいことは明日話しましょう。
というわけで、私も今日のところはこれで失礼させてもらうわ」
そう言って、立ち去る第一王女を見送る。
残念ながら、私はこの後も採寸という作業があるのでこの部屋で待機だ。
一応、ラビウス侯爵領を出る前にも採寸はしたはずなのだけれど、そういった情報は共有されたりしないのだろうか。
もしかしたら、今の私の年頃だと環境が変化した1月ですら体型に影響が出ると思われているとか?
そんなことを考えつつ、部屋に残された私は針子さんたちからの採寸を受けることになった。
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