第22話 放牧地の整備
翌朝、オニキスたちを迎えに行くために屋敷の厩舎へと向かう。
「おはよう、オニキス」
こちらに気づいて窓から顔をのぞかせたオニキスへと声をかけると、厩舎の入り口の方から勢いよくアッシュが駆けてくるのが見えた。
なので、予想される未来のために身体強化に回す魔力量を増やして備える。
「ぐふっ!
……お、おはよう、アッシュ。
スノウとアクアもおはよう」
予想通り体当たりするように飛びかかってきたアッシュを受け止め、その後ろからゆっくりと歩いて来たスノウとアクアと合わせて朝の挨拶をかわす。
当初の考えでは、薬草畑にはオニキスだけ同行してもらって、スノウたちは別行動で狩りに向かってもらう予定だった。
けれど、その予定については、考えをアドルフたちに話した結果、彼らの意見によって没になっている。
曰く、護衛対象を放置したまま従魔の狩りにばかり付き合っていられないと。
まあ、これについては、言われてみれば当たり前の話ではある。
なので、改めて彼らと相談し、スノウたちの狩りについては、私が屋敷に籠っている午後限定で数日に一度くらいの頻度で付き合ってもらうという方向で落ち着くことになった。
というわけで、どうせならということで午前中の作業にはオニキスだけでなく、スノウたちにも同行してもらうことを考えている。
まあ、オニキスたちが薬草畑の周囲での放牧という状況に満足してくれるかはわからないので、今日のところはひとまずお試しということになると思うけれど。
「さて、予定していた作業は終わったけれど、今のままだと微妙みたいだね」
ひとまず、薬草畑の土に肥料を混ぜるという予定していた作業については終わらせることができた。
けれど、その作業の合間に確認していたオニキスの様子をみて、今の荒れ地のままの土地ではオニキスたちを放牧しておくのは難しいのではないかと気づいた。
「まあ、スノウたちはともかく、オニキスにとってはこの場所はあまり良くはないよね。
草が伸び放題になっているような荒れ地ならともかく、ここは荒れ地といっても土がむき出しになっているような場所だし」
そんなことを口にして周囲に目を向ける。
一応、まばらに草が生えている場所もあるけれど、基本的には土がむき出しとなっている場所がほとんどという有様だ。
なので、私が作業している間も、まばらに生えている草のところに向かうオニキスの姿というものがちょくちょく見かけられた。
「でも、どうしようかな。
さすがに、向こうの屋敷にいた頃のように薬草畑の薬草を食べさせるわけにもいかないし」
まあ、あれは食べさせていたというより、異常成長した薬草の処理に協力してもらっていた感じだけれど。
溢れの対応のために手前側の薬草たちは処理しきったものの、結局、奥側の薬草たちについてはほとんど手つかずのままになってしまったし。
そういえば、そのあたりの整備も屋敷の管理をしてくれるライラたちがやってくれていたりするのかな?
薬草畑については、余裕をもって設置されていた魔道具をこっちに持ってきてしまったから、改めて区画分けを見直す必要が出ているはずだけれど。
「――って、今は向こうの屋敷のことを考えている場合じゃないね。
もう、いっそのことオニキスのために放牧地でも作ってみる?
品質さえ考慮しなければ、魔法でどうにかできそうな気もするし」
一応、薬草畑を作る前に案内してもらったときに、場所の範囲に指定はないと言われてはいる。
なので、薬草畑の隣に放牧地として牧草代わりの薬草を育てている場所ができても問題はないはず。
「まあ、とりあえずは作ってしまいましょうか。
本来は事前に連絡するべきなのでしょうけれど、万が一、許可がもらえなかったら困ってしまうし」
もしかしたら、第三王子たちからの信用が下がるかもしれないけれど、今となってはそちらの信用よりもオニキスたちの快適さの方が重要だからね。
というわけで、さっそく薬草畑の奥側に半分くらいのサイズで放牧用のエリアを確保することにする。
これについては、土地を耕す魔法に慣れた上、敷地も薬草畑の半分程度なのでサクッと作業が終わった。
「とりあえず、今日のところはたい肥を混ぜて土壌を改良するところまでかな。
おまじない代わりの魔法を使えば、一晩でどうにかなるみたいだし、牧草代わりの薬草を生やすのは明日になってからだね」
そうつぶやき、耕し終えた範囲にたい肥をまいて土と混ぜ合わせていく。
後は、最後に前回と同じようにおまじない代わりの魔法を敷地全体にかければ、今日の作業は終わりだ。
「うん。
範囲が狭くなったこともあって、前回より余裕をもって発動できたね」
念のために休憩をはさんでからおまじない代わりの魔法を使い、無事に魔法の発動に成功した。
前回と同様、発動直後の今だと特に変化がわからないけれど、おそらくは明日になればどうにかなっているはず。
「まあ、もし魔道具が設置されてないことでうまく土が馴染んでなかったら、オニキスには悪いけれど、何日か待ってもらうことにしましょう」
最後にそんなことを口にし、オニキスたちとともに砦へと戻る。
なお、作業を始めてからのアドルフたちの呆れたような目は見なかったことにした。
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