第21話 今後の予定を考える(2)

 ひとまず、オニキスたちのストレス対策は決めることができた。

 なので、次は自分の今後の予定について考えることにしよう。


 といっても、既に候補は決まっていたりするけれど。


 何せ、薬草栽培を魔道具任せにすることは事前に決めていたからね。

 であれば、最初の準備が終わった段階で、ある程度の時間的な余裕ができることも予想できる。

 つまり、西部に移動してくる前から、時間に余裕ができたときにやることを考えていたということだね。


「とはいえ、こんなに早く時間的な余裕ができるとは思っていなかったけれどね」


 まあ、そのあたりのことは考えないことにしよう。

 ここまで何も作業を振られないという状況は予想外だったけれど、こちらとしてはその方がありがたいのだから。



「まあ、今はそんなことより、今後の予定について考えないとね」


 ひとまず、私に対する扱いについては置いておいて、本来の目的である今後の予定を考えることにする。

 このまま何事もなければ、1年かそれ以上の期間をこの砦で過ごすことになるわけなのだし、その長い期間を有意義に過ごすためにもしっかりと予定を決めておきたい。


「とりあえず、候補として考えていたのは、“魔法の研究”、“魔法陣の研究”、“ポーション作成技術の習得”の3つなのよね。

 一応、冒険者になったときに役立つものということであれば、戦闘訓練などもアリかもしれないけれど、さすがにここでそれをやるのは微妙そうだしね」


 もしかしたら、周囲に見られても大して気にされないかもしれないけれど、さすがに第三王子の婚約者としてやって来た貴族のご令嬢が戦闘訓練に明け暮れているというのも外聞が悪い気がするし。

 まあ、そういう意味では、研究のために屋敷に籠っているのもどうなのかという話にはなるけれど、屋敷内で何をやっているかなんてわからないだろうから問題ないはず。

 もし仮にバレたとしても、復興協力のための研究ですと言っておけば大丈夫だと思うし。


「ひとまず候補をあげてみたけれど、別に今の段階でどれかに絞る必要もないのよね。

 時間は十分にあるだろうし、どういう順番で手を付けるかを考える感じかしら」


 時間的なことを考えると、長くなりそうな順に、“魔法の研究”、“魔法陣の研究”、“ポーション作成技術の習得”になると思う。

 まあ、ポーションの作成についても、効能を高めるための改良なり研究なりにシフトすれば、時間が無限に取られるようになるだろうけれど。


「そう考えると、時間のかからないポーション作成から先に終わらせて、魔法や魔法陣の研究に移るというのが良さそうなのかな?

 ただ、現状だと、ポーションの作成技術を習得するために使う薬草を手に入れるのが難しそうだけれど」


 まあ、依頼でも出せば薬草を手に入れることはできるでしょうけれど、さすがにそれをやってしまうと何のためにやって来たのかわからなくなりそうだからね。

 そうなると、ポーション作成については、薬草畑から薬草が安定して収穫できるようになってからになるのかな?


「あー、でも、森の中で自分で採集するという方法もなくはないのか」


 いやでも、この方法はアドルフたちが良い顔をしない気がするね。

 少なくとも、ポーション作成のために毎回のように森に採集に向かうというのは許してくれないような気がする。

 その場合は、薬草の鮮度の問題で自由なタイミングで作業をすることができないだろうし、素直に薬草畑から薬草が採れるようになってからの方が良さそうだね。


「そうなると、魔法と魔法陣のどちらを先に手を付けるかということになるのかな?

 正直、この2つの順番については、気分で決めてしまっても問題ない気がするけれど」


 まあ、どこまでやるかによるけれど、普通に魔法陣の研究の方が短い期間で済むとは思う。

 こちらに関しては、研究というよりも、今使っている魔法陣を改良、改造したいという目的でやるのだから。


 それに対して、魔法の研究の方は、辺境の町の屋敷から持ってきた資料などから空間魔法を中心に色々な魔法の研究をしようというものだ。

 なので、はっきり言って終わりというものが存在しない。


 一応、空間転移の魔法や一般的に知られている便利な魔法を覚えたいというのがとりあえずの目標になるのだろうか。

 とはいえ、空間転移の魔法についてはさっぱり使える気配がないので、目標があったところでその達成がいつになるかはわからないのだけれど。


「そういう意味だと、まだ目的がはっきりしている魔法陣の研究の方が手を付けやすいのかな。

 ……まあ、向こうで大量に作成した魔法陣たちが無駄になるかもしれないけれど」


 実は、こちらにやってくる前に、準備として例の騒動で消費した魔法陣を大量に補充していたりする。

 いやまあ、今から考えると、護衛がつく状況でどうして身を守るための魔法陣が必要になるのかという感じではあるのだけれど、あのときはまだ襲われてからそんなに経っていなかったしね……。


「まあ、これについては将来のためと考えて割り切ることにしましょうか」


 そもそも、魔法陣の改良を考えた原因である妙に強そうな男以外には、改良前の魔法陣だって通用していたからね。

 であれば、無駄に大量に用意した魔法陣たちもいずれどこかで活躍する機会があるでしょう。


「そうなると、まずは魔法陣の研究というか、改良から始めることになるのかな。

 であれば、エリーに伝えて魔法紙などの材料を手配してもらわないといけないわね」


 一応、当面の間は向こうの屋敷から持ってきた分でどうにかなるでしょうけれど。




「じゃあ、やることも決まったし、さっそく動くことにしましょうか。

 といっても、向こうの屋敷と違って研究室なんてないから、自由にしていいと言われた空き部屋に作業スペースを作るところからだけれど」


 まあ、のんびりとやっていきましょう。

 将来のために有意義に使いたいとは思っているけれど、ある意味、こちらで過ごす間の暇つぶしのようなものでもあるのだから。

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