第20話 今後の予定を考える(1)
薬草畑での作業を終え、砦へと戻る。
少し早い時間ではあるけれど、昼食を食べてゆっくりと今後の予定を考えることにしよう。
そんなことを考えていると、砦の門に着いたところで街からやって来た一団と鉢合わせることになった。
「あれ?
ケルヴィンさんにリリーさん、街に行かれていたんですか?」
「うん?
ああ、嬢ちゃんか。
俺たちなら、街の近くの森にできたゴブリンの集落を潰しに行ってたんだよ」
「そ、こっちで合流したパーティーメンバーと一緒にね。
ゴブリンの件は、貴女が気づいたのでしょう?
しっかりと潰してきたから安心するといいわ」
ゴブリンの集落か。
そういえば、西部に来てすぐの頃にそんなこともあったね。
街のギルドで対応すると聞いたから、私の中では既に終わった出来事になっていたよ。
「というか、ケルヴィンさんたちが対応したのですか?
街のギルドで対応すると聞いていたのですが」
「まあ、ギルド側も最初はそのつもりだったんだろうな。
ただ、今は砦の方に主要な冒険者が集まっているせいで、ゴブリン討伐を任せられるほどの奴が見つからなかったらしい。
で、ギルドから砦の第三王子様のところに応援要請が来て、その対応のために俺たちのパーティーが選ばれたってわけだ」
「私たちのパーティーなら、よほどの規模になっていない限りは討伐に失敗することもないからね。
といっても、確実にせん滅するには人数が足りなかったから、結局は街で追加の人員を募集することになったけどね」
「おう、そのせいで無駄に時間がかかっちまったよ」
まあ、今の状況だと有力な冒険者は砦の方に集まっているか。
もしかしたら、名目上だけでも第三王子の指揮下に組み込まれたくないという冒険者もいるかもしれないけれど、そういった人は既に西部から移動していそうだし。
「なんにせよ、無事に討伐を終えられたのであれば良かったです。
ケルヴィンさんたちも今後は砦で活動するのですか?」
「ああ、その予定だ。
一応、ラビウス侯爵領から護衛してきたということもあって、できるだけ嬢ちゃんの近くに配置するという話らしいぞ。
討伐に出る前にそんな話を聞かされていたんだが、嬢ちゃんには伝えられていないのか?」
「いえ、聞いていないですね」
「そう。
じゃあ、私たちが砦に戻ってから話をするつもりだったのかもね。
ゴブリン程度じゃ万が一なんてありえないけど、上の人間としては落ち着いてからの方が話をしやすいでしょうし」
そういうものなのかな?
まあ、見知った人が近くにいた方が助かるから、伝えられるタイミングとかは特に気にしないけれど。
その後、パーティーメンバーを簡単に紹介してもらってから、報告に向かうというケルヴィンさんたちと別れることになった。
「とりあえず、まずはオニキスたちのことからだね。
先送りにしてしまっていたけれど、いつまでも屋敷の狭い敷地内で我慢してもらうわけにもいかないし」
昼食を終え、自室で落ち着いたタイミングでそう口に出す。
今後の予定を考えるつもりだったけれど、先にこちらの問題についての対策を考えるべきだと判断した。
「ひとまず、スノウたちについてはどうにかなりそうではあるのよね。
準備のために街に戻っていたときも、アドルフたちに付き添ってもらう形で狩りに行ってもらったし」
ただ、この場合は私が付き添えないのが問題かな。
スノウたちの運動不足解消にはなるだろうけれど、あの子たちとの触れ合いが足りなくなるし。
まあ、そのあたりは屋敷の敷地内で遊ぶか、何回かに1回くらいの割合で私も狩りに付き添えるようにお願いしてみればいいのかもしれないけれど。
「そうなると、問題になるのはオニキスの方なのかな」
正直、オニキスに関しては、最初のころから自由にしていたから、どれくらいの運動量が必要なのかがわからない。
まあ、オニキスは大人だし、しっかりしているから、足りない場合はちゃんと伝えてくれるとは思うけれど。
「とはいえ、その運動不足を解消するための何かが思いつかないのよね。
イメージだと放牧とか遠乗りとかになるのだけれど」
辺境の町の屋敷にいた頃は、この放牧という状態だったはずで。
ただ、これをこの屋敷でやるには敷地の広さが足りないし、かといって、砦の外に出すのもそれはそれで不安になる。
「さすがに薬草畑までの往復だけだと短すぎるしね」
今日の移動だって、近いからということで歩いて移動していたわけだし。
でも、これで満足してもらえるなら、短時間だけでも毎日一緒に行動できるようになるのよね。
「……ああ、ついでに作業中の時間を近くで自由にしてもらえばいいのか」
オニキスだけを砦の外に出すのは不安だけれど、近くに私たちがいる時間だけなら問題はない気がする。
目の届かない場所まで行かれると困るけれど、薬草畑周辺は開けているし、アドルフたちも周囲を警戒しているはずだから心配いらないはずだ。
そもそも、賢いオニキスがそんな変な行動をとるとも思えないけれど。
「とりあえず、スノウたちは付き添いをつけての狩りに行ってもらう形、オニキスについては薬草畑での作業に付き添ってもらう形でいいかな。
本当にこれで問題ないかはわからないけれど、後は試してみるしかないね」
まあ、従魔契約のおかげで、ある程度の感情は伝わってくるし、ダメならすぐに不満を伝えてきてくれるでしょう。
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