第18話 フェリシアに求められるもの

更新が遅くなり申し訳ありません。

しっくりと来るものが、なかなか書けませんでした。


―――






 ひとまず、第三王子との晩餐については無事に終えることができた。

 ただ、その中で新しく拠点を整備するという話が出てきたので、それについては少し考える必要があるかもしれない。

 一応、第三王子からは無理のない範囲の協力で構わないと言われたけれど、復興協力のためにやって来ている以上、それをそのまま素直に受け取るというのもどうなのかと思うし。


 とはいえ、その新しく拠点を整備するという話に対して、何ができるのかというところが問題になってくるのだけれど。

 やっぱり、薬草畑の拡張だったり、森に入っての薬草採取だったりというような追加の対応を考えるべきなのかな?



「いえ、薬草畑の拡張や森での薬草採取などを無理に考える必要はないと思いますよ。

 さすがに、第三王子殿下もフェリシア様おひとりの力に頼ろうとは思っていないはずですし」


「でも、復興に協力するために西部入りしたのだから、できる限りのことをする必要があるのではないかしら」


 正直、こちらに来るまでは復興の進捗状況がよくわかっていなかったこともあって、とりあえず薬草畑を作ってそれっぽい行動を見せていれば大丈夫だろうと思っていた。

 けれど、実際に西部入りしてみると、思っていたよりも復興が進んでいない状況で。


 そんな状況で新しく拠点を整備するというのだから、協力者としては何かしらで貢献できるような行動が必要になるはず。

 そう思ったのだけれど――。


「フェリシア様には申し訳ないですが、おそらく復興協力に関してはそこまで重要視する必要はないと思いますよ」


「?

 どういうこと?」


「要するに、フェリシア様の復興協力は特に期待されていないということです」


「……」


 いや、確かに私が1人でできる協力なんて微々たるものだとは思うけれど。

 それでも、その微々たる協力であっても、溢れのときにそれなりの成果があったから西部までやって来ることになったのでは?

 にもかかわらず、復興協力に期待していないとか、そんなことであれば最初から呼びつけないでほしかったよ……。


 そんな風に思っていると、エリーが追加で説明を付け加えてくれる。


「申し訳ありません、言葉の選択が悪かったですね。

 復興協力に期待されていないというより、フェリシア様に求められているものが変化しているというべきでしょうか。

 要するに、追加人員の派遣が正式に決まったことにより、フェリシア様の復興協力に対する期待の比重が下がったのです」


「つまり、私が1人で行う復興協力なんて誤差みたいなものだから必要なくなったということ?

 でも、それなら私がわざわざ西部にやって来る必要もなかったと思うのだけれど……。

 追加人員の派遣なんて、いきなり決まるようなものでもないでしょう?」


「確かに、追加人員の派遣については旦那様が以前から調整を進められていました。

 ですが、その規模に関してはどうなるかわかっていませんでしたから。

 幸い、実際にはある程度まとまった規模の人員が派遣されると決まったようですが、可能性としては各貴族家が言い訳程度にしか人員を出さないということも考えられましたので」


 つまり、私の復興協力というのは万が一のための保険という扱いだったのかな?

 追加人員が求められている規模に満たなかった場合に、少しでも穴埋めができるようにという感じで。


「そうなると、今準備している薬草畑は特に必要ないということになるのかしら?

 追加人員の数が十分なのであれば、私が1人で用意する薬草畑程度は誤差でしかないでしょうし」


「いえ、薬草畑に関しては予定通りに進める必要があると思います。

 先ほども言いましたが、単純に期待される比重が下がっただけで、必要なくなったというわけではありませんから。

 それに、そもそもフェリシア様がこの西部に滞在する理由の1つが復興協力なのですから、その建前をなくすわけにはいきません」


 建前か。

 確かに建前は大事だよね。

 とはいえ、その建前のために滞在し続けるというのは微妙な気分だけれど。


「うーん。

 結局のところ、新しく拠点を整備するという話に対して私は特に何もしなくていいということでいいのかしら。

 なんとなく、何かしらの貢献が求められると考えていたから、変な感じなのだけれど」


「まあ、今回の決定でフェリシア様に求められるものが変わりましたからね。

 これまでであれば、復興協力に対する貢献も求められたのかもしれませんが、今となってはそちらよりも第三王子殿下の婚約者としてこの地に滞在するということの方が強く求められていると思いますし」


「そうなの?」


「そうです。

 残念ながら、以前までは王家や第三王子殿下とラビウス侯爵家につながりはほとんどありませんでした。

 ですので、追加人員を求められていた周囲の貴族家にとっては、殿下の後見についたラビウス侯爵家がどこまで本気で支援するのかというのが不安だったのだと思います。

 少し前には、王家がラビウス侯爵家に出戻りの元王女様を押し付けるという出来事もありましたし」


 ああ、そういえばそんなこともあったね。

 というか、そのとばっちりを受けたのが私だったよ……。


「でも、殿下の後見になることでメリットもあるのでしょう?

 というより、その出来事の埋め合わせも兼ねてラビウス侯爵家が後見に選ばれたと聞いた気がするわよ。

 だったら、ラビウス侯爵家からの支援を不安視する必要もないと思うのだけれど」


「確かにメリットもあります。

 ですが、そのメリットが西部の復興にかける労力に見合うのかというのが疑問視されたのでしょう。

 何せ国の端と端ですからね。

 そのことを考えると、追加人員の要請をされていた貴族家も不安だったはずですよ。

 最悪、大変な時期に人や物だけ出させて、復興後の美味しいところをラビウス侯爵家に持って行かれる可能性だってあったのですから」


 なるほど。

 確かに国の反対側の領地から復興支援を行うというのは大変だろうね。

 移動だけでも大変だったというのに、復興の支援ともなるとそんな移動を何往復も繰り返さないといけないわけだし。

 そのことを考えると、実際にラビウス侯爵家が復興支援を始めるまでは周囲も不安になるか。


「つまり、殿下とラビウス侯爵家のつながりを示すために私がこの地に滞在し続ける必要があるということね」


「そうなります」

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