第13話 再び砦へ

 街での準備も終わり、再び前線拠点となっている砦へと出発することになった。

 正直、街に残していた荷物を取りに戻るだけだと思っていたから、予想外にやることが多くて疲れたよ。



「それにしても、本当に数が多いわね」


 後ろに並ぶ馬車の数を見てつぶやく。

 これは、古くなっていた設備を入れ替えるのだと、エリーが張り切って商会の人間と交渉した結果だ。


 屋敷の設備については、少し古い程度でまだまだ使えるように見えたのだけれど、エリー的には許せないレベルだったらしい。

 なので、商会の人間と交渉し、街で使うために手配されていた家具や魔道具をかき集めていた。

 まあ、さすがに無理やり横取りして恨みを買うわけにもいかないので、ちゃんと交渉でどうにかできる相手だけにするように釘を刺しておいたけれど。


 で、最終的にエリーが納得できるものを集めることができたみたいだけれど、一体どれだけのお金を使ったのだろうね。

 お金を出すのは侯爵家だし、家事などの屋敷内のことを片付けるのはエリーたちの役目だから、構わないといえば構わないのだけれど。

 さすがに、大量のお金が必要になるのは今回だけだと思うし。


「まあ、砦での暮らしを快適にするための必要経費だと考えて気にしないことにしましょう」


 そんなことをつぶやいて馬車へと乗り込んだ。






「やあ、必要なものは揃えられたかい?

 この場所だとちょっとしたものであっても、手に入れるのが難しいからね」


 特に何事もなく砦へと到着し、今日は書類仕事を片付けていたらしい第三王子と対面する。


「おかげさまで、ラビウス侯爵家と取引のある商会に諸々の手配を任せることができました。

 今後は、定期的に必要な物を送ってもらうことになっています」


「そう、それであれば安心だね。

 ところで、フェリシア嬢はさっそく薬草畑に手を付けるのかい?」


「いえ、さすがに今から薬草畑の予定地を耕すのは時間的に中途半端ですので、明日から手を付けることにしようかと。

 ただ、今日は屋敷で設備の入れ替え作業をする予定になっているので、その間は少し砦の外に出ようかと思っていますが。

 とりあえず、従魔たちの狩りに付き合いつつ、周辺で採取できる薬草を実際に確認してみようと思います」


 予定というか、すでに屋敷の方では共にやってきた作業員たちが設備の入れ替え作業を始めているはずだけれどね。

 エリーはこちらに残っているけれど、彼女の部下にあたる侍女たちとビルのチームが作業員たちを連れて屋敷へと向かったから。


「そう。

 護衛もついているから大丈夫だと思うけど、気を付けて行ってくるといいよ」


「はい」


 そんな会話をして、第三王子のもとを辞することになった。




 その後、前回も利用した食堂で昼食をとり、少し休憩してからスノウたちとともに魔の森まで移動する。

 ちなみに、エリーは屋敷の作業を監督するために砦に残ることになったので、今の付き添いはアドルフの護衛チームだけになっている。



「もう行ってもいいわよ」


 私の合図とともに勢いよくアッシュが飛び出していき、その後を追うようにスノウとアクアが続く。

 正直、森に入った直後から今か今かと落ち着きなく待ち構えていたアッシュのことが心配だったのだけれど、スノウたちは落ち着いていたみたいだから心配はいらないかな。


 森の奥へと駆けていったスノウたちの様子を見てそんなことを考えつつ、こちらはこちらで薬草採取へと動き出すことにした。




「とりあえず、育てる薬草は予定通りでいいかな」


 砦へと戻る時間が近づいてきたところで、そんな結論を出す。

 時間的には数時間しか確認できていないけれど、事前にもらっていた資料の情報と違いはなさそうだし、そこまで厳密に確認する必要もないでしょう。

 そもそも、半日にも満たない時間で周囲の確認が終わるとも思っていなかったし。



「ひとまず、オニキスたちのもとへ戻りましょうか。

 そろそろスノウたちも狩りを切り上げて戻ってくるでしょうし、それを待って砦へと帰りましょう」


 近くで周囲を警戒しているアドルフへとそう伝える。


 スノウたちの魔力の気配はまだ遠くにあるけれど、あの子たち、というかスノウはしっかりしているからそろそろ狩りを切り上げて戻ってくるはず。

 屋敷の方の作業がどうなっているかはわからないけれど、さすがに居場所がないくらいにひどい状態にはなっていないでしょう。


 そんなことを考え、アドルフたちとともに森の外で待つオニキスたちのもとへと戻ることにした。

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