第53話 相談後の雑談(1)
オオカミたちの従魔登録を決めた後、追加でいくつかの確認をさせてもらった。
馬の魔物であるオニキスとオオカミたちとで、扱いにどういう違いが出るのか気になったので。
けれど、ティナさんからの回答は従魔の種族によって違いが出ることはないというものだった。
まあ、従魔の種族によって違いがないというわけではなく、場所ごとに違うから自分で確認しろということだったのだけれど。
結局のところ、その場所の規則にしたがって従魔の行動に責任を持つこと、というのがギルドが従魔を持つ契約者に求めていることなのだとか。
確かにその通りではあるのだけれど、ずいぶんと放任というか、投げっぱなしな気がしてしまう。
まあ、オニキスのように従魔として登録されている数が多い種族であればまだしも、オオカミみたいな数が少ない従魔にまで個別に対応していられないという話なのだろうけれど。
「では、落ち着いた頃にフェリシアさんの屋敷まで職員を派遣して従魔登録を行うということで構いませんね」
「はい。
一応、今後も薬草を売るためにギルドには定期的に来るつもりなので、そのときに日程を調整してもらえればと思います」
従魔の扱いについてモヤモヤとしたものを感じつつ、最後に従魔登録の予定を決めたところでオオカミについての相談は終了となった。
「それで、溢れ後の今はどういう状況になっているのですか?
ティナさんは受付で暇をしていたみたいですし、町の様子からもこの辺りが無事に溢れを乗り切ったということはわかります。
ですが、王国の西部ではかなりの被害が出たという話も聞きました」
ティナさんが新しく用意してくれたお茶に口をつけ、一息ついたところで切り出す。
忙しいようであれば諦めるつもりでいたけれど、ティナさんが快く了承してくれたので溢れに関する話を聞かせてもらうことになったのだ。
「そうですね……、まずはこの町の話をしましょうか。
フェリシアさんのおっしゃるとおり、この町やその周辺に関しては無事に溢れを乗り切ることができました。
なので、今のこの町は溢れの事後処理を進めているという状況です」
「事後処理を進めているのに、ティナさんは暇なのですか?」
「ああいえ、別にギルド職員の皆が暇をしているというわけではないですよ?
表から見えていないだけで、ギルドの奥では職員が事後処理を進めていますし。
特に解体の担当者などはかなり忙しくしていますね」
まあ、溢れ終結直後の今は討伐した魔物の解体で忙しそうではあるよね。
それに、見えない場所で事後処理を進めているというのも納得ではある。
ちゃんとした場所があるのであれば、わざわざギルドの受付に出てきてそういう作業をする必要はないわけだし。
「それと、私が暇だったのは受付の担当をしていたからです。
溢れ直後ということもありますし、時間的なこともあって受付を利用する人がほとんどいませんからね。
ただ、さすがに受付を空にするわけにもいかないので、職員が交代で担当していたんですよ」
「ということは、私が来たタイミングでティナさんが受付にいたのは運が良かったのですね」
「いえ、それに関しては偶然ではないですよ?
フェリシアさんの依頼についての完了報告を聞いた時点で、おそらく今日やってくるだろうと思っていましたから」
ああ、なるほど。
依頼を受けてくれた冒険者の完了報告で予想は出来るか。
「私を待っていてくれたのはわかりましたが、ティナさんは私と話をしていても構わないのですか?
先ほどは暇だということでお願いしてしまいましたが」
「構いませんよ。
確かに事後処理もありますが、フェリシアさんに溢れの説明をするのも仕事の一環ではありますから。
それに、私が担当している事務処理に関してはそこまで切羽詰っていないんですよ。
今回の溢れでは、予想以上に余裕があったおかげで溢れの最中にも並行して事務作業を進めることが出来たので」
「そんなに余裕があったのですか?」
イメージでしかないけれど、魔物の溢れともなると色々な問題が次々に出てきて後手後手に回るような状況になりそうなものなのだけれど。
もしかして、そんなに余裕ができるほど襲撃してきた魔物が弱かったのだろうか?
「まあ、今回に関しては前回の溢れを経験した職員が何人か残っていましたからね。
そのおかげで、溢れの対応に関しては事前に色々と準備が出来ていたんです。
ちなみに、襲撃の規模としては前回と同等程度だったそうですよ?」
「あっ、別に魔物が弱かったわけではなかったのですね」
「ええ、特別強くもなかったそうですが、弱くもなかったそうです。
ですが、前回の経験を活かせたことで、終始有利に進めることが出来たそうです。
西部の方とは違って、ポーション類に余裕があったことも有利に進めることが出来た一因でしょうね」
前回の経験かぁ。
前回の溢れからまだ20年程度なんだっけ。
で、その前の溢れはそれよりも100年以上前に起きていたはず。
そうなると、溢れの対応なんて資料でしか知ることは出来なかっただろうし、前回の溢れではさぞかし混乱したのではないだろうか。
まあ、そのおかげで、今回の対応ではその経験を活かして余裕を持った対応が出来たのだろうけれど。
にしても、西部はポーション類が不足していたんだね。
別にそれだけが原因というわけではないだろうけれど、溢れ前に薬草を卸すことが出来ていて良かったと思うよ。
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