第34話 魔力の話

 いきなり魔力量が増えてしまったけれど、これはどうすればいいのかな?

 いや、魔力量が増えたこと自体は、使える魔法も増えるし良いことではあるのだけれど。


「というか、2級って結構貴重な存在だよね、確か」


 一度閉じた教本を再び開いて確認すると、魔法使いのランクは次のように定義されていた。


 特級 : 歴史に名が残るような英雄、世界規模の魔物災害に対応できる

 1級 : 王族や王族の血をひくごくわずかの人、国レベルの魔物災害に対応できる

 2級 : 上級貴族など代々魔力量が多い血筋を持つ人、都市レベルの魔物災害に対応できる

 3級 : いわゆる魔法使いと呼ばれる人、個の魔物災害に対応できる

 4級 : 戦闘の補助として魔法を使うことができる人、魔法のみでの戦闘は厳しい

 5級 : 一般人

 6級 : 魔力なしや何らかの事情で魔法を使えない人、ほぼいない



「都市レベルの魔物災害に対応できるとか、これはバレたらダメなやつなのでは?」


 確認した内容に思わずこぼしてしまう。

 さすがに2級の魔力量があるから即2級の魔法使いとなるわけではないけれど、素質としてはそれだけのものがあるということになる。

 まあ、それだけの実力を手に入れられること自体は構わないのだけれど、問題はそんな奴を国が放っておいてくれるのかということだよね。

 2級以上に分類される人たちの内約を見る限り、どう考えても十分な人数がそろっているとは思えないし。


「今更、国に仕える魔法使いになるというのもねぇ。

 侯爵家から放り出されてすぐの頃ならともかく、この屋敷での生活に慣れてきた今になってそういう可能性を出されるのはちょっと……」


 まあ、私がイヤだと言ったところでどうにかなる問題ではないのだろうけれど。

 とりあえず、そんな未来を回避するためにも、魔力量が2級になったことは全力で隠し通すしかない気がする。


「というか、魔力鑑定ってどういうタイミングで受けるものなのかな?」


 よく考えてみると、5歳になったときに教会で調べる以外に魔力鑑定を受けるタイミングというものを知らない気がする。

 いやまあ、たぶん魔法関係の仕事に就く人であれば、そのときにも魔力鑑定を受けるとは思うのだけれど。

 ……あぁ、後は学園に入学するときにも魔力鑑定を受けるんだっけ。

 今となっては関係ないことだけれど。


「このままの生活を続けるのであれば、可能性があるのは冒険者として登録するときかな?

 登録に魔力鑑定が必要になるかはわからないけれど、必要なのであれば諦めないといけないかもしれないね。

 まだ先の話ではあるけれど、それとなく確認しておきましょうか」


 まあ、将来的に冒険者登録をしておいた方が便利だと思うから登録したいというだけであって、別に無理してまで冒険者登録をしたいわけではない。

 なので、これについては一応回避可能だと思う。


「他に可能性があるとするとどういうケースなんだろ?大きな街に入るときとか?

 いやでも、さすがに街に入る人全員の魔力鑑定なんてやらないか。

 入国審査くらいになるとやるかもしれないけれど」


 そうなると、将来的にこの国から出るのは難しいのかな。

 でも、冒険者として他国に入国するのであれば魔力鑑定で2級だとバレても問題なかったり?


「まあ、今のところ他国に行く予定はないから関係なさそうだけれど。

 そうなると、自発的に魔力鑑定を受けることになる可能性よりも、人から魔法で魔力鑑定を受ける可能性の方が高いのかな?

 なんとなく用心深い冒険者とかはそういうことをしそうなイメージがあるし」


 ただ、魔法による魔力鑑定だと、魔法の使用者との相対的な魔力量しかわからないんだよね。

 そうなると、私の魔力量が2級だとはっきりわかる人はあまりいないのかな?

 まあ、魔法の精度次第だとは思うけれど、魔力量の差が大きくなると相対的な差だと魔力量のランクはわかりにくくなると思うし。


「とりあえず、考えてみた限りだと魔力量がバレる可能性は低そうなのかな。

 魔法による魔力鑑定だけ怖いけれど、よく考えてみると相手が冒険者であればそんなに問題にはならない気もするしね。

 バレたら問題になりそうなのは、国とかどこかの貴族の関係者とかだろうし」


 そもそも今の状況で国のお役人に会う機会なんてないだろうし、貴族関係もラビウス侯爵家の関係者くらいしかこんな辺境の町に来ることはないと思う。

 冒険者やギルドについても、国や貴族とは一定の距離を取っているはずだから問題ないはず。

 そう考えると、思ったよりも大丈夫なんじゃないかな。

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