第28話 平穏な日々
森の探索を始めてから2週間ほど経った。
まだ狩り自体を始めることはできていないけれど、森での採集は少しずつ進めている。
今のところ採集できているのは木の実とキノコが中心だ。
「そろそろ狩りについても考える時期が来たかな」
ひとまず、昨日の探索で屋敷の周囲を一通り探索し終えた。
探索したのは1度ずつなので、完全に探索できたとは言えないけれど、とりあえずの傾向くらいはわかった。
傾向をまとめると次のような感じになる。
屋敷右側 : リスや大型のネズミなどの小動物中心。木の実が多い。
屋敷奥側 : 小動物は少なく、オオカミの痕跡がある。木の実が多い。
屋敷左側 : リスや大型のネズミなどの小動物中心。キノコが多い。
まあ、この傾向からわかるように狩りに入るのであれば屋敷の右側か左側だと思う。
恐ろしいことに屋敷奥側のオオカミの痕跡は動物のオオカミではなくてフォレストウルフと呼ばれる魔物みたいなんだよね。
なので、屋敷奥側は候補から外すべきだと思う。
一応、フォレストウルフについては単体の強さはそれほどではないらしいけれど、集団になると途端に手ごわくなるらしいし。
幸い、奥側を探索したときに遭遇することはなかったけれど、狩りとして定期的に入るようになるとフォレストウルフと遭遇する可能性もある。
そもそも私が目指しているのは強くなることではないので、無理して危険に突っ込もうという考えはない。
なので、無難に屋敷の右側か左側で狩りをするつもりだ。
「でも、右側と左側のどっちが良いんだろう?
確認した限りだと狩りの獲物に変化はなさそうだったし、木の実とキノコの比率が違う程度で別に採集できるものがそこまで違うこともなかったんだよね」
一応、傾向としては右側の方が木の実が多く、左側にキノコが多いという感じではあった。
ただ、別に右側にキノコがなかったわけでもないし、左側に木の実がなかったというわけでもない。
単に比率がそうなっていただけで。
それにどちらか一方だけに何か欲しいものがあったというわけでもない。
まあ、それについては私が勝手に屋敷を基準にして右側、左側を分けているだけだからだろうけれど。
「まあ、無理にどちらか一方に絞る必要もないのかな。
とりあえずは右側と左側を週ごとに変えてみる感じでやってみましょう」
試してみたら獲物がかかりやすいとかがあるかもしれないしね。
まあ、たぶん大差はないと思うけれど。
森の探索についてはそんな感じなのだけれど、実はギルドに売りに行く薬草について問題が発生していたりする。
いや、問題ではないか。
単に以前に刈り取った薬草がなくなりそうだというだけだから。
「まあ、こっちについては後回しにしていた薬草栽培を始めればいいかな。
薬草畑の魔素濃度もある程度落ち着いたみたいだし」
薬草畑の魔素異常については、毎日欠かさず魔法陣による魔素吸収を続けてきた。
そのおかげで、薬草畑の魔素濃度が屋敷の敷地よりも少し高いくらいまで良化している。
「でも、奥側の薬草を刈り取ってしまうとオニキスのエサが足りなくなるのかな?
……まあ、別に全部のエリアを使うわけでもないし、空いているエリアにオニキス用の薬草を育てればいいか」
一応、オニキスのエサとなる飼い葉は買い出しごとに買い足していて、朝昼晩のご飯についてはこの飼い葉を食べてもらっている。
薬草畑の薬草については、自由にしてもらっているときに食んでいるだけだから別に薬草である必要はないのかもしれない。
でもまあ、別に今更普通の牧草にするのもどうかという気もする。
「というか、これに関してはオニキスに確認すればいいか」
なんとなく感覚がおかしくなっている気がしないでもないけれど、たぶんオニキスに聞けば薬草が良いか牧草が良いかは答えてくれる気がする。
とりあえず、それに関してはオニキスの回答次第ということにしよう。
「というわけで、薬草と牧草のどっちがいい?」
特に予定もなかったので、さっそくオニキスに確認に来た。
まあ、オニキスからは急に何言ってんだコイツという感じの視線を向けられたけれど。
さすがに悲しくなったのでオニキスにもきちんと経緯を説明した。
結果、オニキスの回答は引き続き薬草が良いとのことだった。
普通の牧草は、朝昼晩と飼い葉を食べているから十分らしい。
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