第24話 魔法陣の検討
「後は万が一のための魔法陣を用意すれば、とりあえずの準備は終わりかな」
一通り装備の確認を終え、最後に残った準備へと考えを移す。
先に装備の準備をしたけれど、本命は魔法陣だ。
薬草畑に設置した魔素吸収の魔法陣のおかげで、ちゃんと機能する魔法陣が作れることはわかっている。
なので、どこまで通用するかわからない私の剣技や魔法よりも、用意さえしておけば本人の力量に関係なく一律の効果を得られる魔法陣の方がよほど期待できる。
とりあえず、防御用、逃走用の魔法陣は準備しておきたい。
将来的には魔法陣ではなく自分自身の魔法でどうにかしたいところではあるけれど、さすがに今すぐにどうにかできる問題ではないのでそこはあきらめるしかない。
「とはいえ、もういい時間だし、魔法陣については明日かな」
次の準備を考えたところで、思ったよりも時間が経っていることに気づいたので、魔法陣のことは明日に回すことにした。
「防御用の魔法陣はこの結界の魔法陣で問題ないわね。
ただ、逃走用の魔法陣はどれがいいのかしら?」
明けて翌日。
地下の実験室に向かった私は、以前もお世話になった“便利な魔法陣 30選”を確認している。
ひとまず、防御用の魔法陣は結界の魔法陣一択だったのだけれど、逃走用の魔法陣は使い方を工夫すればいくつか候補がありそうだった。
「やっぱり有力なのは閃光の魔法陣かしら?イメージ的にも一番それっぽいし。
ただ、魔の森に出る魔物の種類がわからないから、そこが少し不安ではあるのよね」
一応、魔の森であっても浅瀬であれば普通はシカやオオカミなどの動物をベースにしたような魔物が多いらしい。
けれど、森の奥に行けば、出てくる魔物の傾向も変化するらしく、はっきり言って実際に確認してみないことにはどんな魔物が出るかわからないそうだ。
しばらくは浅瀬の確認しかするつもりはないので、相手の視覚を潰す閃光の魔法陣も通用するはずではある。
ただ、視覚を頼らずにこちらを知覚する魔物が出てくると通用しないのでそこが少し怖い。
「次は号音の魔法陣だけど、これはちょっと厳しいかしら?
魔道具のシステム音とか効果音で使われる魔法陣だけど、音量を大きくすれば魔物をひるませることができるかもしれないのよね。
ただ、閃光と違って音の場合は自分自身へのダメージを防ぐのが難しそうなのがちょっとね。
後、単純にどこまで大きな音を出せるかもわからないし」
改めて懸念点を口に出してみるけれど、やはりこれは採用が難しい気がする。
爆発音のような轟音を出す魔法陣があればよかったのだけれど、本に載っていたのは“轟音”ではなく“号音”だった。
一応、他の本も軽く確認してみたけれど、見つかるのは爆発音を出すものではなく爆発の魔法陣だけ。
どうやらこの世界では、轟音を出して音だけでひるませるような考えは珍しいらしい。
魔物をひるませるのであれば、光と音かなと思ったのだけれど。
「で、最後が掘削の魔法陣ね。
これも効果範囲次第な気はするけれど、ある程度の範囲に効果があるのであれば足止めくらいはできると思うのよね。
問題は魔物相手に通用するくらいの効果範囲を持たせられるかどうかだけど」
要は落とし穴を作る魔法陣なんだけど、魔物の身体能力だとあっさりと飛び越えてきそうで怖い。
あと、仮に巨大な落とし穴が作れたとしても、改造しない限りは発動させた魔法陣が基点になるので自分自身が巻き込まれる可能性が出てしまう。
もしそうなったら、落とし穴の中で魔物とご対面なんていう笑えない状況が発生してしまう。
「……とりあえずは、実験かな」
少し考えてみたけれど、本に書いている説明だけだと実際の効果が良く分からなかったので、悩むよりも先に行動してみることにした。
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