第22話 1ヶ月と野菜の収穫

 この屋敷に引っ越してきて1ヶ月が経った。

 当初は突然の放置宣言に焦ったりもしたけれど、なんだかんだでどうにか暮らすことができている。



「あっ、こっちもそろそろ収穫できそう!」


 今日は野菜畑で育て始めた野菜が収穫時期を迎えたので、その収穫を行っている。

 薬草畑と同じで、開拓したのは全体の半分程度。

 けれど、私1人しかいないので広さとしては十分すぎる。

 実際、実験的な栽培とはいえ、開拓したエリアの一部しか使用していない状況だったりするし。


「とりあえず、野菜畑にあった農業用魔道具も問題なさそうね。

 まさか、種を植えた後は放置するだけで収穫できるようになるとまでは思ってなかったけれど」


 途中途中で様子は見ていたけれど、本当に様子を見るだけで終わってしまった。

 水やりも魔道具が自動でやってくれるし、害獣や害虫の類も魔道具による簡易結界で防がれている。

 だったら受粉とかはどうするのかと思っていたら、風魔法を利用してどうにかしていたらしい。


「にしても、ここまで手がかからないのであれば、量を増やしても問題なさそうね。

 ただ、量を増やした場合は消費しきれるのかという別の問題が出てくる気がするけれど」


 試しに少量だけを植えた今回ですら持て余しそうなので、さすがに単純に量を増やすのはナシな気がする。

 やるのであれば、単純に量を増やすのではなくて種類を増やす形になりそうだ。


 今回、野菜畑に植えた野菜は4種類で、どれも町で育てやすいとお勧めされたものだ。

 具体的には、ラディッシュとコマツナ、ジャガイモ、大豆で、その内、ラディッシュとコマツナの2つが収穫時期を迎えている。


 さすがに今後の食生活を4種類の野菜だけで回していくのは勘弁してもらいたいので、次に町へ出かけたときに他の野菜についても仕入れてこようと思う。

 予想以上に魔道具が優秀だったので、今度は特に育てやすいものだとかを考える必要はないだろうし。

 どうせ魔道具頼りになるのであれば、小麦を育てるのもいいかもしれない。

 収穫が大変そうではあるけれど、将来的なことを考えると主食をこの屋敷内で確保できるのは大きい。




「ひとまず、これくらい収穫すれば十分かしらね」


 ラディッシュとコマツナが植えられた畝を移動し、それぞれを適量収穫して一息つく。


 理屈はよく理解できないのだけれど、魔道具によって、収穫時期を迎えた野菜もしばらくはその状態を保つことができるらしい。

 なので、急いで収穫する必要がなく、適宜必要な量だけを収穫すればいいことになる。

 まあ、さすがに月単位で放置することはできないらしいけれど。

 ただ、魔道具のおかげで季節に関係なく栽培できるので、そのあたりは量とローテーションを工夫すればどうにかなりそうではある。


 そんなことを考えながら、収穫した野菜が入った籠を抱えて屋敷へと戻ることにした。




「さて、初めての収穫を迎えたことは喜ばしいのだけれど、予想以上に私自身の料理のレパートリーが少ないことが発覚したわね」


 収穫した野菜を使って、さっそく昼食を作ってみたのだけれど、予想以上に使い道が思いつかなかった。

 目の前に置かれた料理は、サラダと炒め物というシンプルなものだ。

 これは、早急にレシピについても情報を集める必要がある。


「別に贅沢なことを言う気はないけれど、さすがに毎食同じものを食べるのは嫌だしね」


 そんなことを言いながら、料理に手を付けていく。

 味については町で買ったものと遜色ないものだったので、そこは安心できた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る