第21話 改めての方針検討
改めて今後のことを考えるために屋敷へと戻ってきた。
お茶とお茶請けのスコーンも用意して準備は万端だ。
「ひとまず、これからやるべきことを整理しましょう」
そもそも、最初は屋敷でひっそりと暮らすことを目指していたはずだ。
けれど、そのためには自給自足の生活が必要だということになり、そのための環境を整えるためにお金が必要だということで金策の方法を考えることになった。
で、その金策に目途が立ったので次に進もうというのが今の状況のはず。
「そもそもの流れを考えると、次は自給自足の生活を送るための環境を整備することになるのよね。
ただ、この屋敷に関して色々と手を付けられていないところも多いから、どこから手を付けるべきか迷っているんだけど。
まあ、急ぎで必要になるのは食料だと思うんだけど、思ったよりもお金に余裕ができそうだからそのお金でどうにかするというのも出来なくはないんだよね。
……うーん、どうしよう?」
領都の屋敷にいたころは、なんだかんだで予定は周りに決められることが多かった。
なので、完全に自分で自由に決められる今の状況というのも悩ましいものがある。
「まあ、ゆっくりと考えてみましょうか」
スコーンを1つ口にし、少し考えてみることにした。
しばらく考えてみた結果、いくつかの候補を出すことができた。
案の候補を並べてみると次のようになる。
1.新しく薬草栽培を始める
2.野菜畑に手を入れて野菜を育てる
3.果樹園に手を入れて果物を育てる
4.魔の森で狩りを始める
5.家畜を買ってきてタマゴやミルクを確保できるようにする
6.屋敷の未探索エリアを探索して何があるかを把握する
7.魔法の訓練をする
8.ラビウス侯爵家の動向を確認する
「……思ったよりも多いけど、とりあえず1つずつ検討していきましょうか。
まずは、新しく薬草栽培を始める案ね」
新しく薬草栽培を始める。
これは、継続的な現金収入を確保するために絶対にやらないといけないことだ。
ただ、異常成長した薬草がまだまだ残っているので、すぐに手を付けなければいけないとまでは言えない。
さらに言えば、薬草畑の魔素濃度問題が完全に解決したわけではないのでしばらく様子を見たい気もする。
薬草は成長するときに魔素を吸収するけれど、成長しきると逆に魔素を放出するようになるから。
それを考えると、魔法陣の効果で魔素濃度が下がり始めているのに、新しく栽培し始めて魔素濃度が高くなるのは避けたい。
「うーん、薬草栽培の経験がないから実験くらいならやっていいのかもしれないけど、今すぐじゃなくていい気がする。
とりあえず、この案は後回しでいいかな。
じゃ、次は野菜を育てる案ね」
たぶん、一番現実的な案だと思う。
食料に関しては、備蓄用の挽かれてない状態の小麦が半年分くらい保管されていて、粉になっているものが1月分あるかどうか。
なので、主食となる小麦に関してはどうにかなる。
対して、野菜を含めたそれ以外の食料は町で買っているので、屋敷で野菜を育てるというのは良い案であるはずだ。
問題があるとすれば、私が野菜を育てたことがないことだけれど、これに関しては実際に試してみるしかない気がする。
「うん、やっぱりこの案が一番有力かな。
一通り確認してみて、他になさそうであればこの案を採用しましょう。
次は果物を育てる案ね」
とりあえず案として挙げてみたけれど、どう考えても野菜を育てる方が優先順位が高い気がする。
この案を採用するメリットは何だろう?
手間がかからないところだろうか?
でも、魔道具があれば手間に関してはあまり変わらないような気もする。
まあ、これは魔道具次第だと思うけれど。
「果物の確保自体は魅力的だけど、やっぱり優先順位は低いよね。
それだったら、次の魔の森で狩りをして肉を確保する方が優先順位が高い気がするし」
ただ、これに関しては魔の森の危険性がわからないから厳しいんだよね。
前にマリーさんに軽く聞いてみたときは危険だと止められたわけだし。
なので、この案に関してはまず情報収集から始めるべきだと思う。
であれば、しばらくは他の案と並行して進めていけばいい気がする。
「じゃ、これについては他の案をメインで進めて、情報収集だけ並行して進める感じだね。
で、次の家畜を買ってくる案だけど、さすがにこれは無理かな。
オニキスだけでも不安があるのに、さらに家畜まで増やすのはちょっと厳しそうだし」
タマゴとミルクの確保という点については、とても魅力的なんだけど、さすがに無闇に生き物を増やすのダメな気がする。
というわけで、この案は没だ。
ただ、やっぱりタマゴとミルクは魅力的なので、将来的に実現できるようにこれも情報収集だけは進めようと思う。
「次は屋敷の未探索エリアの調査か。
まあ、要は地下の実験室を片付けようという話なんだけど、一応、使ってない応接室や客室にもよくわからない物が積みあがっているのよね。
今回の魔法陣みたいに何が必要になるかわからないから、屋敷内に何があるかくらいは把握しておきたいんだけど、どう考えてもすぐには終わらなさそうなのがネックよね」
これも他の案と並行して進めるのがよさそうな気がする。
まあ、集中して一気に片付けてしまうのも手ではあるけれど、身体強化の魔法だと力は強くなっても身体の大きさまでは変わらないから荷物を運んだりするのが大変なのよね。
だから、少しずつ片付ける方向でいきたい。
「で、次が魔法の訓練か」
これに関しては、さすがに優先順位は低い。
すぐに必要となるケースとしては、屋敷を追い出されるケースだけど、その場合はそもそも前提条件から変わってくるからあまり意味のない想定だし。
後は、魔の森で狩りをする場合にも必要になるかもしれないけれど、これに関しては情報収集から進める方向になったので焦る必要はない。
うん、やっぱりこの案は後回しでいいね。
「最後がラビウス侯爵家の動向確認なんだけど、……どうすればいいのかしらね?」
いやまあ、やりたいことはそのままなんだけれど、下手なことをすると藪蛇になりかねないのが問題だ。
私としても、いきなりこの屋敷から追い出されるということは避けたいので、ラビウス侯爵家のそういった動きは知っておきたい。
でも、残念ながら私自身はそういった情報収集の技術を持っていない。
なので、やるのであれば人を雇って情報を集めてもらうということになると思うんだけど、そもそも領主の情報を探るなんてマネをそう簡単にやってくれる人がいるんだろうか?
もしいるとしても、そういう人はあまりお近づきになりたくない類の人な気がする。
「……ギルドで世間話程度にラビウス侯爵家のことを聞く以上のことはできない気がするね。
まあ、お金のために定期的にギルドに行くことになるから、とりあえずはそれでいっか」
これも保留かな。
いや、並行して進める感じになるのか。
「改めて一通り考えてみたけど、とりあえずは野菜を育てる案をメインで進める感じかな。
並行して屋敷の整理を進めたり、町で情報を集めたりしないといけないから、結局は色々とやらないといけないと思うけど。
まあ、これまでは金策の目途が立ってなかったせいで薬草畑にかかりきりになっていたけど、これからは適度に配分しながらやっていくことにしましょう」
とりあえず、今後の方針は決めることができた。
後は、この方針に従って理想の生活を目指すだけだ。
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