第18話 魔法陣の確認

「とりあえず、薬草畑のど真ん中に置いてみればいいのかな?」


 そう言って、実験室で作成した魔法陣を薬草の刈り取りが終わったエリアへと設置してみる。


 一応、確認した本に効果範囲なども書かれていたけれど、改めて薬草畑の広さを確認すると効果のほどが不安に思えてくる。

 けれど、実験してみないことには始まらない。

 感じた不安はひとまず無視することにした。



「ちゃんと動いてね」


 魔素を貯めるための空の魔石と外部電源用の魔石を指定の場所に置き、魔法陣へと魔力を流す。

 手の触れた場所から魔法陣全体へと魔力が行き渡るのに合わせて魔法陣が光を放つ。

 その光が魔法陣全体へと行き渡った瞬間、ひと際強い光を放った。


 それを確認して魔力を止め、魔法陣から手を放す。

 魔法陣は正常に作動したようで、魔力供給を止めても魔石から供給される魔力によって淡く光を放っていた。


「良かった、補助用の魔法陣もちゃんと動作しているみたい。

 失敗だったら、作り直すか別の対策方法を探さないといけないところだったよ。

 あっ、でもまだこの魔法陣の効果次第で別の方法を探さないといけない可能性はあるのか」


 魔法陣がちゃんと動作してくれれば、それで問題が解決すると思っていたけれど、実際はまだ半分も進んでいないことに気づいてしまった。

 ……とりあえず、拝んでおこうかな。


「ちゃんと魔素を吸収してくれますように」



 魔法陣を設置した後は効果が出るのを待たないといけないので、残ったエリアの開拓に励むことにする。

 1つ目のエリアだけはおおよそ片付いたのだけれど、薬草畑の手前だけで考えてもまだ2つのエリアが残っている。

 なので、そのまま横に移動して手前真ん中のエリアに手を付け始めた。




 手前真ん中のエリアの開拓がひと段落したところで魔法陣の確認に向かう。

 思った以上に集中していたようで、気づけば太陽も直上近くまで達している。

 確認が終わればお昼の休憩に入ってもいい時間だ。


「おぉ、空だった魔石が満タンになってる!

 魔素の吸収に成功したんだ!」


 設置した魔法陣に近づいて魔石を確認すると、空っぽの状態で輝きを失っていたはずの魔石が魔素を吸収したことで微かに輝きを放つようになっていた。

 狙い通り、魔石に魔素を吸収させることができたようだ。


「これでこのあたりの魔素異常が解消できそうね。

 ……でも、これってどれくらいの時間で魔石が満タンになったのかしら?

 時間と吸収量次第では他にも対策が必要になるかもしれないのよね」


 満タンになった魔石を手に取ってつぶやく。

 その魔石の輝きは、周囲の無属性の魔素を吸収したので特に色を持っていない。


 もし魔素を吸収させる魔石が大量になるのであれば、魔法陣を改良して各種属性の魔力に変換してから魔石に貯めるようにすることを考えてもいいのかもしれない。

 そうすればギルドに売ることになったときに買い取り価格が上がるかもしれないし。


「まあ、まずは魔石一つにかかる時間と吸収できる量の確認からかな」


 そう言いながら昼食を食べるために屋敷へと戻り始める。

 午後からの作業には、新しい空の魔石と魔素測定器を持ってこないといけないと考えながら。




 昼食を終え、新しい空の魔石と魔素測定器を手に薬草畑へと戻る。

 ただ、ここでミスに気付いた。

 魔法陣を動かす前の魔素量を測ってないじゃないかと。


「まあ、終わってしまったことは仕方ないし……」


 若干落ち込みながらも、改めて周囲の魔素量を計測して記録する。

 そして新しい空の魔石をセットして魔法陣を起動した。


「午前中は3、4時間で魔石が満タンになったから、今度は1時間くらいで確認すればいいのかな?」


 そんな風に計画を立て、再び薬草畑の開拓へと向かった。






「だいたい、1時間で魔石が満タンになるのよね。

 午後一杯やり続けても周囲の魔素量に変化は見られなかったけど」


 その日の夜、食後のお茶を飲みつつ午後の結果を振り返る。

 魔石が満タンになる時間については1回目の確認時に既に満タンになっていたことから、次の確認を10分刻みにすることでおおよそ1時間で魔石が満タンになることが分かった。


 まあ、魔石の交換タイミングについてはあまり気にする必要はない。

 多少の手間がかかるだけで済むことだから。


 それよりも周囲の魔素量に変化がなかったことの方が問題だ。

 そもそも魔素量を減らすことが目的なのにその成果が出なかったのは素直に悲しいし、対策としてこれで良いのかという疑問が出てくる。


「でもまあ、しばらくは様子を見るしかないのかなぁ」


 天井を見上げてぼやく。

 薬草が異常成長するレベルの魔素量というのがどの程度なのかはわからないけれど、少なくとも領都の屋敷でいたころには聞いたことすらなかった。

 まあ、そもそもそんなことが話題になることはなさそうなのであまり参考にはならない気はするけれど。

 ともあれ、今の薬草畑の環境が珍しい状態なのは間違いないと思う。

 なので、様子見で経過を観察することも必要な気がする。

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