守り抜きたい、おっとり幼馴染退魔巫女が自分の身体に高飛車バニーガール妖魔を封印してしまった。封印が解けるとキスして再封印しなければならないが妖魔が誘惑してくる……メッチャ手を出したい
出会ったときの約束を守る為の鍛錬 でもやり過ぎ
第四話 舞と兎姫と剣司の関係
出会ったときの約束を守る為の鍛錬 でもやり過ぎ
中学に入る直前、剣司の両親が自動車の事故で亡くなった。
突然、天涯孤独となった新田剣司は、遠縁の郷間神社に引き取られた。
なにか聞かされていたが、両親を失い、ひとりぼっちになった剣司にはどうでも良いことだった。
手を引かれるまま、新しい家となる郷間神社にやってきた。
「うええええんんん」
あてがわれた部屋で剣司が呆然としていると外から泣き声が聞こえてきたような気がした。
剣司は気になって、フラフラと声の方向へ歩いて行く。
「うええええんんん」
神社の裏山の中へ藪をかき分けて行った先に、巫女服を着た長い黒髪を頭の後ろの高い位置でまとめ上げたポニーテールの同い年らしき女の子が泣いていた。
「どうしたの?」
気になって剣司が声をかけると女の子は、話し始めた。
「私、お家のお仕事を手伝わないといけないの。でも、それが怖い妖怪、妖魔を討つことなの。いつも妖魔が襲ってきて怖いの」
「危ないことだろうやめられないの?」
「無理よ。才能がある、百年に一度の逸材だって皆言うの。他に人がいないんだって。私しかいないって。うわあああんんんっっっ」
八方塞がりである事を思い出して女の子は更に大きな声で泣いた。
「……じゃあ、俺がお前を守ってやるよ」
「……本当?」
剣司の言葉に舞は泣き止んで尋ねた
「ああ」
「妖魔は怖いよ」
「大丈夫だよ」
「本当に」
「ああ、ひとりぼっちになるより怖くないだろう」
それは剣司の本心だった。
両親を失って孤独になった恐怖をずっと味わっていた。
だが、舞と一緒にいると、恐怖は薄れていった。
「……うん」
剣司の言葉を信じた舞は笑顔になり、頷いた。
「約束だよ」
「ああ、俺は新田剣司」
「私は、郷間舞」
「舞か、絶対に守ってやるから」
「うん、信じているよ剣司」
少女から明るい笑顔がこぼれた。
垂れ気味の大きな瞳が輝くのを見た剣司は顔が真っ赤になり俯いてしまった。
そんな剣司に舞は近づくと両手で剣司の頬に触れ顔を引き寄せるとキスをした。
突然の事に剣司は驚き、動けなくなる。
「約束のキス。皆やっていたから、私もやってみたくて。お父様には薄弱だって禁止されているけど、守ってくれる剣司とならしてもいいや」
「そ、そうか」
唇を離し柄から恥ずかしそうに顔を赤らめ説明する舞の姿を見て剣司は更に顔を赤くする。
そして約束は絶対に守ろうと、本当に覚悟を決めた。
「はああっっっ」
剣司が郷間神社に訪れてから五年後、神社の裏山に刀を握る剣司の気合いの入った声が響いた。
相手は妖怪、いやそれ以上の魔物、化け物だ。
「くくくっ、来るか」
剣司に刀を向けられた白髪交じりの男は不敵に笑うと自らも刀を振り上げ、迎え撃つ。
「ぐはっ」
男が振るった刀が触れると剣司ははじき返されてしまった。
「剣司!」
二人を見守っていた舞の悲鳴が木霊する。
「その程度で地面にへばったままでは、舞を守れないぞ。剣司」
「分かっているよ、養父さん、いや宮司」
郷間神社の宮司であり剣司の養父、そして舞の実父である郷間浄明に剣司は言い返し立ち上がった。
「ふむ、根性はだいぶ付いたな。だがっ!」
次の瞬間、浄明の姿が消えた。
「その程度でお役目が果たせると思うか!」
「!」
突如目の前に現れた浄明を迎え撃つべく剣司は刀を振り上げ迎え撃つ。
だが、防戦一方だ。
「ほら! どうした! どうした!」
「ぐっ!」
この数年、血の滲むような修行の果てに剣司は強くなった。
だが、その師匠である浄明にはまだ勝てない。
高校生になり剣道部に通っているが、上級生も、県内でも勝てる同年代どころか、大人の有段者でさえいない。
それも全て浄明の指導によるものだ。
その浄明に剣司は勝てなかった。
「ふんっ」
「ぐはっ」
真剣で練習しているため、剣司の頬を刀身がかすめ、血が飛び散り、目に入り、見えなくなる。
「くっ」
「お終いだ!」
浄明は見えない側から接近し刀を振り下ろす。
「やめて!」
その時、舞が叫んだ。
舞が叫ぶと、彼女の身体が光った。
その光は剣司の身体を包み、先ほどの傷を消した。
目に入った血も消えて視界がクリアになり浄明の姿を捕らえる。
「はっ」
剣司は自分の精気を込め、刀を振り上げた。
「なっ」
浄明は咄嗟に刀を前に出して防御するが、光と共に全身から力を溢れさせる剣司の力を抑える事が出来なかった。
「ぐおっ」
浄明は吹き飛ばされ、地面に倒れた。
「剣司! 大丈夫!」
慌てて舞が怪我をした剣司に駆け寄る。
「大丈夫だよ。それとありがとう」
剣司は舞に礼を言うと、目をそらした。
あまりにも今の舞の姿が扇情的だったからだ。
「どうしたの?」
舞は、おっとりした表情で首を傾げながら剣司に尋ねる。
「変身しているよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます